必勝態勢で日本の仮想化市場に臨むXenSource、SCS、CTCの3社(1/2 ページ)

先月、米XenSource、住商情報システム(SCS)、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の3社が戦略的協業を発表した。単なる仮想化製品の提供で終わらないことが予想され、日本における仮想化市場に大きな影響を与えると見られるこの発表の裏側に迫った。

» 2007年05月07日 06時44分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 4月24日、米XenSource、住商情報システム(SCS)、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の3社が、XenハイパーバイザーをベースとしたXenSourceの仮想化製品を日本市場に提供する上での戦略的協業を発表した。

 2006年7月にMicrosoftとの提携を発表したXenSource。業界最高速の仮想化技術であるオープンソースのXenハイパーバイザーをベースとしたXenEnterpriseを開発する同社は、エンタープライズレベルに対応した有力なマルチOSプラットフォーム仮想化ソリューションを提供する企業として大きな注目を集めている。そんな折での協業発表は、控えめに見ても日本における仮想化市場に大きな影響を与えることが予想される。XenSourceはなぜ、SCSやCTCをパートナーに選んだのか? その謎をXenSourceのアジア ジェネラル・マネージャー、ニーマ・ホマユーン氏に聞いた。

XenSourceは多くのVCから出資を受けており、その中には住友商事も含まれるという。インタビューはSCSで行われたが、SCSではトータル仮想化システムとして他社との差別化を図る考えだ。写真は左からSCS IT基盤ソリューション事業部先端技術システム部オープンソース技術チーム主任の玉川修一氏、XenSourceのホマユーン氏、同じくオープンソース技術チーム チームリーダーの長崎嘉明氏

―― まず、ここ最近のXenSourceについて教えてください。

ホマユーン ITインフラにおける非効率なサーバの削減を求める顧客に対し、XenSourceの仮想化製品は、省電力、省スペース、システム管理の負荷低減を通じて、サーバのハードウェアコストや運用コストを劇的に削減します。

 2006年12月に最初の製品となるXenEnterprise 3.1をリリースして以来、現在までに約250社がこの製品を導入しました。さらに2007年4月はじめには、最新版となるXenEnterprise 3.2を発表することができました。

 戦略的には中規模マーケットや企業における各部門内で普及させ、データセンタークラスの機能や管理ツールの追加、そしてISVエコシステムとのパートナーシップによって、上位マーケットを狙っていきます。エコシステムパートナーとしてはEgenera、Cassatt、Stratus、そしてMarathonといったXenSourceのOEM製品が挙げられ、これらはデータセンターの自動化、バックアップ、高可用性、そして障害復旧といったソリューションの一部として使われています。

―― XenSource製品のロードマップについて教えてください。

ホマユーン 2006年については、どちらかといえば簡単に利用できるソリューションとするための活動が中心でした。10分ほどでXen機能の恩恵を利用可能にするための簡単なインストレーションなどがそれです。それまであまり市場に浸透していなかった準仮想化製品ですが、その操作は非常に簡単行えることを示す必要があると考えたのです。

 2007年は、パフォーマンスの向上に大きく注力しています。少なくとも、性能面でVMware ESX Serverに追いつくことが必要と考えたからです。ただ、この点については、先般リリースしたXenEnterprise 3.2で達成されたと言えます。われわれが実施したベンチマークテスト(PDF)では、WindowsゲストではVMware ESX Serverとほぼ同等、LinuxゲストではXenEnterpriseの方が圧倒的に高いパフォーマンスをたたき出しました。これはVMwareも認めるところです。

 われわれは今後もパフォーマンスの改善や機能の強化を継続し、2007年の夏にリリースを予定しているXenServer Family 4.0では、共有ストレージ(NAS)のサポートのほか、Linux/Windowsに対応したライブマイグレーション機能(VMwareにおけるVMotionに相当)の実装や、サードパーティーSDKを提供するつもりです。このうち、ライブマイグレーション機能はマーケティングの観点から言って非常にキーとなり、一方でSDKはパートナー戦略の観点から欠かせないものとなります。

 そして、2007年後半には自動HA機能や障害復旧機能を導入する予定です。

―― XenEnterprise 3.2でVMware ESX Serverに並んだとは言え、仮想化市場におけるVMwareのブランドは強大です。VMwareについてはどう見ていますか?

ホマユーン われわれと比べるとVMwareは歴史もあり、すばらしい企業だと認識しています。ただ、彼らが10年近く掛けて開発してきたESX Serverに匹敵する性能に、われわれは2年ほどで並ばんとしていることに自信を深めているのも事実です。その意味では、VMwareがこれまで手がけてきた「フルバーチャライゼーション」は、オーバーヘッドの観点から考えてもそのアーキテクチャーが古くなってきたと言えるかもしれませんが、それについてはまだまだ啓もうしていく必要があります。

 ビジネス的に見れば、われわれにとって有利なポイントとして大きく2つ挙げられます。1つは、われわれのコア技術である「Xen」がオープンソースで開発されていることです。前述のように、Xenの開発には、XenSourceだけでなく、Intel、IBM、VA Linux、HP、AMD、Novell、Red Hat……など、実に多くの企業が参加し、開発/検証を続けています。製品を導入する顧客からすれば、これは大きな信頼につながります。

 もう1つは、パートナー戦略です。われわれは直接顧客に販売するのではなく、OEMの形で提供していますので、パートナー戦略が非常に重要となります。先にSDKの話をしましたが、SDKやAPIを提供/公開してサードパーティーがアドオンを開発したり、自社の管理ソフトウェアなどと連携可能にするなど、パートナーのエコシステムと融合できないのでは、市場に届ける前にパートナーの支持が得られないでしょう。

 いずれにせよ、われわれのミッションはx86サーバ市場――もしくはすべてのOS――に、新しく開かれた仮想化ソリューションの選択を提供することであり、われわれのビジョンはこの世に生まれるすべての新しいサーバをすべてXen仮想化技術に対応させることです。IAサーバの市場のうち、仮想化の市場はまだまだ5%くらいで、残りの95%という巨大な市場がビジネスチャンスとして横たわっているのです。

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