現場の視点で見る災害対策(2):DRサイトの実現方式と設計上のポイントディザスタリカバリで強い企業を作る(2/5 ページ)

» 2006年09月14日 11時00分 公開
[小川晋平,ITmedia]

4)サーバへのソフトウェア導入によるレプリケーション

 サーバ上にボリューム管理専用ソフトウェアを導入する方式。Symantecの「VERITAS Storage Foundation Volume Replicator Option」などが有名だ。

 こうしたソフトウェアは基本的に、サーバの台数に基づくライセンス方式をとっている。必要なサーバのみに導入すればよいため、数十台までの規模ではコストメリットが大きい。一方でほかの方式に比べると、古いOSやHBA、ストレージ機器との接続性に問題が生じる可能性があり、既存環境に導入する際には注意が必要である。また、数百台クラスの大規模構成となる場合は、逆にストレージ側でレプリケーションを行う方がコスト的に有利になる場合もある。

レプリケーション方式 メリット デメリット
ストレージ機器に付随するソフトウェア 既存環境への導入が容易 機器をそろえる必要がありコストがかさむ
サーバ型バーチャライザ 異機種混在環境に対応 故障した際の影響範囲が大きい
ファイバチャネル型バーチャライザ 異機種混在環境に対応、安定稼働 故障した際の影響範囲が大きい
サーバへのソフトウェア導入 コストメリットが大きい 既存機器との接続性に注意が必要、サーバCPUを消費する
I/O横取り型各方式のメリットとデメリット

●アプリケーションによる複数書き込み

1)個別アプリケーションでのデータ複製

 独自アプリケーションはそれだけでデータ保護が可能になる。プライマリサイト側で稼働しているアプリケーションの出力データを、プライマリサイトのローカルに置かれたディスクだけでなく、ディザスタリカバリ(DR)サイト側にも同時に吐き出す形式をとる。

図1●プライマリサイトとDRサイトの両方に、同時にデータを吐き出すアプリケーションを活用

 例えば、メールリレーサーバ上で、すべての電子メールを監査用に保管するプログラムも動かしているとしよう。この場合、メールの吐き出し先設定を「ローカル」と「DRサイト」の両方とするような実装が可能である(当然ながら、DRサイトでの書き込みが完了するまでの間、オリジナルを残すような工夫は必要になる)。

 中には、アプリケーション自身がレプリケーション機能を備える場合もある。リレーショナルデータベースの場合、Oracleの「Data Guard」やMicrosoft SQL Server 2005の「Database Mirroring」などがその例だ。これらの機能を利用すると、アプリケーションにとって意味論的に正しい状態でデータ複製を行ってくれるというメリットがある。

2)DRサイトからプライマリサイトへの転送(Fetch)

 レプリケーションを行わず、代わりに、DRサイト側のアプリケーションがプライマリサイト側のデータレポジトリへデータを取りにいく(Fetch)ほうが良い場合もある。具体的には、何がしかのデータレポジトリを読み取ってから新たなデータを生成するようなアプリケーションに適している。

 より具体的な例としては、ファイルサーバやWebサイト、データベースといったデータレポジトリに対して横断的な全文検索サービス(Enterprise Search)を提供するためのインデックスファイルを作成するアプリケーションや、BIやOLAPのようなデータ分析のツールが挙げられる。いずれも、最終的に生成するデータの前に、大量の一時ファイルを生成するものだ。

 このようなアプリケーションの場合、ディスクI/Oを横取りする方式でレプリケーションを行うと、最終的に必要なデータ以外の一時ファイルについてもレプリケーションが行われることになる。したがって、単純なレプリケーションでは無駄にWAN帯域が消費される可能性がある。

●リムーバブルメディアによるバックアップ/物理搬送/リストア

 最も原始的ではあるが、コストが安く、実装が簡単でしかも現実的に多用されているディザスタリカバリ手段がこれだ。

図2●リムーバブルメディアによるバックアップと搬送

 この際、リムーバブルメディアとして使われることが多いのがテープだ。一口にテープといっても、DDSからAIT、DLT、SDLT、LTOへと進化し、データの書き込み/読み出し速度の向上と大容量化が図られている(関連記事)。また用途によっては、CDやDVDといった光ディスクメディアも利用されている。

 さらに、きちんと標準化され、一度決めたら変化しない設定ファイル群が収められているような場合ならば、RAID1構成のハードディスクを丸ごとDRサイトに持っていくということも可能である(ただし、筆者自身はシステムバックアップでしかやったことがない)。

 この方式の最大のメリットはコストと導入の容易性である。一方で、速度が向上したとはいえ、書き込み/搬送/リストアにはオンラインでのデータレプリケーションとは比べものにならないほど時間が掛かる。したがって、RTO/RPOの要求が1〜2日レベルの場合には現実的な手段となり得ない。

 また、数年単位でメディアの方式が変わることにも注意が必要だ。古いデータを保護したい場合、当時のリムーバブルメディアに対応したメディアドライブを確保、維持することが難しいといった問題点がある。

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