NTTドコモによると、音響OFDM技術は現在、技術革新の途上にあるものだが、現状でも1秒間で100バイト程度の情報を伝送することが可能だという。URL程度であれば、1、2秒で伝送できる計算だ。音を利用するということで、雑音の影響なども気になるが、一般的に雑音は低音のものが多く、金属音や拍手といった高音のものでなければ問題なく転送は可能。現状、音源と2〜3m程度離れていても十分利用できるという。
では、同社はなぜこの技術の開発に乗り出したのか。その背景には、ユビキタス社会へ対応するために、携帯電話として機能を高度化できる余地がまだ残されているという同社の考えがある。同社で音響OFDM技術の開発に携わったNTTドコモ総合研究所コミュニケーションメディア研究グループの松岡保静氏は、「携帯電話は高機能化が進み、マイクもカメラも搭載済み。カメラにはQRコードを読み取る機能も一般的に実装されている。では今後、社会のユビキタス化が進む中で、携帯電話に必要とされる機能は何かを考えた際に、マイクとスピーカーのユビキタス化が必要だと判断した」と説明する。
ただし、その開発は一筋縄では進まず、技術を確立するまでに丸2年を要したという。以前から、音声にデータ信号を重畳して伝送する技術の開発が進められていたが、当初はスペクトラム拡散方式と呼ばれる変調技術を用いていたため、その技術的な特性から伝送できる情報量は現在の10分の1程度に限られていた。
「伝送速度の点で開発が壁に突き当たり、それをどのように乗り越えればよいのかに悩んでいたところ、たまたまOFDM技術を知る機会を得た。それも、弊社の研究開発部門が無線通信や音響など、さまざまな分野で技術開発を進めていたからこそ」と松岡氏は打ち明ける。
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