ビジネスコミュニケーションの変遷と、IMの今ビジネス向けのメッセンジャー Biz IM市場の幕開け(第1回)(1/3 ページ)

「電話に出られない」「メールは届いただろうか?」――電話やメールでもカバーできないコミュニケーションの隙間が存在する。その隙間を埋めるのに最適なツールとして、企業がインスタントメッセンジャー(IM)に注目し始めた。

» 2006年12月25日 08時00分 公開
[渡邉君人(Qript),ITmedia]

「ビジネス向けのメッセンジャー BIZ IM市場の幕開け」と題し、IM開発を手がけるQriptの渡邉君人氏の連載を、本記事を含む下記5つのテーマで行います。

第1回 「ビジネスコミュニケーションの変遷と、IMの今」

第2回 「変わるビジネスコミュニケーション」

第3回 「大企業がついに乗り出すIM改革」

第4回 「必見!あなたの会社でIMはこう使え」

第5回 「上司や同僚だけじゃない。IMがつなげる未来のコミュニケーション」


IM(Instant Messenger)とは?

 みなさんは「インスタントメッセンジャー」(Instant Messenger)をご存じだろうか。インスタントメッセンジャーは、インターネット上で同じソフトを利用している仲間がオンラインかどうかを調べ、オンラインであればメッセージングやチャット、ファイル転送などを行うことができるアプリケーションソフトウェアだ。「IM」「メッセンジャー」などと呼ばれることもある。

 一般的には大手ポータルサイトが提供する、「Yahoo!メッセンジャー」や「MSNメッセンジャー」など、フリーIM(無料のIM)が主流となっている。もともとIMは、1996年にイスラエルで誕生し、欧米のポータルサイトが利用者囲い込みのために次々と採用していったことで、広く普及した。

 普及の過程には、インターネットやコンピュータの普及が早かった欧米で、10代の若者たちの間で手軽なコミュニケーションツールとして絶大な支持を集め、活発に利用されてきた背景がある。今の若者たちが携帯電話でいつでもコミュニケーションできるようになったように、そのころ、彼らにとってはIMが電話以外で最もリアルタイムにコミュニケーションできるツールだったのだ。

 そして、IMが誕生してからちょうど10年となろうとする今、そのIMにすっかり慣れた親しんだ世代が社会に出て、ビジネスの場でIMを利用するようになった。ビジネスシーンでのIM利用者は年々増え続け、今では約3000万人に上るともいわれている。

日本の企業向けIM市場への参入

 わたしたちQriptも、2000年の会社設立当初からIMの開発を行ってきた。もともとは、大阪大学大学院工学部の仲間と、広い阪大の敷地内で研究室間のコミュニケーションを円滑にしようと考えたのがきっかけだった。

 端から端まで徒歩で30分もかかる敷地内をわざわざ訪問しても仲間がいない、電話をしても応答がない、ということが頻発し、それを解消するために自分たちでIMを開発してしまったのだ。

開発当初のIM Qriptが開発したキャラクター、携帯電話対応のIM

 IMによってコミュニケーションは随分と円滑になった。まず、簡素なメッセンジャーに喜怒哀楽の表現を加えてみよう、という発想でコンシューマー向け製品にキャラクターを付けたIMを開発したり、世界に先駆けて携帯電話のWebでも利用できるIMの開発にも成功した。

 すると、お付き合いのある企業から会社で利用できるIMへの要望が出始め、「メールのように企業内でIMが利用される時代が必ずくる」と感じ、2003年から企業向けIMの開発を本格化した。フリーIMにはない、セキュリティや管理性を備え、ビジネスユーザービリティを追及したIMを世に出そうと考えたのだ。開発当初は「ビジネス」と「IM」を結びつけるという発想が一般的には理解されず苦しい時期もあった。

 時代は流れ、かつては「若者の遊び道具」としてしか認知されていなかったIMが、今まさに「ビジネスツール」として日本のビジネス界に浸透しようとしている。

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