現場の視点で見る災害対策(2):DRサイトの実現方式と設計上のポイントディザスタリカバリで強い企業を作る(1/5 ページ)

ディザスタリカバリを実現する方式にはどういったものがあるのだろうか。それぞれの特徴とメリット/デメリットを紹介する。

» 2006年09月14日 11時00分 公開
[小川晋平,ITmedia]

方式あれこれ、どれを選ぶ?

 まず、ディザスタリカバリの実現方式として、どのようなものがあるかを整理しよう。いずれも基本的には「サービス提供に必要なデータを保護し、それを使える状態にする」ための方法である(関連記事)

●ディスクI/Oの横取り方式

 ファイルシステムやアプリケーションからディスクに対するI/O要求を横取りし、データをコピーしておく方法で、以下に挙げる複数の方式がある。

 ただしいずれの場合も、提供される機能は「ディスクI/Oを横取りしてレプリケーションする」ことだけだ。このため、アプリケーションの正常動作に必要な意味論的な正しさを保つためには、アプリケーション側の実装が重要になってくる。例えば、コピーされたデータのうち、意味論的に不正なデータを破棄して動く実装になっているか、チェックポイントでデータの意味論的整合性を保つ実装になっているかといった部分だ。

 したがって、以下に挙げる方式をただ導入するだけでは、アプリケーションやサービスの稼働も含めた「ディザスタリカバリ」の実装が完成するわけではないことに留意したい。

1)ストレージ機器に付随するレプリケーション

 ストレージベンダー各社が提供する機器に付随するソフトウェアによるレプリケーション。EMCの「SRDF」やHPの「Continental Cluster」、日立の「True Copy」などがある。SAN構成でファイバチャネルのままレプリケーションを行うこともあれば、IPネットワークへプロトコル変換を行う方式もある。

 いずれもサーバ側への変更は必要ない。このため、既にレプリケーション機能を実装したストレージを導入している場合は、運用上も有効な方式である。一方で、一般にサーバ型レプリケーションに比べ高価であること、異機種混在環境に十分対応していないことなどが課題だ。中にはデータ量に依存するライセンス体系が適用されるものなどがあり、価格が導入の障壁になることが多い。

2)サーバ型バーチャライザによるレプリケーション

 サービスを提供するサーバとストレージの間にHBA(Host Bus Adaptor)を複数実装したサーバを設置し、その上にストレージ仮想化アプリケーション(バーチャライザ)を実装する方式。このバーチャライザのオプション機能としてレプリケーションを行う。FalconStorの「IPStor」やDataCoreの「SANsymphony」などの製品がある。

 異機種混在環境に比較的広く対応していること、同時に情報ライフサイクル管理(ILM)を実装できることなどメリットも多いが、バーチャライザが故障した際の影響範囲が大きいため、可用性設計には十分な配慮が必要である。

3)ファイバチャネル型バーチャライザによるレプリケーション

 サーバ型バーチャライザをファイバチャネル上に実装したもの。サーバ型バーチャライザ方式に比べ機能が限定されているため、安定的な稼働が期待できる。また、物理配置上も美しいため今後注目される方式といえるだろう。

 現在、BrocadeやCiscoといったファイバチャネルスイッチベンダーとサーバ型バーチャライザを提供するソフトウェアベンダーの提携が進んでいる。将来的には、サーバ型バーチャライザ方式のソフトウェアがファイバチャネル上に実装される方向に進んでいくものと思われる。

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