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» 2007年06月25日 17時14分 UPDATE

ITエンジニア進化論:失敗から学ぶ人、学ばない人【その3】

「失敗から学べ」という言葉がある。しかし、失敗原因を追究しなければ、その失敗は繰り返される。ここでは、失敗から学ばない人の特徴を挙げるとともに、「なぜなぜ5回」などの現場改善活動を紹介する。

[克元 亮,ITmedia]

 2002年のみずほ銀行システム障害をはじめ、2005年の東京証券取引所における取引停止トラブルなど、大規模な金融系システムのトラブルは繰り返し発生している。「失敗から学べ」と言われる。しかし、失敗原因を追究しなければ、その失敗は繰り返される。

失敗から学ばない人の特徴

 失敗から学ばない人には、2つの傾向がある。1つは、失敗したとき、直接的な原因に着目しすぎて、本質を深く追求しないことである。

 例えば、操作ミスによってシステムが誤作動をしてしまえば、それは操作ミスが悪いからと単純に考える。もちろん、きっかけはそうかもしれないが、そもそも、操作ミスを排除できるフールプルーフの仕組みがユーザーインタフェースに盛り込まれていたのか、現場のユーザーの操作ケースをキチンとおさえた設計になっているのかといったことを本来は確認する必要があるはずである。ただし、ユーザーインタフェースの場合、ユーザーが求めるとおりに作り込んでしまうと、性能が悪化したりメンテナンス性が悪くなる可能性もある。このため、設計段階で、そのバランスをいかにとったのかも確認しなければならない。

 また、失敗から学ばない人は、他人や他社の失敗を対岸の火事と考える傾向がある。そこで思考停止してしまい、それ以上は考えようとしない。だから、なにも学べない。

 失敗は、人や組織を変え、時間を越えて繰り返される。繰り返さないためには、他人の失敗を自分の失敗ととらえ、自分だったらこうするというように、他山の石として活用することが重要だ。

 逆に、失敗から学ぶ人は、他人の失敗であろうとも自分の成長に役立てようと考える。失敗の原因を構造化し正しく理解しようと務め、直接的な原因だけではなく、それを誘発するに至った背景、組織的なプロセス上の問題などを見抜き、教訓として生かす。そのためには、なぜなぜを繰り返すのが有効である。

原因を掘り下げる

 結果にはかならず原因がある。しかし、原因があるから必ず結果につながるとは限らない。直接的な原因のみに着目し、原因を深く追求せずに対処すれば、また失敗を繰り返すことになるだろう。

 トヨタ自動車の現場改善活動の1つとして、「なぜなぜ5回」というものがある。これは、問題に対して、その原因を最低5回は掘り下げていこうという取り組みである。例えば、一般的なシステムトラブルを例にあげれば、次のようになる。

  • システムトラブルはなぜ起きたのか?
  • アプリケーションが異常修了したから。なぜ?
  • アプリケーションに重大なバグがあったから。なぜ?
  • テストケースが不足し十分に検証できていなかったから。なぜ?
  • テストケースの不足を見抜くレビューをしていなかったから。なぜ?
  • プロジェクトの開発プロセスにテストケースレビューがなかったから。なぜ?
  • 会社の開発プロセス標準にテストケースレビューがなかったから。

 このように、トラブルに対して、7階層まで「なぜ」を繰り返すと、表層的な面だけではなく、組織のプロセスとしての欠陥が明らかになった。根本的な対策を取るためには、原因を掘り下げることが重要だ。もし、つけ焼刃の対策ですました場合、別のプロジェクトでも同じような問題に見舞われるにちがいない。

 次回は、公開されている失敗データベースについて紹介したい。

著者プロフィール:克元亮

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All About『ITプロフェッショナルのスキル』ガイド。SEのキャリア形成やスキルアップをテーマに、書籍やウェブ記事を企画・執筆。近著に『SEの文章術』(技術評論社)、『ITアーキテクト×コンサルタント 未来を築くキャリアパスの歩き方』(ソフトバンククリエイティブ)がある。日々の執筆や読書を、ブログ『克元亮の執筆日記』でつづっている。


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