オープンソースソフトウェアが活動家たちに注目されない理由Magi's View(2/2 ページ)

» 2006年12月21日 10時00分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
前のページへ 1|2       

社会活動家ら側の問題

 同時に、活動家たちの側にも独特の偏狭さが存在する。スカウト活動関係者やキリスト教信者に話を持ちかける場合は、「議論を始めること」が大きな問題だった、とフィオレッティ氏は語る。そうした人々からは、そもそもわたしの話をどうして聞く必要があるのかを必死に理解しようとする様子がありありと伺えた。彼らはわたしの主張に反対していたわけではない。ただ、想定されている主題が理解できなかったのだ。掲げられた組織の使命と無関係に思えるものについて、方針を定めて押しつけることに誰が多大な労力を費やすだろうか。これは、すべての教会やスカウト組織に対して最低でも2本は柄の付いたねじ回しを購入しておくように要求するのと同じで、本質的に見当違いなことだ」。そうした活動家たちが平和主義と環境保護との関連性を活動の理由として見出したからといって、彼らがすぐに既存の信念と新しい概念との関係を見つけ出せるとは限らない。

 ブラウン氏もまた、テクノロジーに疎遠なことが原因と考えられる同様の経験をしている。フリーソフトウェアに関心を持ってもらうために活動家向けのメディアに働きかけを行ったときのことを、彼は次のように語る。「彼らはフリーソフトウェアの考え方を聞いてとても困惑していた。ソフトウェアのことは分からない、というのが大きな理由だった。彼らは技術者ではないし、テクノロジーに対して大きな不安を感じてもいる。調査したり意見を持ったりするのが難しいテーマだと思っているので、彼らは実際にテクノロジーを避けている。実は、ただ理解していないだけなのだ」。こうした経験を通じてブラウン氏は、活動家たちがFOSSに好意的な反応を示して至ら、少なくとも倫理的なレベルではFOSS関係者も同じ態度をとったことだろう、と述べている。現在ブラウン氏はこうした新たなアプローチを通じて活動家たちのコミュニティーに接触するために、FSFによるキャンペーンを企画している。

考えられる解決策

 こうした組織間のつながりの欠如は、両コミュニティーのメンバーが日常的な関心ごと以上のことにはなかなか目を向けようとしないことに起因している、とプール氏は示唆する。CivicActionsでの取り組みを踏まえて、彼は考えられる解決策を提示している。

 CivicActionsのメンバーは離れた場所で活動を行っているため、プール氏が「バリューリミックス(value remix)」と呼ぶ、年に数回の会合で顔を合わせることになっている。このミーティングで、メンバーたちは自らが大切にしている価値観を書き記し、それについてグループで議論を行う。「その結果、非常に現実的なレベルでわれわれを突き動かしているものが何なのか、本当に分かるようになってきた。われわれの独創性の根底にあるもの、われわれの情熱、そしてわれわれの仕事を連携させる過程を通じて、最終的にわれわれは技術的な専門用語を口にしない人々との歩み寄りを果たし、対話できるようになる。そうやってCivicActionsの技術者たちは、普通であれば親密な対話やつきあい方ができないはずの人々とも非常に親しくなっている」。つまり、普段の仕事よりも抽象度の高いレベルに移行することで、CivicActionsのメンバーたちは共通の話題を見つけているのだ。

 CivicActionsではこれと同じ方法でクライアントに接している、とプール氏は補足する。CivicActionsのあるクライアントが死刑執行への反対運動を実施していることに触れ、プール氏は、FOSSと社会的活動はいずれも突き詰めれば「尊厳と自由」にかかわっているのだと語る。「わたしが言いたいのは、ほかの誰かの命を奪う権利など誰にもない、ということだ。それに、わたしが作り上げたソフトウェアをわたし自身から奪う権利が誰にあるだろうか。わたしの子どもにミキシングはよくないという権利が誰にあるというのか。われわれの中には、自らがその存在を信じ、基本的にはすべての面で整合の取れたある種の価値観が存在するのだが、日々の活動の下ではその整合性について話し合う機会がないのだ」。CivicActionsがクライアントとの間に築いているのと同様の関係をFOSSコミュニティーのメンバーが社会的活動家との間に築き上げることができれば、FOSSコミュニティーと社会的活動家の団体は、結局、自分たちが同じ価値観を支持していることに気づくだろう、と彼は述べている。

 FOSSの訴求力を高めるどのような試みであっても、共通の価値観を持つ人々に働きかけるのが道理である。さらに、ブラウン氏が指摘するように、例え1つでも社会的活動団体からの支持が得られれば、そうした団体の大半からも容易に支持が得られるはずだ。「ある団体は子供たちの貧困に反対しているかもしれないし、別の団体はリサイクルを進めているかもしれない。しかし、こうした団体に加わっている人々はほとんど、また別の活動へと移行させることができる」。事実、多くの場合、彼らは活動の場を次々に変えていく。どんな問題に注目しているにせよ、活動家たちはほかの問題に関しても支持を表明することが多い。彼らは、そうした問題の背後にある価値観の間に直接的な関連性を見ているからだ。もしそういった価値観の1つになることができれば、FOSSは急速に普及していくはずである。

Bruce Byfield氏はセミナーのデザイナー兼インストラクターで、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリストでもある。


前のページへ 1|2       

Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.

注目のテーマ