企業は高速PLCに何を求める?「エンタープライズPLC」のススメ(1/3 ページ)

一口にPLC製品といっても、低速ながら安定稼働するもの、たくさんつなげられるものなど、それぞれに独自の機能が盛り込まれている。ここでは、企業利用を前提としたPLCの要件を考える。

» 2007年02月08日 08時00分 公開
[井上猛雄,ITmedia]

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HPA仕様の製品も登場 PLC製品/サービスの動向

 今回は、高速PLC市場に参入しているベンダー、通信事業者の製品やサービスについて見てみよう。まずコンシューマ向けでは、昨年末に国内でいち早くHD-PLC方式のPLCモデムを発売したパナソニック コミュニケーションズ(松下電器産業)を皮切りに、アイ・オー・データ機器が同等の製品を出荷。エレコムも発売を予定している。前回でも紹介したとおり、パナソニック コミュニケーションズは「CEPCA」という業界団体において、宅内PLC技術を共存させるための仕様を検討している。

画像 パナソニック コミュニケーションズは、国内でいち早くPLCモデムを発売。写真はHD-PLC方式のスタートパック「BL-PA100KT」
画像 アイ・オー・データ機器が発売したPLCアダプタのスターターパック「PLC-ET/M-S」。パナソニックの製品と同等機能。OEMと推測される

 宅内向けとしては、このほかに「HPA」がPLC製品を推進している。ザイセルジャパンでは、HPA仕様のHomePlug AV方式を採用したPLCモデルを国内で初めて発売する予定だ。通信速度に関してはCEPCAの場合とほぼ同等の200Mbpsだが、伝送距離が約300mと長く、モデムも最大64台まで接続できる。高速なHPA仕様の製品も登場し、家電機器を接続する高速PLC促進に大きな弾みをつけるかもしれない。

 また、通信事業者もFTTHサービスのオプションとしてPLCモデムを提供する方向だ。KDDIは「ひかりoneホーム」向け宅内LANサービスの一環として、またNTT東日本ではFTTHサービス「Bフレッツ」に契約しているユーザーや新規契約ユーザーを対象に優待販売を開始している(2台セット、いずれも先着500名限定)。NTT西日本グループでは、PLCモデムの配置や修理などのアフターサービスを展開する「トータル・ケア」サービスを今春にも予定。関西電力子会社のケイ・オプティコムなど電力系通信事業者6社も、PLCモデムを無料でユーザーに貸し出してモニター調査に乗り出している。

 一方、企業向けについては、NECグループと住友電気工業がPLC機器を使ったネットワークインテグレーション事業に参入を表明。いずれの製品もチップにDS2製を採用するのが特徴だ。DS2搭載PLCモデムは海外において主にアクセスライン系に用いられてきた実績があり、両社は構築ノウハウを数多く蓄積している。

画像 東洋ネットワークシステムズが企業向けに提供する「TOYONETz PLCモデム PL3-CPE-XEシリーズ」。リピート機能により、広いエリアで伝送できる。ネットワークID機能、VLAN(仮想LAN)機能のほか、IPマルチキャストのトラフィック制御やQoS(サービス品質)機能(8段階の優先制御)を備える。オプションでSNMPによるネットワーク管理も行える
画像 住友電工が企業向けに提供するPLCモデム「PAU2210-R2/PTE1310」。リピータ機能によって最大991台まで接続台数を拡張できる点が大きなポイント。QoS機能、VLAN、モデムの認証、SNMPエージェントによるネットワーク監視、特定周波数にマスクをかけるパワーマスク機能などを装備する

 これ以外に、関西電力系のプレミネットがビル/工場、ホテル向けに提供を開始する予定だ。ただしこちらは、イスラエルのイトラン・コミュニケーションズのチップを採用した低速PLCモデムで、変調方式は国内で多数派のOFDM方式ではなく、スペクトラム拡散(SS)方式を採用している。通信速度は2.5Mbpsまでだが、ノイズの多いビルや工場の通信でも長期にわたり安定して運用できるメリットがある。同社は年内に24Mbpsの製品も投入する予定である。

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