将来性を常に意識せよ!シスマネ必携! 運用管理ルールブック

上手なIT運用管理のノウハウは、豊富な運用実績と的確な情報蓄積、見直しを繰り返してきたプロに聞くのが一番。ITアウトソーシング事業者は、そのノウハウ集の中で、ユーザー側と運用側との明確な職責分離を行うべきだと記している。

» 2007年08月16日 07時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

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ルール1:システムの寿命を意識し、バージョンアップのプランを立てよ

 今、稼働しているシステムは、今後何年間使われる予定だろうか。そして、採用されている各製品は、いつまでサポートが約束されているだろうか。サポート期限は、システム構築段階で見落とされやすいと言われる。ハードウェアは分かりやすいが、OSやミドルウェア、さらに細かなツール類に至るまで、サポート切れにならぬよう、しっかり把握しておくべきである。

 いくらなんでも、これから長期間使おうとするシステムに、「枯れているから」というだけの理由でWindows Server 2000を採用するようなことはないと信じたい。だが、明確に意識していなければ、サポート期限を見落としてしまう危険がある。そうなれば、運用担当者はサポート切れの恐怖に見舞われる。例えば、「脆弱性は報告されるが、そのパッチが提供されない」としたら、心休まるものではないだろう。

 運用期間が長期に及ぶことが予定されているのであれば、途中でハードウェアの更新やソフトのバージョンアップなどが必要になる可能性が高い。こうした作業が発生する可能性は、上流設計の段階から意識しておくべきである。そして、バージョンアップなどの保守が容易に行えるような設計を心掛けてもらいたいものだ。

 一方、運用側としては、サポート切れ直前に慌ててバージョンアップするのでなく、期限切れ前に十分な期間を確保し、事前のテストから移行準備、移行作業、さらに場合によっては代替システムの手配、事後の確認などといったスケジュールを組んで、トラブルなく作業できるような体制を組んでおくべきだ。こういった作業は、ユーザーに影響が及ぶことも多いので、システム全体のライフサイクルなどをしっかり検討しつつ、適切なタイミングを見逃さぬようスケジュールを設定しておくことが望ましい。

 なお、運用予定が短期間であっても、運用延長の可能性があるならば同じようにバージョンアップを意識して設計するのがベターだ。つまり、臨時に運用するシステムでもない限りは、こういった保守作業を念頭に置いて設計すべき、というわけである。

ルール2:将来的な負荷増大に伴う変化を想定して設計すべき

 システムの用途にもよるが、多くのシステムでは、運用開始からデータやトランザクションが増え続けるのが一般的だ。将来的なパフォーマンスひっ迫に備えて、拡張が容易な設計をしておくべきである。多くの場合、その成長ぶりを事前に見極めるのは非常に困難なことだが、的確なタイミングで実施できるよう、可能な限り高い精度で見極めておきたいところだ。

 システム拡張は「早すぎず遅すぎず」のタイミングで行うことが望ましい。遅すぎれば処理能力不足に陥る。早すぎれば割高な投資となってしまう。ハードウェアのコストパフォーマンスは「ムーアの法則」が示すように、時間とともに安価かつ高性能になっていくものだ。

 ハードウェア以外にも、パフォーマンス面でも注意すべき点がある。例えば、バックアップなどバッチジョブの時間配分に余裕はあるだろうか。将来的にシステム拡張を行う予定だとしても、それまで確実にジョブが間に合うと言い切れるだろうか。そして、拡張する際にも、ジョブの所要時間がどのように変化するかなど、それぞれ予測しておく必要がある。

ルール3:「安かろう悪かろう」のハードウェアは使うべからず

 これは一種の経験則だが、少しくらい高価でも信頼性の高いハードウェアの方が良い、というものだ。

 ハードウェアに対する直接のコストだけをみれば、安価な製品の方が有利だ。しかし、信頼性の劣る製品では、サービスレベルの低下を招き、ユーザーの信頼感を失わせ、運用現場を疲労させるといった悪影響を及ぼす。

 これらは、金銭に換算しにくいので厳密な比較はできないが、例えば運用現場が頻繁に障害復旧作業をさせるよりは、信頼性の高いハードウェアを採用して省力化した方が良い、という考え方はできる。また、特にアウトソーシング事業者に関しては、サービスレベルが低いことは顧客離れの原因となり、売上高に影響が及ぶ可能性もある。

 特に日本では、欧米よりサービス品質に厳しいと言われている。「動いて当たり前」という言葉もある。通信網や金融機関のATM網などに障害があれば、影響範囲がごく小さなものでも大きく報道される。大規模なシステムダウンがあれば、社会問題化することだって珍しくない。それだけに、「信頼性」に対して相応の金額を支払ったところで、損をしたとは言えないだろう。むしろ、安易な判断で「安物買いの銭失い」に陥らぬよう、注意すべきだ。(取材協力:野村総合研究所)

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