「Vail」は非技術系ユーザー向けのツール――SerenaのCEO(2/2 ページ)

» 2007年08月20日 18時24分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK
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eWEEK 1〜2年後、Serenaはどのあたりにいると予想していますか。

バートン 当社には2つのビジネスがあると考えています。われわれは現在、IT部門でのアプリケーション開発を支援するアプリケーションライフサイクル管理(ALM)ツールを提供しています。しかしビジネス部門でもアプリケーションライフサイクルという概念が生まれており、誰かがそれを管理する必要があります。新しいアプリケーションライフサイクルが出現しつつある状況を理解しているのは、今日のALM分野ではわれわれだけだと思います。

 この状況の素晴らしい点は、われわれがビジネスユーザーに力を与えることができれば、数十万本とまでは言わないにせよ、文字通り数千本ものアプリケーションの需要が生まれるということです。

 2〜3年後、Serenaは2つのビジネスを展開していると思います。IT部門が複雑なアプリケーションを開発するのを支援するビジネス、そしてビジネスユーザーが独自にアプリケーションを開発するのを支援するビジネスです。この取り組みがうまくいけば、IT部門はSOA(サービス指向アーキテクチャ)を利用して機能を公開し、ビジネス部門はSOAインタフェースと当社のプラットフォームを利用してイノベーションを実現するでしょう。

eWEEK 大手企業がSerenaのサービスを見て、「こういったサービスも欲しい」と言ったらどうしますか。

バートン 結局はお金の問題になると思います。受託者としての責任はありますが、Serenaの従業員はすべて、当社が将来とつながったエキサイティングな成長企業になるのを望んでいます。われわれがそのような企業になれば、多くの関心を引き付けると思います。当社がそういった地位を確立し、広範な選択肢を提供できるようになればいいと思っています。

 しかし現時点では、当社の戦略を刷新するのに手一杯の状態です。マッシュアップが次の大物であるとすれば――わたしはそう考えていますが――独立企業としてこの分野を目指すのは素晴らしいことだと思います。

eWEEK OracleもALM分野に進出する計画だと言っています。彼らにチャンスはあると思いますか。

バートン あるでしょう。OracleやIBM、Microsoftのように大量のリソースを持っている企業は、その気になればどんな市場にも参入できるでしょう。

 ただ、Oracleは常に重荷を背負っています。つまり、彼らはOracle環境では素晴らしい仕事をしているのですが、Oracleとは何の関係のないものを利用する場合には、彼らは非常に苦労しているのです。これは同社にとって強みでもあり弱点でもあります。彼らは非常にOracle中心主義なのです。

 Oracleは幾つかの市場に進出するのが非常に遅れました。彼らはこの市場でも非常に遅くなってから、Oracle志向の強いツールセットで進出しようとしているのです。Oracleを受け入れるユーザーも少しはいるでしょうが、ほとんどのユーザーは無視すると思います。

eWEEK Microsoftなどの企業がSaaS(Software as a Service)を軸とした戦略を明確に打ち出すのに苦労しているようですが、これはなぜだと思いますか。

バートン 彼らには失うものがたくさんあるからです。自社の既存ビジネスを自ら犠牲にしなければ、ほかの企業によって自社のビジネスが奪われるのだという信念を持たなければなりません。口でそう言うのは簡単ですが、その信念に基づいて実際に行動に移すのは別問題です。こういった問題をめぐる議論がIT部門の幹部からビジネス部門の幹部に移り、CFO(最高財務責任者)のところまで行った時点で、話が終わりになってしまうのだと思います。

ボンバニー SAPやOracle、BEAといった企業はSaaSという表現を避けようとしていますが、彼らがこういったマルチテナント型のモデルを採用しようしても、経済的に成り立つ事業を確立するのに大変苦労するでしょう。彼らがサブスクリプションビジネスに進出したいと思っても、破綻するでしょう。SAPにとっては、雲の中にサービスを配備するという方式は非常に高いものにつきます。

eWEEK SerenaはSalesforceと対等に勝負できると考えているのですね。

バートン どのような形であれ、われわれがSalesforceと競争することはないと思います。AppExchangeには600本ものアプリケーションがあります。われわれはこれらのアプリケーションと連携することにより、相互に接続し、データをやり取りできるようにしたいと考えています。なぜなら、Salesforceはインターネット上で提供される多数のサービスの1つになると予想されるからです。ユーザーはSalesforceが提供する機能を持ってきて、給与アプリケーションなど各種のアプリケーションと組み合わせて利用したいと思うようになるでしょう。Salesforceは当社が活躍する舞台を提供してくれる企業であるとわれわれは考えているのです。

 ユーザーがApexを利用してSalesforceを拡張するのと同じように、彼らはVailを利用する中でこれを拡張するだろうと思います。しかしユーザーがSalesforceとSAPをマッシュアップし、両者の間に何らかの機能を付け加えたいと考えたとき、彼らにとって選択肢は、IT部門を参加させるか、Vailのようなツールを使うかのどちらかです。

 偶然にせよ狙ったにせよ、当社の製品はうまい具合にストライクゾーンのど真ん中に入ったのです。社内のスタッフにしても、たぶんVailの開発責任者を除けば、こういった背景状況を認識してはいなかったと思います。

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