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「表現の時代」における手段と目的 第2回:

「日本語力」が問われる時代に

これからの世の中を生きていく上で大切な「3つの言語」に「日本語」「英語」「機械語」がある。「日本語」は、個人が情報発信できるようになったために、その重要性が増している。「英語」は、会話力だけでなく読解力を求められるようになった。「機械語」は、技術者でなければ関係ないというものではなくなっている。そのうち「日本語」では、「考える」「感じる」「想像する」「表す」能力が問われている。
2006年06月23日 08時00分 更新

情報社会と3つの言語

 ブログの出現で、情報社会が個人による情報創造とその発信に大きな可能性を見出すフェーズに入ったことは事実である。では、情報の創造や表現の問題について、現在のブログが主流とする「言語」を中心に考えてみたい。

 ITビジネスの一端に携わる人間として、これからの世の中を生きていく上で大切な「3つの言語」があることを感じている。それは「日本語(=国語)」「英語」そして「機械語」である。

 「日本語」は後で触れるとして、まずは「英語」について説明する。これには頭の痛い思いをされている方も多いはずだ。かく言う筆者もその一人である。

 インターネット時代になって、英語では、会話力もさることながら読解力が非常に重要になった。それは、数百ページの本を読むということではない。せいぜい数ページのウェブ情報である。だが、それを数多く読みその内容を正しくくみ取る力は、それを上手に整理する能力(あるいはそのためのツール)を問う以前に、重要視されるようになった。

 「機械語」とは、言うまでもなく「プログラミング言語」のこと。これには異論を唱えたり違和感を持たれる方がいるかもしれない。しかし「自分は開発者ではないから関係ないよ」ではすまされない状況にある。

 ITビジネスの現状において、ソフトウェアの重要性は、ハードウェアからサービスまですべてのレイヤを含めて、無視できないものになっている。単にプロダクトやサービスをつくる技能としてではなく、企画や経営レベルのセンスとしても、ソフトウェア開発の経験の有無は非常に重要なポイントになっているように思える。

 2005年、グーグルをはじめとするインターネット事業者への本格的対抗策を打ち出したマイクロソフトが、全社のサービス事業の統括責任者として「ロータスノーツ」の生みの親であるレイ・オジー氏をCTO(最高技術責任者)に抜擢したことは、その端的な表れといえるだろう。このテーマについては、また別の機会に考えてみたい。

「考える」「感じる」「想像する」「表す」

 「日本語」の能力は「国語力」と言い換えていいだろう。この要件は、何もIT業界に限ったことではなく、すべてのビジネスマンあるいは社会人として必須のものといえる。ブログのような、個人が情報を発信できる新しいツールが出現していることから、その重要性が今後大きくなることは明白だろう。

 しかし、ブログやSNSがさらに普及して、サービスの内容も進化し、個人の情報発信がますます盛んになることで、情報社会がよりよい方向に進むと考えるのは、やや楽観的かもしれない。なぜなら、国語力の問題を本質的に突き詰めていくと、そこには実は、今後の情報社会の方向性を大きく左右する重要な問題が内在しているからである。

 それでは国語力とは何か。これは相当難しい問題である。2004年2月に文化庁の文化審議会国語分科会が出した報告書「これからの時代に求められる国語力について」では、国語力を以下のような図に示すモデルで定義することを試みている。

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 これによると、国語力は大きく分けて2つの領域から成る。1つは「考える力、感じる力、想像する力、表す力からなる、言語を中心とした情報を処理・操作する領域」。もう1つは「考える力や、表す力などを支え、その基盤となる『国語の知識』や『教養・価値観・感性等』の領域」である。

 報告書では、国語力は前者が中核となり、2つの領域が相互に影響し合いながら構成され、生涯にわたって発展するとしている。

 注意しなければならないのは、ここで考えている国語力とは、若者の日本語が乱れているとか、絵文字がケシカランというような、些末なことではないということだ。

 「国語の知識」や「教養・価値観・感性等」の領域において、そうしたことを歴史や文化の観点から問題にする向きも理解できないわけではない。しかし、新しい言葉に対する嘆きを耳にすることはあっても、それで言葉の変化が抑えられているということは、ほとんどないといっていい。言葉の進化はある意味で不可逆的であり、それをどうこういうのはあまり生産的であるとはいえないだろう。

 その意味で、言葉そのものよりも、「考える」「感じる」「想像する」「表す」など情報を処理・操作する領域がより中核であるとするこの報告書の考え方は、国語力の問題を本質的に捉えている。「新世紀情報社会」において問われているのは、まさにその点なのではないだろうか(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第二回」より。ウェブ用に再編集した)。

成川泰教(なりかわ・やすのり)

株式会社NEC総研 調査グループチーフアナリスト

1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手がけている。趣味は音楽、インターネット、散歩。


[成川泰教(NEC総研),アイティセレクト]

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