OfficeをSAPプラットフォームに――Duetはどこまで成功するか(2/3 ページ)

» 2006年06月22日 07時00分 公開
[Chris Alliegro,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 MicrosoftとSAPにとって、Duetが既存のインストールベース顧客からの売上をさらに伸ばすための手段となるのは自明だ。だがそれだけではなく、Duetは両社のそのほかの戦略目標にもプラスに作用する。DuetはOfficeを「単なるスタンドアロンのデスクトッププロダクティビティスイート」ではなく「カスタムビジネスアプリケーションを構築するためのプラットフォーム」として位置付けることで、Officeのアップグレードを促すというMicrosoftの計画を具現化する。一方、SAPの側からすれば、Duetは同社のEnterprise Services Architecture(ESA)戦略のProof of Concept(機能検証)になる。ESA戦略とは、SAPの主力製品であるERPアプリケーションを「モノリシックで融通の利かないアプリケーション」から「変化する独自のビジネスニーズに合わせてパートナーや顧客が迅速にカスタマイズ/拡張できるアプリケーション」へと進化させるための同社の長期的な計画だ。さらにSAPは、mySAPと広範なOfficeクライアントを統合することで、そうした統合性を備えていないOracleのビジネスアプリケーションに対して優位に立てることになるだろう。

開発/サポート/マーケティングはすべて共同で

 Duetは、Dennis Moore氏が率いるSAPのEmerging Solutionsグループの開発者と、Lewis Levin氏が率いるMicrosoftのOffice Business Applicationsチームの開発者とが参加するチームによって開発された。Office Business Applicationsチームは、ビジネスパフォーマンス分析をサポートする新しいWebサーバアプリケーション「Business Scorecard Manager(BSM)」の開発も担当している(BSMは2005年11月にリリースされた)。

 MicrosoftとSAPはDuetのサポートを共同で行う。Duetに関する顧客からの問い合わせやトラブルへの対応は、製品を販売している会社(MicrosoftかSAPかパートナー企業)が担当する。そこで解決できない問題については、さらなる調査と問題解決に向けてMicrosoftとSAPの共同サポートチームに回される。そして、コードの変更を必要とする問題に関しては、共同サポートチームからMicrosoftかSAPの適切な開発部門に送られる。両社は、Duetのマーケティングでも協力する。ただし、当初は両社の販売経路や価格設定は異なる。MicrosoftはDuetをデスクトップ当たり125ドルで直販またはパートナー経由で販売するが、SAPは当初、直販のみでDuetを販売する(価格は未発表)。

将来は不確か、カスタマイズは不可能

 MicrosoftとSAPはDuetの2つめのメジャーバージョンを既に計画中であることを示唆しているが、このセカンドバージョンの機能やスケジュールについてはまだ明らかにされていない。そのうえ、MicrosoftとSAPはDuetプロジェクトの将来について、この2つめのバージョンを計画しているということ以外は何も詳細を発表していない。それでもなお、Duetの今後の進展についてはさまざまな可能性が考えられる。なにしろ、Duet 1.0と2006年中にリリース予定のバリューパックの組み合わせでは、SAPの企業ポータル構築ソフト「Enterprise Portal」で提供されるSAPプロセスのほんの一部しかサポートされない。

 ただし、今後の進展はMicrosoftとSAP次第だ。Duet 1.0では、SDKやドキュメント化されたAPIなどの開発者ツールやドキュメンテーションは提供されない。そのため、パートナー企業や顧客はDuet 1.0の拡張やカスタマイズはほとんど行えない。開発者ツールが提供されない理由の1つとしては、例えば、DuetがOutlookとmySAPとの連携に使っているMicrosoftの開発技術「Information Bridge Framework(IBF)」のオーバーホールや、Duetが採用しているSAPプログラミングインタフェースの大幅な変更など、Duetの基底技術にまだ変更の可能性があるという状況が考えられる。そうしたインフラ変更が差し迫っているということであれば、両社は将来の移行の手間を回避するためにもカスタム開発は思いとどまらせたいと考えるだろう。

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