「契約と対価」から導くITエンジニアの将来像ITエンジニア キャリアモデル策定計画 特別対談(後編)(2/3 ページ)

» 2006年08月23日 09時00分 公開
[聞き手:浅井英二,ITmedia]

例えば、ITアーキテクトって何?

ITmedia この業界ではITアーキテクトの不在が叫ばれて久しいですね。しかも、今も状況はあまり変わっていません。

成本 先ず、「What」(成果物)を明確にするところから定義やモデルを策定すべきだと思います。ITアーキテクトでいえば、「アーキテクチャ」が成果物です。

 アーキテクチャとは、何もないところからソフトウェアをつくっていく上で、その方向付けをするものです。きちんとしたアーキテクチャをつくることを契約し、それに基づいて責任が発生します。責任があるからすべてを決める権限も与えられなければならない。

 これらのどれか一つでもズレていると、ITプロジェクトは上手く行きません。例えば、権限が与えられていなければ責任を果たせませんし、成果物が明確になっていないというのは論外です。

 この視点からアーキテクトはこうあるべき、プロジェクトマネジャーはこうあるべき、ということを決めていけばいいのではないでしょうか。

 例えば、アーキテクトは技術の最高責任者です。技術的な要因で失敗すれば、すべての責任はアーキテクトが負うことになります。そうならないために、アーキテクチャとして何が必要かをアーキテクトが決めます。

 アーキテクチャは最初から決まっているわけではなく、ある課題を与えられ、それを解くことが求められており、技術的な責任はアーキテクトがすべて負っています。ここまで決めておけば間違いなく上手く行く、というのがアーキテクチャであり、それを決めるのがアーキテクトなのです。

ITmedia いちばん楽しそうな仕事ですね。

 いちばんおいしいところでもあります。

成本 そうなんです。先日、六本木を歩いていましたら、ビルの建築現場があり、アーキテクトの名前が掲げられていました。一人の名前がそこに書かれているということが、すべてを象徴していると思います。

美しいアーキテクチャ

 さらにITアーキテクトの役割に付け加えるとすれば、「美しいアーキテクチャをつくる」ということです。

ITmedia 建築の様式美のようなものですか?

 機能性のあるものは、すべて美しいです。美しくないのに強固というのは、むしろおかしいわけで、美しい設計に責任を持つのがアーキテクトの役割といえるでしょう。エンジニアの6割から7割の人は、本来このアーキテクトを目指したいと考えているのではないでしょうか。

 プロジェクトマネジャーはプロジェクトの推進責任者で、アナリストは業務分析の責任者ということになります。

成本 2〜3年前にアーキテクトが曖昧なままだったのと同じように、今もアナリストの役割が曖昧なままだと思います。

 アナリストは仕様を出す側のユーザー企業にいて、例えば、生産管理システムを開発するとなると、生産管理の専門家がプロジェクトチームに参加することになるでしょう。

成本 わたしは、運用管理を担当している人たち(ITプロフェッショナル)は、潜在的にアナリストだと思います。つまり、ユーザーの最前線にいるわけで、現場がITをどう使うのかといったノウハウが蓄積され、それを次の戦略立案や設計に生かせます。アナリストは、そういう人たちが経験を積んで、なるべき仕事だと思います。

 成果物とそれに基づいて責任と権限を明確にしていけば、自ずとエンジニアが進むべき道を示せるのではないかと考えています。

 もちろん、成果物に対価を支払う人たちの意識改革も必要です。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ