さて、WAN高速化装置の導入によって、具体的にどの程度の効果が得られたのだろうか? 参考結果だが、表1のとおり、導入前後のレスポンスタイムを比べてみると、かなりの改善効果があったことが分かる。例えば、特に効果の高かった上海の例では、ポータルへのアクセス時間は13.6倍(122秒→9秒)に、1MBのファイルを添付した電子メールの受信時間については29.3倍(440秒→15秒)という結果だ。ポータルアクセス、メール受信、イントラネット利用でのレスポンスが向上したことで、業務効率も大幅にアップした。
海外拠点(回線速度/人員) | ポータルアクセス | 電子メール受信(1MBファイル添付) | |
---|---|---|---|
上海(512kbps/約120名) | 導入前 | 122 | 440 |
導入後 | 9 | 15 | |
シンガポール(256kbps/約50名) | 導入前 | 87 | 430 |
導入後 | 12 | 6 | |
パリ(128kbps/約30名) | 導入前 | 30 | 130 |
導入後 | 10 | 10 | |
(単位:秒、レスポンス時間の参考値) |
また、2006年度の半年間(4月から9月)までのアプリケーション全般の平均レスポンスについて見ると、中国・アジア・オセアニア地域で3.15倍、欧州で2.56倍、北米・中南米で2.74倍という結果になった。
導入効果は体感速度だけでなく、実際のトラフィック流量にも現れている。圧縮機能によって、ネットワークを流れるデータ量が最大で4倍まで圧縮された。東京−ニューヨーク拠点間でのNotesのデータレプリケーション処理も速くなったという。
「経理システムを利用した台帳などは、毎月大量に出力する必要がある。帳票フォーム情報をヘッダにつけて送るため、データ容量もかなり大きい。特にこれらのデータが大幅に圧縮されて、効果てきめんだった。従来は何時間もかかっていた処理が、数十分で終わるようになっている」(福山氏)
一方、年間コストについても、仮に国際回線を増強した場合と比較すると、6分の1から7分の1程度で済んだ。高速化に対する効果はもちろんだが、双日のようにグローバルな展開をする大企業では、コスト面でのスケールメリットは特に大きいようだ。
現在のところ、WXCシリーズについては特に不満な点は見当たらないという。ただし、「導入当時は、機器のデリバリーと現地側での保守/サポート面で若干の心配があった」(福山氏)。WXCシリーズは、万が一故障などがあっても、機器側で通信をバイパスするようになっているため、通信が遮断されることはない。しかし、それでも現地では迅速に対応できないことが想定される。そこで、念のため各地域の主要拠点にバックアップ機を用意し、同時に故障機を日本に送り返せるような体制も整えている。
双日はWAN高速化/最適化の導入を完結し、次のステップとして、拠点間の回線自体の見直しにも着手したところだという。WANが高速化されたといっても、ネットワークの観点からはまだ改善の余地があるからだ。同社では、拠点間の業務効率化のさらなる改善を図る方針だとしている。
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