海外36拠点に導入した双日 メール応答時間が約30倍改善WAN高速化ケーススタディ(2/3 ページ)

» 2007年06月27日 08時00分 公開
[井上猛雄,ITmedia]

わずか3カ月間で36拠点に配置

 具体的な製品名として候補に挙がったのは「WXCシリーズ」である。決め手は主に実績面だったが、ジュ二パー独自の圧縮技術(MSR/NSC)やキャッシュ機能、TCPアクセラレーション機能も採用理由の1つだった。同社の圧縮技術は、データ通信のシーケンスを内部辞書と照合してパターン化し、情報量を少なくすることでトラフィックを抑える仕組みを取り入れている。また、QoS(サービス品質)機能や管理レポートの種類が多かった点にも注目したという。

画像 ジュニパーネットワークスのWXC(写真はWXCの最新機種、「WXC590」)。ハードディスクを搭載するタイプだ

 同社の製品にはメモリベースのWXシリーズもあるが、「導入前にいろいろな検証を行って、WXシリーズよりも2〜4倍のデータ圧縮効果が得られたので」(福山氏)WXCシリーズを採用することにしたという。WXCシリーズはディスクベースで、装置にハードディスクを搭載しているため、より多くの辞書データを保持できる。

 WANの高速化/最適化を実現する際には、どのようなアプリケーションを高速化したいのかという適用対象が重要になる。同社では業務の特性上、Windowsファイル共有、いわゆるCIFS(Common Internet File System)ベースのアプリケーションはそれほど利用しなかった。

 情報企画一課の出山敏治氏は、「主に利用していたのは、電子メールや業務系アプリケーション、インターネットアクセスなど。いずれにしても、当時はレスポンスがきわめて悪かったため、すべての利用シーンにおいて改善したい思いでWXCシリーズを導入した」と話す。米国拠点とはビデオ会議を行うことも多いため、WXCシリーズのQoS機能で通信品質を確保した。ただし、そのほかの拠点の内線通話については、VoIP(Voice over IP)の帯域を別に確保することで、通話品質を高めているという。

 双日は、導入のための検証を約3カ月かけて一通り終了したあと、2005年の10月から東京本社とニューヨーク、上海、シンガポール、パリ、モスクワの主要6拠点にトライアルとしてWXCシリーズを導入。おおむね良好な結果が得られたため、2006年初頭から3月までに合計36カ所の海外拠点に設置を拡大した。導入期間については、機器選定や検証などを含めると約1年間かかったが、各拠点への実際の適用期間はわずか3カ月間。まさに迅速な動きだった。

図1 図1●双日のグローバルネットワーク構成図。合計36カ所の拠点にWXCシリーズを導入。センター側となる東京とニューヨークの拠点には「WXC500」を、そのほかの海外拠点には「WXC250」を設置した(クリックで拡大)

 システム構成(図1)については、国際回線は既存のフレームリレー回線とヨーロッパ地域に一部導入されているIP-VPNを利用。センター側の東京とニューヨークの拠点には、WAN高速化装置としてミッドレンジの「WXC500」(ディスク容量500GB、トータルスループット512K〜20Mbps)を設置した。一方、そのほかの海外拠点には、ローエンドの「WXC250」(40GB、128K〜2Mbps)を、それぞれ配置。WX/WXCシリーズは回線帯域に応じたライセンス体系になっており、各拠点に必要な帯域を確保した。

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