日本でただ一人、Regional Directorの役割とは(1/2 ページ)

マイクロソフトには「Microsoft Regional Director」という役職制度がある。全世界で約130名、その中で唯一の日本人が、玉木栄三郎氏である。マイクロソフトに在籍せず、したがって報酬は受け取らないという。

» 2006年11月30日 08時00分 公開
[大河原克行,ITmedia]

 マイクロソフトには、「Microsoft Regional Director」という役職制度がある。1997年からスタートしたこの制度で認定される人物は、マイクロソフトには在籍しない第三者であり、その中立的立場から、マイクロソフト製品および技術を世の中に対して啓蒙すること、また、米国本社の技術開発部門などに対して意見を述べる役割を担う。マイクロソフトには、社内エバンシェリスト制度があるが、それを外部にまで広げたものといったほうが、直感的には分かりやすいかもしれない。

 Regionalという言葉が示すように、地域に特化した活動を行うが、具体的な目標などは、各々のRegional Directorに委ねられる。技術、マーケティング、経営といったあらゆる活動要素を求められ、月一回のレポートを米国本社に提出。それでいて無報酬。ただし、マイクロソフトが取り組んでいるさまざまな最新技術情報などを入手できる立場にある。

 Microsoft Regional Directorの肩書きを持つのは、全世界で約130人。日本人ではただ一人だけなのである。

技術と経営に精通した人物

 日本人として唯一のMicrosoft Regional Directorの肩書きを持つのは、玉木栄三郎氏である。現在、イー・キャッシュの代表取締役社長を務める同氏は、2006年1月からMicrosoft Regional Directorの活動を開始している。

玉木栄三郎氏のプロフィールは、こちらのITmedia オルタナティブ・ブログでご覧いただけます。


 玉木氏の経歴には、技術者としての輝かしい実績が並ぶ。大学の研究機関に在籍中には、Linuxを活用し、大量データ処理のためのハイパフォーマンスコンピューティング環境を構築。さらに、同時期には大手企業のCTOにも就任するという活躍ぶり。一方、トッパン・フォームズ在籍時には、Windowsプラットフォームをベースとしたモバイル向け電子コマースソリューション「ゆびコマ」の開発リーダーとしても活躍した。

 マイクロソフトの社員からも、「.NETフレームワークの開発者はいるが、.NETフレームワークを開発できる人材は少ない。玉木氏は、その数少ない.NETフレームワークを開発できる技術スキルを備えた人物」と、一目置かれている。実際に玉木氏自身、.NETフレームワークの拡張版となるサブセット開発にも取り組んだ実績を持つ。さらに、先ごろ発表されたCLI(Common Language Infrastructure)のJIS化にも関与する一方、ECMA標準のCLIをWindows以外のプラットフォームに実装するといった、いくつかのプロジェクトにも取り組んできた。

 「常に自分が作りたいものを追い求めてきた。そして、それを実現するためにはどれだけの技術スキルが必要なのかを見極め、ゴールを設定し、自分を高めてきた。だが、マイクロソフトと出会い、意見を交換するうちに、マイクロソフトが目指す方向と、自分が目指す方向が同じだということに気がついた。対立構造よりも、お互いにうまく利用できるところかあればそうすることが、自分の作りたいものを作る最短距離だと判断した。その結果、到達したのが、Microsoft Regional Directorの仕事だった」と玉木氏は語る。

 自らが経営者としての視点を持つとともに、技術にも深く精通した経験が、日本で唯一のMicrosoft Regional Directorに任命された理由の一つだといえる。

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