オープンソースソフトウェアが活動家たちに注目されない理由Magi's View(1/2 ページ)

理屈の上では、フリーおよびオープンソースソフトウェアには倫理的および社会的問題に携わる人々の関心に直接訴える力があってしかるべきである。だが実情はFOSSおよび活動家たちの両コミュニティーはほとんどといっていいほど互いに関心を示そうとしない。いったいなぜだろうか。

» 2006年12月21日 10時00分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 理屈の上では、フリーおよびオープンソースソフトウェア(FOSS)には倫理的および社会的問題に携わる人々の関心に直接訴える力があってしかるべきである。だが実情はかなり違っている。FOSSおよび活動家たちの両コミュニティーが倫理的に共通の立場を取り、表現の自由に始まり、組合組織、消費者の権利やプライバシー、独占禁止法に至るまでの各種の社会的関心を共有することは多いのだが、この2つのグループはほとんどといっていいほど互いに関心を示そうとしない。いったいなぜだろうか。

 FOSSと活動家のどちらの領域にも馴染みのある人々は、FOSSを活動家たちに受け入れてもらう以前に幾つか克服すべき問題があることに気づいている。こうした問題には、FOSSコミュニティーの度量が狭いこと、テクノロジーに疎い活動家たちに適切な言葉で語れていないこと、良好な関係が築けていないことが含まれる。結局、FOSSの問題とそれ以外の問題、双方の根底にある価値観に目を向けない限り、両者につながりが生まれることはないだろう。

FOSSコミュニティー内の問題

 ヘンリ・プール氏は、活動家向けにインターネット上の運動を計画する仮想企業CivicActionsのメンバーだが、フリーソフトウェア財団(FSF)の理事、そしてDefective By Designの実行委員も務めている。彼はFOSSと活動家の両コミュニティー間の交流の欠如を、欧州における言語の異なる者同士のコミュニケーション不足に例えている。どちらの場合も、言葉の壁に加えて文化の違いがを分断を引き起こしている。FOSSコミュニティーのメンバーは、自分たち好みの専門用語が使える仲間同士では倫理的および社会的問題について気張らずに語ることができるが、「雰囲気の異なる」外部の人々とはそれができない、とプール氏は述べている。FOSSコミュニティーの人々は「外の世界に出た経験があまりないので、経済や宗教の領域に公平さを求める、自分たちと非常によく似た人々の存在を知らないのだ」とも彼は言う。

 比較的FOSSコミュニティーの年齢層が低いことがもう1つの要因ではないか、とプール氏は考えている。成熟という概念を、他者との関係を深める段階的な過程と捉える彼は、多くのFOSS支持者が自分たちと社会的活動家との類似性を受け入れられないのは年齢が若過ぎるからということもあり得るとしている。

 むしろ、若いFOSS支持者たちの目は違いの方に向けられることが多い。一部の活動家団体では――すべてではないが――メンバーの平均年齢が上昇する傾向にあることが、この問題をさらに複雑にしている。FSFの理事でDefective By Designキャンペーンの中心的な実行委員でもあるピーター・ブラウン氏によると、FSFは「われわれのメーリングリストや活動の参加者には30歳未満の人々が相当いる」ことに気づいているという。これに対し、自らが活動への参画を呼びかけた政治意識の高いある雑誌では読者の平均年齢が40歳を優に超えるだろう、とブラウン氏は推測している。

 スカウト活動キリスト教の団体にFOSSへの興味を持ってもらおうという運動を展開してきたライターのマクロ・フィオレッティ氏も、FOSSコミュニティーが孤立していることを認めている。だが、FOSSコミュニティーに対する彼の見解は、プール氏やブラウン氏よりもずっと厳しい。自らの活動について書いた記事に寄せられた反応を見て、フィオレッティ氏は「わたしが当たった団体の多くは、まったく取り合わないか意見に賛同してくれるかのどちらかだったが、FOSS組織からの反応の80%は否定的なだけではなく憎悪や偏見に満ちていた」と述べている。また、そうした反応の大半は、スカウト活動の関係者やキリスト教の信者にFOSSの活動が乗っ取られるという不安や、そうした団体は偽善者か人種差別論者だという非難につながるものだったという。「寛容で伝統にとらわれず公平で自由を愛することを誇りとしている割に、FOSSコミュニティーには偏見を持った人々や非常に心の狭い人々が少なからずいる」とフィオレッティ氏は結論づけている。

 ブラウン氏は、こうした偏狭さゆえにDefective By DesignのメッセージがFOSSコミュニティー内部でしか受け入れられないのだと述べている。ブラウン氏自身はプログラマーではないが、FSFの常務理事として、多大な時間をかけてFOSSの魅力を広める方法を模索してきた。彼の出した結論は、ソフトウェアのことより倫理や道徳についての議論が必要である、というものだ。

 ブラウン氏はFOSSをリサイクルになぞらえて「リサイクルとはどういうことだろうか。リサイクルは、ごみを処理するための最も経済的な方法だろうか。それとも、環境を守るための方法なのだろうか」と問いかける。その答えに関連して、リサイクルが普及したのはごみ処理の詳細ではなく社会的責任について議論したからであり、FOSSコミュニティーも同様のアプローチを取る必要がある、と彼は述べている。

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