海外36拠点に導入した双日 メール応答時間が約30倍改善WAN高速化ケーススタディ(1/3 ページ)

国内総合商社大手の双日は、海外拠点36カ所にWAN高速化装置を導入した。ポータル、電子メール、イントラネットの通信レスポンスを改善し、海外での業務効率を大幅にアップさせた成功事例の1つだ。

» 2007年06月27日 08時00分 公開
[井上猛雄,ITmedia]

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本社へのシステム統合でWAN回線の遅延問題が浮上

 双日は、2003年4月にニチメンと日商岩井が合併してスタートした国内屈指の総合商社。生活産業、産業情報、建設/木材、化学品/合成樹脂、エネルギー/金属、機械/宇宙航空と、あらゆるジャンルの商材をカバーし、グローバルな展開をしている企業として知られる。

 同社では合併を契機に、世界各国で展開する海外拠点を統合整理することになった。海外拠点へのアクセスについては、既存の国際回線を利用し、無駄な投資を抑える方向でリソースの統合を進めた。また、運用管理面やセキュリティ面などの観点から、東京本社とニューヨークの2つのセンターにさまざまなシステム機能を集中させる一方で、各拠点からセンター側システムへのアクセスに大きな問題が出てきたという。同社情報企画部情報企画一課の福山恵大課長は、当時の状況を次のように話す。

画像 (右から)双日 情報企画部情報企画一課の福山恵大課長、出山敏治氏

 「もともと拠点によっては、WANの帯域が規模に見合っていないケースもあったが、レスポンスがとても遅くなり、海外拠点から本社システムのアプリケーションを効率的に利用できない状況が見受けられるようになった。特に上海、バンコク、ジャカルタなどの大規模な海外拠点では、メールの取り込みが遅い、インターネットの閲覧に時間がかかるという声が大きかった」

 ネットワーク帯域がひっ迫しているため、早急に対策を練り、WAN回線の増強を検討することになった。まず回線自体の増速という対策案が浮かんだ。とはいえ、単純に回線自体を増速するといっても、体感速度が大幅に改善される保証はない。また、コストが大幅に掛かってしまうことも大きな悩みの種だ。特に同社のように、海外に数多くの拠点を持つグローバルな企業においてはなおさらだ。

 「拠点からのアクセスには国際回線を利用しているが、回線速度を倍にすると回線費用も倍に跳ね上がってしまう。われわれの場合、従来の通信コストでも年間で億単位に上るため、回線自体を単純に増速することはコスト的に見合わなかった」と福山氏。コスト面で言えば、インターネットVPNを導入することで、ある程度は解決できるかもしれない。しかし、インターネットVPNの場合は、セキュリティや品質面に不安が残り、やはり候補から外れたという。

 そこで第3の案として浮上したのが、WAN高速化/最適化ソリューション。比較的少ない投資で導入でき、回線自体を増速することなくWANを高速化する効果が得られるからだ。ネットワーク構成もほとんど変更せずに済むため、導入リスクが小さく、従来どおりセキュリティを確保できる点も魅力だった。

 同社がWAN高速化/最適化ソリューションの検討に入ったのは2005年春夏ごろから。当時は、まだこの種のソリューションはあまり知られておらず、製品を提供するベンダーも数社に限られていた。同社のネットワーク構築の一部を担当していたSIerであるインフォコムからの提案で、ジュニパーネットワークスの製品が選定された。

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