大企業がついに乗り出すIM改革ビジネス向けのメッセンジャー Biz IM市場の幕開け(第3回)(1/2 ページ)

過度な無料インスタントメッセンジャーの利用により、生産性低下や情報漏えい、ウイルス感染によるシステムへの影響が懸念される。大企業を中心にその利用を禁止、制限しているケースが多い。しかし最近、企業が規制の見直しに向けて動き出しているようだ。

» 2007年01月10日 08時30分 公開
[渡邉君人(Qript),ITmedia]

「ビジネス向けのメッセンジャー Biz IM市場の幕開け」と題し、本記事を含む下記5つのテーマで連載しています。

第1回 「ビジネスコミュニケーションの変遷と、IMの今」

第2回 「Biz IMでコミュニケーションはこう変わる!」

第3回 「大企業がついに乗り出すIM改革」

第4回 「必見!あなたの会社でIMはこう使え」

第5回 「上司や同僚だけじゃない。IMがつなげる未来のコミュニケーション」


 現在、企業向けIM(Biz IM)の導入を検討している、ある企業の例をみながらその動きについて検証してみよう。

 A社は、関連会社を含めて3万人以上の従業員を抱える。情報セキュリティに対する管理体制は、ほかの一般的な企業に比べて先進的な体制を目指している。しかしながら、社内調査では2003年〜2005年の間に情報セキュリティに関する事故が大小含めて約6倍に増えたという。

 この結果について、「どれほど規制を強化しても、そこに人が存在する限り事故は発生する」というのがA社の見解だ。そこでA社は、一時的な措置としてトンネリングソフト、P2Pソフトウェア、IMツールの3カテゴリーに属するソフトウェアの使用を一斉に禁止した。

 しかし、A社の最終的な目標はあくまで規制を強化することではなく、情報資産を効率的に有効活用して、最終的にはそれが価値として企業に還元されることにある。それを実現するために、できるだけ早期に「安全性と利便性のバランスを図る」ことを目標にしているという。

 注目すべきは、このような規制に対して従業員にヒアリングをしたところ、3つの規制対象ツールの中でも、「IMは業務に必須のツール」という声が現場から最も多く挙がった、という点だ。特にニーズが強いのは、リアルタイムかつプッシュ型コミュニケーションが必要なコールセンターや事務サービス、需給管理部門、メールアカウントのないユーザーを抱える部門、聴覚障害者を抱える部門などだという。

 実際に当社の顧客でも、コールセンターや事務部門、メールアカウントのない部門などで利用されているケースは多い。そこで、A社はフリーIMの利用を禁止する間にセキュアなIMソフトウェアを選定し、最終的にはそれを会社の基準として利用するという道を選んでいる。

Biz IMの選定要件

 例として、A社が挙げたBiz IMの選定要件をみてみよう。

1)ログの保存が可能であること

2)すべての利用者登録はすべて管理者がコントロールすること

3)グループ分けをして管理ができること

4)ファイルの添付送信が可能なこと

5)ファイルサーバ機能を持たないこと

 1)は、ファイル送信を含めたログの保存が必須である。2)は、フリーIMのように自由に好きな人を登録して利用できるようでは問題であり、これを防止するために必須となる。3)は、大規模な企業や部門では必須条件になる。4)は、メールと同じ感覚で不便なく利用してもらうためには最低限必要な機能。5)は、会社のファイルサービスの整合性確保のために必須になる、とのことだ。

A社の対応と取り組み A社の対応と取り組み

 これらを選考基準にして、候補となるIM製品の仕様検討・比較表作成、テスト導入・現場テスト、全社展開の承認、標準製品として制定というステップを踏み、セキュアなBiz IMの導入を目指すことにしている。

Pマーク、個人情報保護法、JSOX法なども視野に

 個人情報保護法の施行やe文書法、プライバシーマーク(Pマーク)やISMS取得に向けた動きや、今後はJSOX法対策がコミュニケーションツール規制にもかかわってくると思われる。JSOX法は、違法行為や誤りなどなく、健全で効率的に企業活動が行えるよう、会社全体や部署単位などでルールや基準を設定しなければいけないわけだが、多くの企業がどこまでの対応策が必要かと頭を悩ませていると思われる。

 もちろん、すべての情報の出入り口となるコミュニケーションツールの見直しも必要になるだろう。IT統制においては、ユーザー認証、ログ取得、ログ改変防止、暗号化通信、バックアップなどは最低限クリアしておかなければならない条件のようだ。

 これらを考慮すると、通信記録の残らないフリーIMの企業内利用は、今以上に難しい状況になるだろう。安全なIMの導入を検討される際には、ぜひ上記に挙げたBiz IMの選定要件を参考にしてみてはどうだろうか。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ