企業は高速PLCに何を求める?「エンタープライズPLC」のススメ(2/3 ページ)

» 2007年02月08日 08時00分 公開
[井上猛雄,ITmedia]

 高速PLCはマーケットへの訴求が始まったばかりであり、デファクトとなる仕様も見えていない。PLCの業界団体も3つに分かれており、今後どう展開するのか分からない状況だ。メーカーとしては、共存問題もあるため、最もシェアが高くなるチップを調達していきたいところ。そのためか、複数の団体に「掛け持ち」で参加している企業もある。

 ベンダー数社を取材して見えてきたのは、コンシューマー向けとエンタープライズ向けのマーケットに対し、それぞれ別のチップを搭載した製品を使い分けていく方針だという点。各チップは開発経緯も用途も異なるからだ。

コンシューマー向けとは異なる要件

 まずエンタープライズ向けにPLCを導入する際に想定される場所は、オフィス、一部の会議室、ミーティングコーナー、受付、倉庫、工場などだ。PLCはLANケーブルの敷設が不要という手軽さが最大のメリットである。しかし、比較的新しい技術であるため、導入する際にクリアしなければならない点も多い。特にエンタープライズ向けでは、コンシューマ向けに比べて要求される性能や機能も違ってくる。

 例えば、ビルの中に張り巡らされた電力線の接続状況は、家庭内のそれよりも複雑だ。配線の分岐や、ノイズ源となる要素も多い。たとえ隣同士のフロアであっても、配電系が異なることもある。配電盤・分電盤・電源トランスなどの設置状況をしっかり把握し、それらがもたらす影響について十分に配慮しなければならない。また工場や公共施設では、電源コンセントの配置が限られている場合もあるだろう。

 したがって、事前に専門のシステムエンジニアによって、アセスメントで必要な条件を明確にしておき、綿密なサーベイをしておくことが重要になる。PLCネットワークを設計するインテグレーターでは、機器の設置・評価を支援するための専用テスタを用意していることも多い。

画像 東洋ネットワークシステムズの「PLCスペクトルチェッカ」。専用アダプタをコンセントに挿すだけで、PLC信号のノイズやスペクトル波形を確認できる。電力線の環境調査や通信状況などの基礎データの収集、性能の改善処置、障害の切り分けなどに欠かせないツールだ

 また、部分的な場所にPLCを適用するだけでなく、中規模のビルやホテル全体に対しての適用が考えられる。当然ながら、会議室やミーティングコーナーなどの部分的な適用よりも規模は大きくなり、PLC機器(子機)の接続台数も増えてくる。したがって、無線LANのAP(アクセスポイント)設置と同様に、子機の配置を考え、場合によっては信号を増幅するためのリピータを利用して中継するなど、PLCならではのネットワーク設計のノウハウが必要になってくる。現在のところ、このリピータ機能を備えているのはDS2チップのみ。これは、エンタープライズ用途にDS2チップ搭載の製品が多く用いられているのゆえんでもある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ