2006年、グローバル社会元年のすべて(2/2 ページ)

» 2006年11月27日 18時07分 公開
[Stan Gibson,eWEEK]
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 BEA Systemsは2005年12月、同社の年次「BEAWorld」カンファレンスを北京で開催した。同社のアルバート・チュアングCEOはこのカンファレンスで、自社の伝統に対するプライドと中国の将来に対する大きな期待を表明した。

 「BEAは、中国が製造業を基盤とする経済から知的財産を基盤とする経済に移行するのに貢献したいと考えている。中国は製造業で世界をリードしているが、中国がグローバルなITリーダーになる時がやってきた」とチュアング氏は語った。

 「中国はもうすぐ、工業製品を輸出するだけでなく、付加価値の高い技術も輸出するようになるだろう」(チュアング氏)

 2008年の北京オリンピックが近づく中、「中国の世紀」の夜明けが始まろうとしているという信念の表明が今後相次ぐものと予想される。

 インドと中国の企業は世界の舞台で実力を見せつけたが、既存の大手プレーヤーも指をくわえて眺めているだけではない。IBMは2006年、グローバル化という切り札を出し、インドの従業員を約4万人に増員するとともに、アナリストブリーフィングをバンガロールで開催し始めた。

 IBMは2006年3月、インドの開発オフィスをWebサービスソフトウェア開発の主要拠点に指定した。ここで開発されたソフトウェアは、金融サービス業、小売業、製造業などの業界向けのSOA(サービス指向アーキテクチャ)に実装される予定だ。

 またIBMは11月14日、グローバル化戦略にニューメディアを結合した。インターネット上の仮想世界であるSecond Life内で同社が購入したプライベートアイランドを使って、中国政府から世界向けの発表をホストしたのだ。IBMのサミュエル・パルミザーノCEOも「サムIBM」というアバターで登場した。

 古くからの多国籍企業であるIBMは、人事、支払勘定、サプライチェーン、購買といった自社のビジネスプロセス業務に顧客企業を便乗させている。

 IBMが既に施設を持っている国で事業を行っている企業は、ビジネスプロセスをIBMにアウトソースすることができ、IBMは顧客企業の処理業務を自社の施設で実行する。

 グローバル化にかかわっているのは大企業だけではない。インドの大手IT企業は年商30億ドルという規模に近づいているが(Infosysでは2007会計年度にこの大台に達する見込みだとしている)、ロシアのIT企業は規模が小さく、年商6000万ドルを超える企業は存在しない。

 しかしロシアは科学分野の専門知識が豊富である。これはソ連時代に築かれた科学重視の教育システムの遺産である。

 せわしなく世界各地を飛び回るパルミザーノ氏は2006年6月にモスクワに行き、IBMの開発研究所をロシアにオープンした。IBMもほかの多くの企業と同様、国際的なコンテストで優勝するプログラマーを数多く輩出しているロシアのプログラミング技術を利用するのを狙っている。

 ロシアにアウトソーシングしている顧客企業によると、ロシアのアウトソーサーは小規模なチームでの製品開発を得意とするという。対照的にインドの場合は、多数のプログラマーを動員してアプリケーション開発に当たらせるというアプローチが多い。

 グローバリゼーションは発展途上国に意欲的な姿勢と経済発展をもたらしているものの、この新しいグローバル化の流れは、グローバルなテロリズムという厄介な背景の中で進んでいることを改めて世界に思い知らせる事件が7月に起きた。

 2006年7月11日、アウトソーシングの拠点都市の1つであるインドのムンバイで列車爆破テロがあり、少なくとも200人の通勤客が死亡した。

 多くのアウトソーシングユーザー企業が表明している懸念の1つが、政情不安やグローバルなテロである。ムンバイの爆破テロを受け、ユーザー企業各社がアウトソーシングプロバイダーの障害復旧/バックアップ体制を見直した。この爆破テロでは、ムンバイ市内の数社のアウトソーシング企業が夜間シフトを中止したが、データを失ったアウトソーサーは1社もなかった。

 ムンバイ地区の16カ所の事業所(本社を含む)に1万6000人の従業員を抱えているTCSは、インド亜大陸でムンバイと反対側に位置するチェンナイにあるバックアップセンターを稼働した。

 インドのアウトソーサー各社およびその顧客企業は、数日以内に通常業務に復帰した。主要顧客の1社であるオランダの大手銀行、ABN AMroのIT部門でグループ共有サービスを担当する業務執行ディレクター、ルイス・ローゼンタール氏によると、ローバルなIT/ビジネス戦略を今後もグ推進するという計画を縮小する考えはないとしている。

 「ニューヨーク市やロンドンで同じような事件があった後でも、われわれはビジネスをストップしなかった。今後もインドでのITプログラムを継続するつもりだ」とローゼンタール氏は話す。

 去る10月にマンハッタンで開催されたOutsource Worldでは、中国とインドのアウトソーサーに交じって、エジプトのコールセンターや技術サポート企業も姿を見せていた。

 同カンファレンスのハウツーセッションの最大テーマとなったのは、アウトソーサーとの関係をいかに管理するかという問題だった。その背景には、アウトソーシング契約の半数近くが失敗に終わっているという現状がある。

 ジョージア州アトランタにあるアウトソーシングコンサルティング会社、TPIのパートナーで、General MotorsおよびCoca-Colaのアウトソーシング責任者を務めた経験もあるクロード・マレー氏は、「企業は契約管理の重要性をようやく理解し始めた。管理には高度な専門知識が必要なわけではない。基本的なことばかりだが、規律が要求される」と話す。

 マレー氏によると、最善のアプローチは、多数のアウトソーサーにグローバルに適用できる基本的な契約フレームワークを作成することだという。「世の中は『グローバルに考え、ローカルに行動する』から『グローバルなコラボレーション』へとシフトしつつある」と同氏は指摘する。また、ユーザー企業のチームには、法務や購買、事務のスキルを持ったメンバーを含めなければならないという。

 ニューヨーク市に本社を置くBear Stearnsの上級業務執行ディレクター、ジョン・エリオット氏はOutsource Worldで、多くのアウトソーシングユーザー企業の願望であると同時にグローバリゼーション推進の最大の原動力を次のように要約した――「われわれは適切な時に適切な価格で適切な人材にアクセスしたいのだ」。

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