シャープによるストレージ統合“ビフォーアフター”今どきのバックアップ入門(2/2 ページ)

» 2006年07月05日 11時00分 公開
[木村真,ITmedia]
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 もちろん、一気にストレージ統合が行われたわけではない。「扱うデータの性質や業務の内容によって、サーバは高性能なものが必要か、サーバは無停止であるべきか、それとも夜間停止でも問題ないか、システムコストは高価でもよいか、それぞれ要件が異なってくる」(小山氏)。2つのSANのディスクに何を割り当てるかというポリシーを決めてから、段階的に環境を整えていった。

 さらに、バックアップ面でも改善が行われた。外部ディスク装置に応じたバックアップ装置を設置し、これまで天理に置いていたバックアップ装置を別の場所に移動してデザスタリカバリ対策も行った。

それでも残る3つの課題

 ストレージ統合は、特に過剰投資を抑制する効果があった。同社は半期ごとにシステム案件などをまとめて、必要な容量の割り当てなどを行っている。これまで将来不足するだろう容量を必要以上に事前投資していたが、それが不要になった現在はコストが大幅に削減された。「メリットは、コストだけに出たわけではない。共有ディスクにしたことで、急に使用率が上がった事業所があったとしても、システムを一旦停止してから容量を追加し、不具合などを確認してから再起動するといった手間がなくなった」と小山氏は改善点を挙げた。

 このほか、運用を集中管理することでマニュアルが一本化され、管理者の教育やマニュアル作成も削減された。特に、障害回復手順などが一元化されたことで、止まることのない事業継続環境も構築でき、新規システムの環境構築も以前よりスピードアップしたという。さらに、「ディスク仮想化環境を構築する土台ができたという、副次的な効果も得られた」(小山氏)。

 しかし、良いことばかりではない。小山氏は、現在抱える3つの課題を列挙した。1つはサーバやOS、ミドルウェア、ストレージが個々に違うベンダーの製品を使用している場合、互換性に不安が残るという点だ。しかも、現在の構成で稼働保証がされていたとしても、ファームウェアを当てたりバージョンをアップしただけで、一気に不安定になってしまう可能性も高い。

 2つ目は、ストレージとサーバのライフサイクルの違いである。これは、それぞれのリプレースのタイミングが異なるため、たとえ現時点での互換性が確保できても、サーバをストレージより先にリプレースしてしまうと、その保証も怪しくなるという問題だ。

 3つ目は、ストレージ停止のタイミングだ。同社では、ディスクアレイ1筐体に対してサーバ4〜50台近くを接続しているものもある。そのディスクも2年ごとのタイムスパンで入れ替えをしているのだが、営業部や生産部、海外拠点など、ストレージの停止可能日が異なる環境では止めることもできない。ベンダー側は止める必要がないというが、「残念ながら実現できていないのが現状」と小山氏は言う。

 今後、さらなるサーバ統合や仮想化の推進、遠距離サイトでのリアルタイムバックアップなどを進めるうえで、こうした課題をクリアしている必要がある。「ユーザーの立場として、今構築できる環境から真の統合ストレージ環境を目指すためにも、ぜひストレージベンダーにも異機種間接続や仮想化などの課題に対して、共同して取り組んでもらいたい」と話した。

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