サーチの「条件」 企業の戦略、論理を結果に反映できるかよく効くエンタープライズサーチの処方箋(3/3 ページ)

» 2007年03月08日 08時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]
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 そして、徳末氏は「現在ビジネス上では、“新検索エコノミー”が形成されつつある」と語る(図3)。ブランドプロテクション、評判管理などの分野では、サーチがポジティブ/ネガティブ判定に利用され、またコンプライアンス系では、SOX法対応で問題のある電子メール文書などを瞬時に抽出するという使い方もされている。

図3 図3●新検索エコノミーの形成(クリックで拡大)

 さらに、メディア/エンターテインメントといったプレミアムコンテンツ配信系では、検索でコンテンツ同士を組み合わせて付加価値を強化し、情報を顧客の最も必要とする形で提示する新たなビジネスが生まれている。

 既に政府機関などは、国家機密や国家安全上のリスクに対してリアルタイムに知らせるような仕組みを、テロ防止策の事前検知などで利用している。また、チャイルドポルノサイトに関しても、更新ごとに警察当局へプッシュ型アラートを発するという取り組みも行われているという。

 ロイターでは、FASTのリアルタイムインデックス機能をIP(Intellectual Property)の管理に利用する。自社の記事を配信すると同時に関連するサイトをチェックすることで、コピーライトと写真が無断で流用されていないかをチェックしている。

 一方、楽天は2004年ごろからFASTを導入し、顧客が求める商品を迅速に探し出すためにナビゲーション機能を利用している。商品はおよそ1700万アイテム、店子(たなこ)は約4万店、利用するユーザーは3000万人以上、繁忙期には秒速2000件の処理が実行されているという楽天市場は、もはや銀行のオンライン系に匹敵する規模のため、従来のDB系からは満足できる検索結果が出ない。FAST導入により、およそ3、4回のクリックで欲しい商品まで絞り込めるようになったという。

最大の価値はユーザー志向の視点

 先ごろFASTは、DBクレンジング、DBオフローディングといった仮想型インテリジェンスライブラリ「AIW(Adaptive Information Warehouse)」を発表した。構造化/非構造化といったデータリソースの制約を受けることなく、組織内外に偏在する情報を横断的に収集/整備/分類し、サーチ機能を基盤とした業界初のBI(Business Intelligence)ツールとなる。直感的なインタフェースと“クリーン”(質の高い、正確性の高い)なデータを利用することで、意思決定力や生産性を向上させるという。

 「今後、日本市場では、金融、通信キャリア、メディア/エンターテインメント系、製造業(ハイテク系)をメインターゲットとしていく」と語る徳末氏は、2007年度に日本でR&D拠点を設置し、日本語対応プロセスの標準化と、日本語におけるエンティティ(人名、地名、社名など)の抽出、ポジティブ/ネガティブ、あるいはリスクという切り口での研究を進めるという。

 FASTが考えるサーチの最大の価値とは、「ユーザーセントリックな視点が確保できるか」という点だ。検索した際にユーザーが必要とする情報にコネクトできること。検索が自分の言葉に変換してくれること。さらに、ユーザーが必要とすることを理解し、何が欲しいのかを見つけてくれること。これらが可能になれば、今後のエンタープライズサーチ市場拡大の足がかりになるとしている。

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