「アプリケーションが遅い」をなくす仕組み(1)最適化から始まる、WAN高速化への道(2/3 ページ)

» 2007年06月07日 08時00分 公開
[岩本直幸、中島幹太,ITmedia]

主要ベンダーの技術

 WAN高速化装置はメジャーなものからマイナーなものまでを含めると、10数社からリリースされている。ここでは、主要ベンダーの製品技術を

  1. 拠点装置のデータ保存方法、
  2. WAN上のプロトコル、
  3. アプリケーションの対応

という3つの視点で比較する。その主要ベンダーとは、シスコシステムズ、リバーベッドテクノロジー、ジュニパーネットワークス、パケッティア、F5ネットワークスの5社である。

 まず1.の拠点装置のデータ保存方法であるが、これは生産性を向上、あるいは維持する目的で、拠点内にデータを保存し、すぐに取り出せる仕組みを指す。この点で、上記5ベンダーの製品を2つのカテゴリに分けることができる。

 1つはWAFS(Wide Area File Service)という系統の製品で、シスコとパケッティアがこれに該当し、もう1つはWANアクセラレータという系統の製品で、リバーベッド、ジュニパー、そしてF5が該当する。前者はファイル自体を拠点のアプライアンス上に配置することで高速化を実現している。一方、後者の場合は、ファイルはあくまでもサーバ上にあり、細分化されたデータとそのデータを組み合わせてファイルを再構築するためのデータベースをアプライアンス上に保存することによって、高速化を実現している。

 WAFSの場合は、拠点にファイルがあるため非常に高速なアクセスが可能となるが、セキュリティ上の問題が存在する。一方、WANアクセラレータの場合は、拠点側にファイルがないため毎回サーバにアクセスする必要がある。拠点にすべてキャッシュがあったとしても、サーバへのアクセスが発生するので若干遅くなってしまう。このように、高速化の実現方法によって性能やセキュリティレベルに差異ができることになる。

 次に、2.のWAN上で使用するプロトコルにも各社で違いがある。ここでも、TCP/IPかそれ以外のプロトコルかで、製品が2つのカテゴリに分られる。前者は、WAN高速化装置がNAT(ネットワークアドレス変換)でアプリケーションポートを変更し、アプリケーションのやり取りをLAN内に抑えることで高速化を実現する。シスコとリバーベッドの製品がこれに該当する

 後者のTCP/IP以外を利用する製品は、ジュニパー、F5、パケッティアが該当する。そのうち、ジュニパーとF5の装置は、トンネリング技術を用い、TCPの冗長性を考慮して代わりにUDPを使用することで高速化を実現している。これらの装置に共通して言えるのは、WANのスループットを向上させるために、TCPウィンドウサイズを調整したり、UDPを使用したりして回線の帯域を十分に使えるようにしたことだ。

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