身近な楽曲に情報を埋め込む音のQRコード――音響OFDM次世代ITを支える日本の「研究室」(1/3 ページ)

NTTドコモが開発した音響OFDMは、例えば携帯電話をスピーカーにかざすだけで簡単にサイトへアクセスできるなど、身近な音楽を媒体に情報通信する技術だ。携帯電話では赤外線通信やQRコードなどが主流になる中で、音響OFDMを開発した狙いはどこにあるのか。

» 2006年12月21日 08時00分 公開
[岡崎勝己(ロビンソン),ITmedia]

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音楽に情報を違和感なく埋め込む

 “音”を使ってデータをやり取りする――。このアイデアは、決して目新しいものではない。実際に、古くからのパソコンユーザーであれば、モデムを使ってデータを音に変換し、パソコン通信などを行っていた方も多いことだろう。

 しかし、NTTドコモが今年4月に発表した「音響OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)技術」は、単にデータを音に変調するものではない。音楽などにデータを違和感なく埋め込むための技術だ。音響OFDMを応用すれば、テレビCMなどにURLなどのテキスト情報も容易に埋め込めるようになる。われわれの生活にとって音楽が非常に身近な存在であることを考えれば、秘められた可能性の大きさは容易に想像がつくはずだ。

 では、音響OFDM技術とは果たしてどのようなものなのか。その仕組みを簡単に説明しよう。

 われわれが日々、耳にする音は、低音から高音までさまざまな音色によって構成されている。人間が感じることのできる音の高さは、一般的に20Hzから2万Hzまで。ちなみに、Hz(ヘルツ)というのは音の高さの単位で、空気中を音が伝わる際に1秒間に振動する回数を指す。振動数が少ない、つまりヘルツが小さければ低い音となり、振動数が多ければ高い音となる。音響OFDM技術では、まず、オリジナルの音楽から高周波部分を削除。この段階では、音楽は高音部分の欠けたこもり気味の音質になる。

図1 音響OFDMの概要(出典:NTTドコモ)

 次に、音楽に埋め込みたい情報を、すでに無線LANなどで一般的に使われているOFDM技術を用いて音に変調する。ここでの違いは、無線LANではデータを電波に乗せるのに対して、音響OFDM技術は文字通り音に乗せる点にある。ただし、情報を単に変調しただけでは、人の耳にはノイズにしか聞こえない。

 そこで音響OFDM技術では、OFDM変調されたデータをオリジナルの音楽の周波数分布に合わせて音質を補正。併せて、高周波部分をカットした音楽と合成する。これによって、オリジナル音源とほぼ同様の周波数分布を再現でき、データを埋め込む前とほとんど違和感のない音色を実現しているわけだ。

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