Debianプロジェクトの新リーダーSam Hocevar氏に対する初インタビューFocus on People(3/3 ページ)

» 2007年05月06日 07時00分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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LC 例のDunc-Tankという、Debianの主立った開発陣にフルタイムで作業を進めてもらうために資金を提供する構想が論争を巻き起こし、特に前DPLのアンソニー・タウンズ氏が関与していたことで大きな問題と化したことがありました。今後もDunc-Tank的な実験を踏襲する計画はありますか?

SH その予定はありません。Debianの活動予算の使用法については既に幾つかのプランを提示していますが(新規ハードウェアの購入や、会議参加者への資金的サポートなど)、わたし自身がDunc-Tankについては明確に反対意見を表明していたこともあり、今後同様の計画を再開するつもりはありません。個人的な見解としては“Dunc-Tank的活動”と“何もしない”の中間地点に落としどころがあると考えてはいますが、DPLという立場にある人間がそれに関係するのは賢明な判断ではないと思っています。

LC 以前にDPLを務めていたマーティン・ミクルメイヤー(Martin Michlmayr)氏は、リリース管理の理論を構築しておられ、その中ではDebianもケーススタディの1つとして取り上げられています。そこで提案されている内容を何か採用される予定などはあるのでしょうか?

SH 現状でリリース管理のノウハウはそれなりの進歩を遂げており、Etchのリリースまでに要した期間は、Sargeのリリース当時と比べて1年間は短縮されています。Martin氏の理論の骨子は“リリースするのは準備が整ったら”という場当たり的な態勢からタイムベースのリリースプロセスに移行しろというもので、そうした意見にはわたしも全面的に首肯するところです。もっとも、残念なことに、リリースチームに作業形態をどうこうしろというのは、DPLの職分(および権限)を越えた話になるのですが。彼らが自主的にマーティン氏の論文に目を通すことを期待するといったところですね。

将来的な展望

LC DPLとしての成功を自分自身で判断するとしたら、何を基準にされますか?

SH その点は何とも言えません。最大の理由は、実務上でどのような障害が待ちかまえているかをまだ確認していないからです。現状でどのような構想を抱いているにしろ、そのすべてがわたしの独創な訳はありませんからね。前任者たちもいろいろな構想を持っていたはずですが、さまざまな障害に遭遇したために断念ないし妥協をしたといういきさつがあるはずです。

 プロジェクトの技術的な構想に関してならば、その成否を測る指標を挙げることも可能であり、それ自体は別段難しい話ではありません。プロジェクトの社会的側面の方はそれほど単純な評価はできないでしょうが、アシスタントのコアチームへの配置が実現してその活動が順調に進むとすれば、わたしとしては大いに満足できるところだと言えます。

LC さまざまな構想を抱いておられるようですが、それらは1期間の任期中に達成できるものでしょうか? 必要であれば再選に出馬するというお考えはどうでしょう?

SH 任期中にすべての構想が実現できる可能性は低いでしょうが、多くの活動はDPLの権限を必要としなかったり、最初に若干の準備さえ整えておけばいいという性質のものですから、任期終了後にその成果を見届けるということもできると思っています。

 実際のところ、再選に打って出るという考えは持っていません。わたし個人のライフプランも構築する必要がありますし、人間集団に対する社会学的な探求やプロジェクト管理に興味がない訳ではありませんが、何よりもプログラマーやハッカーとしての生き方を捨てたくはないですしね。仮に誰かほかの人物が魅力溢れる選挙公約を提示してくれれば、わたし自身が喜んでその立候補者に投票することになるでしょう。

LC 自分に課せられた責任や、Debianプロジェクトに関して何か述べておきたいことはないでしょうか?

SH 果たすべき仕事は大変だと感じていますが、決して不可能事だとは思っておりません。Debianプロジェクトについても、ここ数年でリリース管理のノウハウはかなり改善されたと見ています。これはつまり、コミュニティーのメンバーたちは単に改善の必要性を訴えているだけではなく、そのための具体的な作業に着手していることの証明です。いずれにせよわたし1人では何1つ達成できるはずがありませんから、開発陣の手によってDebianをより素晴らしいものに育てるための環境をわたしの働きで整えることができれば、それは望外の喜びだといってもいいのではないでしょうか。そのための支援を頂けるのであれば、諸手を上げて歓迎させていただきます。

Bruce Byfieldは、コンピュータジャーナリストとして活躍しており、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalに定期的に寄稿している。


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