Officeとの連携が最大の強みとなるか、SharePoint Server 2007(2/2 ページ)

» 2007年03月23日 16時56分 公開
[Chris Alliegro,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版
前のページへ 1|2       

競争上の強み――コスト、Office連携

 SharePoint Server 2007はドキュメント管理プラットフォームとして、EMCのDocumentumやIBMのFilenetのほか、Interwoven、Meridioの製品などと競合している。SharePoint Server 2007は比較的後発だが、競合プラットフォームよりも優位な点が幾つかあるようだ。

 おそらく、SharePoint Server 2007の最も戦略的な強みは、コストが低いことに加えて、ドキュメント管理だけでなく、幾つかの分野の課題解決も目指していることだろう。イントラネットや企業WebサイトをサポートするためにSharePoint Server 2007を新規またはアップグレードで購入する企業は、ドキュメント管理専用のスタンドアロンのプラットフォームを評価して購入するよりも、手軽で便利な製品を入手したいと考える企業かもしれない。こうした製品の選び方は、ほかの分野でMicrosoftに大きな追い風をもたらしてきた。例えば、Microsoftは、大手のビジネスインテリジェンス(BI)プラットフォームベンダーの地位を確立しているが、その一因は、BI機能をSQL Serverに組み込んで提供してきたことにある。また、SharePoint Server 2007のクライアントアクセスライセンス(CAL)は、販売数が非常に多いCore CALに含まれている。Core CALは、Microsoftの大口顧客に利用されているエンタープライズアグリーメント(EA)の主要な要素だ。実際、Core CALを含むEAを契約している企業は、SharePoint Server 2007のドキュメント管理機能のコストの大部分を支払い済みだ。

 また潜在顧客は、SharePoint ServerとOfficeクライアントアプリケーション(ビジネスドキュメントの作成と編集に最も広く使われているツールだ)の密接な連携を、Microsoft製品のメリットと考えるかもしれない。ほかのベンダーはOffice用のドキュメント管理プラグインを提供しているが、MicrosoftのSharePoint開発チームが、Officeアプリケーションでほかの製品との統合のために提供されるツールやフックに、より容易にアクセスできる(また、影響を与えられる)立場にあるのは確かだ。

 SharePoint 2007は、ほかのベンダーのドキュメント管理製品にこれまで投資してきた企業を、乗り換えに踏み切らせることはないかもしれないが、こうしたベンダーはSharePoint 2007を、考慮に入れるべき競合製品と見なすことになりそうだ。ドキュメント管理製品を比較検討している企業、特に、SharePointの従来バージョンの導入企業や、ほかの目的でSharePointに着目していた企業は、少なくとも、SharePoint Server 2007のドキュメント管理機能の評価を行うだろう。しかし、これらの企業の動向から、Microsoftは、自らの最も手ごわいライバルは、自社自身だと気づく羽目になるかもしれない。IT部門がかなり優秀な大企業は、無料のWSS 3.0にカスタムコードを組み合わせれば、自社のドキュメント管理ニーズの多くを満たすのに十分と判断する可能性がある。

慎重なアプローチが必要

 WSS 3.0とSharePoint Server 2007は、従来バージョンをさまざまなドキュメント管理作業に利用する上でネックとなっていた重大な問題に対処している。

 しかし、注意すべき点が幾つかある。

Office 2007との組み合わせ SharePoint Server 2007はOfficeの従来バージョンに対応しているが、一部の機能は、効果を発揮するにはOffice 2007を必要とする。例えば、アクションバーと情報パネルは、Office 2007バージョンのExcel、PowerPoint、Wordでしか利用できない(しかも、厳密に言えばこれらの機能は、Office Enterprise、Professional Plus、Ultimate 2007といったOffice 2007の高価なエディションでのみ提供される)。しかし、Office 2007は、Office 2000以来となる大幅なアップデートが施されており、多くの企業はこの新バージョンへのアップグレードに慎重に取り組むだろう。こうした企業は、SharePoint Server 2007で宣伝されている重要機能の一部は、そのアップグレードが完了するまで利用できないことを認識しておかなければならない。

計画と保守の継続 SharePoint Server 2007では、サイトの構築とカスタマイズが簡単そうに見えるが、だからといって高をくくってはならない。ドキュメント管理サイトとリポジトリを構築するのは難しくないが、これらをドキュメント管理ツールとして効果的に活用するには、十分な見通しを立てた上で構築を進めるのが賢明だ。また、企業はSharePoint Server 2007のドキュメント管理機能を導入するにあたって、同様に慎重な検討を、社内のファイル共有を想定した命名規則や、リポジトリの構成、セキュリティ、物理インフラのサイジングについても行わなければならない。さらに、SharePoint Serverにはこれら以外にも利用要件があるため、複雑な計画を立てて実行していく必要がある。コンテンツタイプを定義することや、企業の業務プロセスをワークフローとしてモデリングし、コーディングすることなど、企業内開発者とIT担当者は、多くの新しい作業を学習し、応用していかなければならない。

ファイル共有との併用 Windowsのファイル共有で現在管理されている企業コンテンツの大部分は、SharePoint Server 2007のドキュメントサイトに移すのは得策ではないだろう。つまり、(1)ハードウェアインフラを複製する、(2)既存のファイル共有構造をSharePoint Serverのドキュメントライブラリに再構築する、(3)ドキュメントを移動し、タグ付けを行う――ことに伴う作業負担、ストレージの増大、ライセンスコストは、こうしたドキュメントをSharePointで管理するメリットでは相殺されないと考えられる。このため、企業はどのようなドキュメントをSharePoint Serverサイトに移すかを、入念に選択しなければならない。ドキュメントやそのほかのコンテンツのうち、共同作業を通じて頻繁に作成、編集されている(技術仕様などのような)ものや、明確に定義された手順に従って作成、管理しなければならないものは、SharePoint Serverによるドキュメント管理に適している。これに対し、静的な、あるいは一般的な「読み取り専用の」コンテンツは、そうではない。例えば、ソフトウェアやメディアファイルの配布には、ファイル共有を引き続き利用するのが賢明だ。

成功にはユーザーの規律意識が不可欠 情報パネルなどの機能は、ユーザーが既定のドキュメント管理プロセスを遵守するのに役立つ。しかし、こうしたドキュメント管理の成功は、ユーザーの受け入れと規律意識に大きく依存する。一部のユーザーは、重要なメタデータの入力や、ワークフローで指定された手続きの処理、ドキュメントの修正やチェックイン/チェックアウトの手続きの実行によって、仕事の負担が増えると考えるかもしれない。体系的なドキュメント管理プロセスは、組織の効率を高めることが最終的な目的かもしれないが、すべての関係者がそうした作業に真剣に取り組まないと、失敗に終わってしまうだろう。

要件と価格

 SharePoint Server 2007を使用するには、Windows Server 2003 Standard Edition、Windows Server 2003 Enterprise Edition、Windows Server 2003 Compute Cluster Editionのいずれかが必要。どの場合も、WSS 3.0と.NET Framework 3.0(Windows Workflow Foundationを含んでいる)が併せて必要だ。さらに、SQL Server 2000 SP4以降、またはSQL Server 2005 SP1以降も必要(MicrosoftはSQL Server 2005を推奨)。

 SharePoint Server 2007は、2006年11月に製造工程向けにリリースされ、現在は一般販売されている。SharePoint Server 2007 Standard CALを持つユーザーは、すべてのドキュメント管理機能を利用できる。Standard CALの価格は94ドル以下(ボリュームディスカウントあり)。Standard CALはMicrosoftのCore CALスイートにバンドルされており、Core CALにはSystems Management Server、Exchange、Windows Serverも含まれている。

前のページへ 1|2       

Copyright(C) 2007, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc. All right reserved. No part of this magazine may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means without prior written permission. ISSN 1077-4394. Redmond Communications Inc. is an independent publisher and is in no way affiliated with or endorsed by Microsoft Corporation. Directions on Microsoft reviews and analyzes industry news based on information obtained from sources generally available to the public and from industry contacts. While we consider these sources to be reliable, we cannot guarantee their accuracy. Readers assume full responsibility for any use made of the information contained herein. Throughout this magazine, trademark names are used. Rather than place a trademark symbol at every occurrence, we hereby state that we are using the names only in an editorial fashion with no intention of infringement of the trademark.

注目のテーマ