Eclipse準拠で一皮むけたLotus Notes/Domino最新版

日本IBMは、同社のコラボレーションソフトウェアの最新バージョン「IBM Lotus Notes/Lotus Domino 8」の日本語版を発表した。

» 2007年07月31日 18時49分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 日本IBMは7月31日、同社のコラボレーションソフトウェアの最新バージョン「IBM Lotus Notes/Lotus Domino 8(Notes/Domino 8)」の日本語版を9月11日から提供すると発表した。9月11日に提供されるのはダウンロード版で、約1カ月後の10月10日からメディアで提供される。

 「Notes/Dominoは、全世界で1億3000万以上のライセンスを販売するなど、2005年から連続10四半期で利益を上げている。またFORTUNEが選ぶグローバル企業の上位100社の中で半数以上の企業がNotes/Dominoを導入するなど、トップレベルのシェアを誇る。新製品は、それらのユーザーが極めて簡単に利用できる次世代のコラボレーション・プラットフォームとしての位置づけだ」。米IBM Lotus Softwareのマイク・ローディンゼネラルマネージャーは製品を取り巻く現状について説明した。

image 「次世代のコラボレーション・プラットフォーム」と新製品を位置づけるマイク・ローディン氏

 Notes/Domino 8の最大の特徴は、オープンソースの統合開発環境の「Eclipse」をデスクトップアプリケーション構築環境として機能拡張したEclipse RCP(Rich Client Platform)をベースとする「IBM Lotus Expeditor」で作り直されたことだ。

 Javaのコンポジットアプリケーションと化したNotes/Domino 8では、NotesアプリケーションとWebサービスやJavaアプリケーションをシームレスに連携できるようになった。例えばNotes上の取引先情報など複数のアプリケーションと、インターネット上のニュース、株価、地図といった情報を連携し、Notesの画面上に表示できる。

image 外部アプリケーションとのマッシュアップにより取引先の情報が明確に分かる。画面右上は「Yahoo!ファイナンス」との連携による株価、画面右下は「Google マップ」と連携した地図の表示

 技術面でEclipse準拠を果たした一方で、その開発手法において、「ペルソナ法」とブログを取り入れ、インタフェースと操作性が大幅に向上したと澤田氏は話す。ペルソナ法とは、ある特徴的な仮想ユーザーを設定し、それらのユーザーニーズを反映させていく手法を指す。

 「使い勝手に対するユーザーの生の声を拾い上げるため、数百名のIBMエンジニアがブログを開設し、そこに書き込まれたユーザーのフィードバックを開発に役立てた。また社内外のインタビューやアンケートなどを2000以上行い、ユーザーの行動を分析した。『かゆいところに手が届く』ユーザーインタフェースを実現した」(同社 ロータス事業部 澤田千尋事業部長)。

 こうしたユーザーのニーズをくんだことで、カレンダーやアドレス帳、RSSフィードなどのアプリケーションをNotesの画面右側に複数同時に配置できるようにしたほか、メールアドレスの先行入力機能、スペルチェック機能などユーザーインタフェースの充実が図れたという。

image 多数のタグをサムネイル化して視覚的に処理することもできる

 新たに標準搭載された「IBM Productivity Tools」は、オープンソースのオフィススイート「OpenOffice.org」のサブセット。ワープロ、表計算、プレゼンテーション機能を提供するほか、OpenDocument Format(ODF)をサポートしている。ODFは、XML関連技術の標準化を目指す団体「OASIS」が策定した、XMLをベースとしたファイルフォーマット。

 「Officeから乗り換えた結果、3年で12億円のコスト削減に成功した企業もある。これからは誰もが共通して使える文書フォーマットが必要となるだろう」(澤田氏)。

image 「日本IBMはOpenDocumentの普及を目指す『ODF Alliance』にも参加している」と説明する澤田氏

 「現在日本の大企業の7〜8割がLotusを導入している。大企業の市場は飽和状態にあるので、Lotusを導入している企業は他社の製品には移行しない。ライバルとなるMicrosoftはWindowsでトップシェアを誇るが、スケーラビリティの点ではわれわれが勝っている。今後はLotusの各機能のコモディティ化を推進したコラボレーションプラットフォームを作り、市場におけるシェア拡大を目指す」(澤田氏)

 「いままで個々の機能を取り入れLotusのバージョンバップを図ってきたが、ポータルの流行や技術の発展などにより、時代の流れをすべて取り入れた製品を開発できた。Eclipseの導入やユーザーインタフェースの刷新など、基盤となる部分を作り直すことで、Lotusをビジネスツールのコラボレーションプラットフォームとして送り出す。まさに『機は熟した』というところでしょう」(同社 ロータス事業部 プロダクト マーケティング担当部長 森島秀明氏)

 価格は、サーバライセンスは1VU(機種別サーバ単位課金)当たり3825円、クライアントライセンスとWebクライアントライセンスはそれぞれ1ユーザー当たり2万600円、1万6100円。

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