会社宛ての“エロスパム”、対処しないとセクハラに?

性的な内容のスパムメールに毎日うんざり。対策もしないで放置し、受信を従業員に事実上強要していると「セクハラ」に認定される可能性がある。“エロスパム”に適切に対処しない経営者が責任を問われることになりかねないので、ご用心を。

» 2007年06月01日 19時45分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 会社のメールアドレス宛てに、スパムが毎日大量に送られてくるという人は少なくないだろう。削除するだけでも手間な上、性的な画像や文章が含まれている場合は従業員が不快な思いをする。

 スパムをサーバ段階で止めるにはコストがかかる上、対策をしたところで売り上げが上がったりするわけでもない、と「普通の経営者」なら考える。だがGoogleのような先進企業ならそうは考えないのではないかと(あくまで想像ながら)思いたいが、残念ながらGoogleではない普通の会社であれば、リターンが見込めないものは「単なるコスト」という扱いになり、従って対処も後回しになりがちだ。

 だが、こうした性的なスパムを放置し続けるとセクシャルハラスメント(セクハラ)と認定され、会社が行政指導の対象となったり、訴訟に直面することもありうるのだ──。

性的スパムは「環境型セクハラ」

 ユーザーからの意見や苦情などを受け付けるため、専用メールアドレスを広く外部に公開し、届いたメールをメーリングリスト形式で複数の従業員が受信して対応している職場は多い。ITmediaも企業からのニュースリリースを受け取るためのアドレスを外部に公開しているが、1日数十通のスパムが記者全員に届く。

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 届いたスパムは性的な内容を含んでいることが多い。主婦が体を売るなどといった内容の文章にURLを混ぜたものや、バイアグラの販促、男性の局部の画像が埋め込まれているものなど、さまざまな内容の“エロスパム”が毎日届き、過激なものも少なくない。

 セクハラ相談などを受け付けている東京労働局雇用均等室によると、性的なスパムメールは、男女雇用機会均等法上で事業主が防止を義務づけられている「性的な言動」に当たり、受信を防止せずに放置した場合は「環境型セクハラ」とされる可能性が高いという。

 厚生労働省の告示(2006年615号:PDFへのリンク)によると、性的な言動とは「性的な内容の発言と性的な行動」で、社内にわいせつなポスターを掲示したり、裸や水着の女性のスクリーンセーバーを使用したりする場合などもこれに含まれる。性的なスパム受信をフィルタリングせず、結果的に従業員に閲覧を強要する場合もこれに当たるというわけだ。

 環境型セクハラとは、性的な言動や行動によって労働者が不快な思いをしたり、仕事に支障が生じたりするセクハラを指す。性的なスパムを受け取ることで不快な思いをしたり、仕事が手に付かなくなったりするケースがこれに当てはまる。

セクハラ対策は事業主の「措置義務」

 今年4月1日に施行された改正男女雇用機会均等法では、事業主のセクハラ防止が「配慮義務」から、具体的な措置を求める「措置義務」に変わった。経営者がとるべき措置は、前出の厚労省告示に9項目定められており「セクハラを認めない方針の明確化と周知・啓発」「セクハラが起きた場合の迅速な事実確認と対処」などが含まれている。

 スパム問題に当てはめると、性的スパムの受信強要というセクハラが起ないよう、経営者はサーバレベルで可能な限りシャットアウトするよう努め、そのために具体的な防止措置を講じる義務がある──ということになりそうだ。スパム受信が実際に起きてしまっているなら、ただちに事実を確認し、防止策を講じる必要があるだろう。

 「サーバレベルでのスパム対応はコストがかかる」として経営側が対応をおろそかにした場合、労働局から行政指導を受ける可能性があるほか、「義務違反で精神的苦痛をこうむった」として従業員から損害賠償を請求される可能性もある。

 そもそもこのご時世、不愉快極まりない性的スパムを放置し、対策を訴えても問題視されないような職場に優秀な女性スタッフがいつくかどうか。「スパム対応は経営には関係ない」とばかりは言っていられないようだ。

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