ビジネスコミュニケーションの変遷と、IMの今ビジネス向けのメッセンジャー Biz IM市場の幕開け(第1回)(2/3 ページ)

» 2006年12月25日 08時00分 公開
[渡邉君人(Qript),ITmedia]

企業内コミュニケーションの歴史と変遷

 企業内のコミュニケーションツールの歴史について少し触れてみたい。1980年代後半にアメリカで初めて「グループウェア」という概念が誕生した。紙を利用した社内の情報共有システムから、コンピュータを利用する社内コミュニケーションの実現という新しい時代へ突入した。1990年代に入ると、インターネットが普及し、大企業から徐々に中規模、小規模の企業にもインターネットやコンピュータの導入が進んでいった。

 インターネットが企業へ導入されると、メールが通信手段として積極的に活用され、電話やFAXに比べて通信費や紙資源の削減が大きなメリットとなることを企業が認識するようになる。1993年には携帯電話端末の販売が自由化され、これまではレンタルでしか利用できなかった携帯電話が、簡単で安く手に入るようになり、コンシューマーへと一気に普及していく。

 インターネットやコンピュータの導入にさえ不安を抱えていた企業も、今では従業員にPCを持たせ、グループウェアを導入し、営業マンに携帯電話を持たせている。この10年でビジネススタイルは天と地ほど変わってしまった。そうして今、電話、メールに次ぐ第3のコミュニケーションツールとしてIMが注目されている。

 IMが日本より早く普及していた欧米では、以前からビジネスにおけるIMの有用性が認知され、企業向けのIM製品が数多く販売されている。日本でも大企業を中心に、大規模なシステムの一部としてIMが利用されているケースはあるが、今後は中規模もしくは小規模企業でもIMを利用したいというニーズが増すと感じている。

 なぜなら、当社の顧客の多くは従業員500人以下の中規模・小規模企業であり、「IMの存在を知らなかったが潜在的にIMを必要としていた」「ある特定の部署でIMを必要としていた」というケースが多い。それらユーザー企業の声を聞くと、潜在的なIMのマーケットが今後、除々に顕在化する予兆を感じる。

なぜ今、IMなのか?

 ネオテニーの伊藤穣一代表取締役社長は、2006年8月に渋谷で行われた首都圏情報ベンチャーフォーラム主催「ビジネス・コミュニケーション・ツール セミナー〜インスタントメッセンジャー市場の新規開拓に向けて」の基調講演で、「わたしのビジネスは、ほとんどIMで成り立っている」と話した。

 なぜIMがここまでコンシューマーの間で広まり、かつ企業でもその存在意義が認識され始めたのか。それは2000年に入り、インターネットへの接続がダイヤルアップからブロードバンドが主流となり、常時接続の環境が整備されたことなどから、IMによる本当の意味での「リアルタイムコミュニケーション」が現実的になったことが大きな要因といえる。

 メールがプル型の非同期型で、自分でメッセージを取りにいかなければいけないのに対し、IMはプッシュ型の同期型のため、リアルタイムでテキストのやり取りができる。メールやグループウェア、携帯電話の導入で企業内のコミュニケーションは大きく発展した。

 しかし、その影でそれらではカバーしきれない部分のコミュニケーションツールにIMを利用する人たちが多数存在する。そこには、既存のコミュニケーションツールに限界を感じていること、また新たなツールを求めていることなどが考えられる。

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