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» 2007年06月07日 08時00分 公開

最適化から始まる、WAN高速化への道:「アプリケーションが遅い」をなくす仕組み(1) (1/3)

セキュリティ対策やコスト削減を目的にしたインフラの見直しは、遅延による生産性の低下という思わぬ結果を生むことがある。WAN越しのアプリケーションの遅延はなぜ起こるのか。

[岩本直幸、中島幹太,ITmedia]

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岩本直幸/中島幹太(ネットマークス)


 個人情報保護法や日本版SOX法などによるセキュリティ対策の強化や企業価値を高めるためのコスト削減を図る上で、今ネットワーク/ストレージ/アプリケーションの見直しは急務となっている。

 企業が海外に工場を建設して国内拠点と接続するためにWAN回線を借用する際、契約帯域を広帯域にしたり品質が良いものを選ぶ一方で、なるべく安価な回線を契約するのはその一例である。また、拠点に分散しているサーバやストレージをセンター側で統合して情報流出を防ぐ、バックアップを一元化して今後のディザスタリカバリ対策も行う、といったことも該当する。こうした見直しによって、サーバやストレージなどの経営資源を効率的に使用できるようになる。

インフラの見直しが招く問題

 ただしこのような施策は、経営からするとセキュリティ強化やコスト削減が実現するという良い面ばかりが強調されるが、インフラを使って実際に業務を行うユーザーにとっては、これらにより生産性の低下という問題に直面させられることが多い。

 例えば、海外出張や海外赴任などで海外拠点や工場から自社内の統合サーバにアクセスすると、メールの受信が遅かったり、ひどくなると受信できなかったりすることもある。また、共有ファイルにアクセスして開こうとしても、開くまでに時間がかかったり、大容量データを流し始めると途端にサーバへのアクセスさえも難しくなってしまう。このような状態では、仕事すらおぼつかない。セキュリティ面の強化やコスト削減による効果以上に、生産性の低下による機会損失の方が深刻となる。主因は、距離による遅延と回線の輻輳(ふくそう)である。

画像 ユーザーが抱えるWAN環境の課題

 さらに国内のブロードバンド環境を見ても、広帯域といえども遅延は存在するため性能はLANに比べれば低下するし、逆に遅延が少ないWAN環境であってもその帯域を使いきれていない。つまり、100Mbpsの回線でファイル共有を行っても、その帯域の1割に当たる10Mbpsも使えない場合があるということだ。WANの遅延以上に生産性を下げる要因こそが、このアプリケーション遅延である。

 Windowsファイル共有プロトコルであるCIFS(Common Internet File System)でもこのアプリケーション遅延が発生する。あるユーザー環境では、既存の10Mbps回線でファイル共有処理が遅かったため、回線を100Mbpsに増速したが効果が現れず、調査したところ4Mbpsしかスループットが出ていないことが分かったという。では、なぜ性能が出ないのだろうか。

 その理由としては、このCIFSがもともとLAN内での使用を想定して作られたものであることが挙げられる。WAN上で使用されることを想定していないため、非常に「やり取り」が多いのである。

 このやり取りとは、クライアントの送ったリクエストに対してサーバからレスポンスが戻ってきて初めて、クライアントが次のリクエストをサーバに送るというプロセスを指す。つまり、サーバからレスポンスが戻ってこない限り、次のリクエストを送ることができない。LAN内では遅延がほとんどないため、やり取りがスムーズに行えるが、遅延のあるWAN上ではこのやり取りも距離に比例して遅くなり、スループットも上がらないのである。

データ量を減らすだけでは高速化はできない

 セキュリティ強化、コスト削減、さらには生産性の向上を行うためには、WANを効率的に使用し、かつアプリケーション性能を向上させなければならない。WAN高速化は、そうしたニーズに応えるために登場したソリューションだ。製品の詳細な技術比較をする前に、WAN高速化装置の一般的なコンセプトについて考えてみよう。

 WAN高速化装置は、狭い帯域であればWAN上に流れるデータを極力少なくするアプローチを取り、逆に広帯域であればWAN上に大量のデータを送信できるアプローチを取る。

 データを少なくするアプローチとしては、データをキャッシュしたり圧縮することでデータ量を削減する方法がある。また、大量のデータを送信する場合には、ウィンドウサイズを大きくすればバースト転送が行えるようになる。ただし、これらのアプローチだけではアプリケーション遅延は解消されない。アプリケーションに合わせて、やり取りを減らすアプローチも必要となる。つまり、アプリケーションのやり取りをLAN内で終端し、WAN上に流さないことでアプリケーションが遅延の影響を受けないようにするのが、WAN高速化装置の役割なのである。

 ここで重要なのが、WAN高速化装置の導入により、セキュリティホールができていないかということだ。前述のとおり、セキュリティ強化による生産性の低下を回避するために導入したWAN高速化装置で、装置のキャッシュ上にファイル形式のデータが残っていたとしたら、セキュリティ強化のためのデータ統合が意味をなさなくなってしまうからである。

 次に、以上の内容を考慮しながらベンダー各社の高速化技術を比較してみよう。

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