ビジネスコミュニケーションの変遷と、IMの今ビジネス向けのメッセンジャー Biz IM市場の幕開け(第1回)(3/3 ページ)

» 2006年12月25日 08時00分 公開
[渡邉君人(Qript),ITmedia]
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既存コミュニケーションツールの限界

 例えば、メールは世界標準のコミュニケーションツールとなったが、そのために業務上の連絡やプライベートな連絡、メルマガ、スパムメールなど、日々あらゆる種類の膨大な数のメールが送信されてくる。それを処理するだけでもかなりの時間と労力を要するのに加え、各々のメールのプライオリティに対する送信側・受信側の認識の相違が避けられない。

 それによって、返信がもらえない、返信までに時間が掛かるなどのコミュニケーションロスやタイムロスが発生しがちだ。相手の状況が分からないため、いつ開封してもらえるか分からないメールに対し、できるだけ早期に返信がもらえることを期待してメールを送らなければならない。メールを送った後に「○○についてメールを送ったけど……」と、わざわざ電話で確認するといった行為はその典型だ。

 今ではグループウェアにもさまざまな機能が付加されているが、基本的には予定表や掲示板、ファイルボックスなど情報を蓄積しておくツールとして利用されている。グループウェアの主要機能となるスケジューラーは、あくまで事前のスケジュールを反映するものであり、打ち合わせが長引いたりといった急な変更など、「今」の状態が予定表と違っているということはよくあることだ。

 そこでもまた、不在なのに連絡してしまうようなコミュニケーションロスが発生する。よりスピードのあるビジネスを実現するツールとしては、完全ではない。

 上記のことを考えたときに携帯電話が最もリアルタイム性の高いコミュニケーションツールだろう。ただし、打ち合わせ中であれば返信ができないことが多いし、電車の中など移動中は利用できないケースもある。やはり、相手のリアルタイムな状況が分からない、という点ではメールやグループウェアと同じともいえる。

 このように、ビジネスを無駄なく円滑に進める上で必ず障壁となる時間的・空間的な壁を限りなくなくし、より効率的なコミュニケーションを求めた人たちが、離れていてもまるで隣にいるように相手の状態が分かり、かつメールよりもスピーディーなメッセージングが可能なIMを自然に取り入れていったことは至極当然の流れといえるだろう。

急成長する世界のIMマーケット

 それでは気になるIM市場は今、どのようになっているのだろうか。2005年10月、米International Data Corporation (IDC)が行った企業向けIMの利用と世界市場規模に関する調査結果がIT系媒体から発表された。

 その報道によると、IMサーバソフトウェアやメッセージ交換の保護/管理製品を含めた 企業向けIM 市場が急成長を続け、2005年に3億1500万ドル規模に達した。2009年には7億3600万ドル規模に伸びると報じている。

 2005年に世界で2800万人以上のビジネスユーザーが 企業向けIM製品を利用し、1日当たり10億通近くの IMのメッセージを送信するまでに利用が広がっているという。企業向けIM製品の売上は2004年と比べ、約40%近くも急増しているという。

日本のIM市場 日本のビジネス向けIM(Biz IM)市場予測

 日本はどうだろうか。日本では上記ほど詳細なデータが発表されていないため、当社内での算出した予測をご覧いただきたい。企業内のインターネット人口と、企業内IMユーザーの推計から算出したデータとなる。

 当社では現在の日本における企業内IMユーザーを、企業内インターネット人口の約0.5%にあたる15万人程度と見込んでおり、2010年には企業内インターネット人口の約15%にあたる約550万人が企業内でIMを利用するようになると考えている。一人当たりの導入コストを1万円とした場合、その市場規模は約500億円規模に上るという予測だ。

 このように、IMは通信環境の発展とともにコンシューマー市場からビジネス市場に広がりを見せている。電話やメール、グループウェアにはないIM特有のリアルタイム性を強みとして、今後ビジネスでの市場はますます拡大するだろう。

渡邉君人

IMを中心としたアプリケーションソフトウェア開発を行うQriptの代表取締役CEO、大阪大学大学院工学研究科博士課程に在籍中。中学時代からコンピュータと向き合うプログラマー、現在は社長業に注力。2000年の設立以来、コンシューマーからエンタープライズ向けまでの幅広いIM製品の開発と販売を行っている。


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