MS、「Open XML」の標準化で敗北

Microsoftが推進してきたOpen XMLの標準化がISOでの投票で否決された。同社は2008年の最終投票に向けて再挑戦する。

» 2007年09月05日 16時08分 公開
[Steven J. Vaughan-Nichols,eWEEK]
eWEEK

 Microsoftは9月4日早朝、同社のドキュメントフォーマット「Open XML」をISO標準化する試みが失敗に終わったことを認める声明を出した。

 Microsoftによれば、国際標準化機構(ISO)は、ISO/IEC DIS 29500(Ecma 376:Office Open XMLファイルフォーマット)批准プロセスに参加している国家代表機関(National Body:NB)に対し、予備投票の結果、Open XMLの標準化は否決されたと通知したという。

 Microsoftが発表を行ったあと、ISOもOpen XML投票に関する報告書を出した。

 ISOは、「標準化が承認されるには、ISO/IEC JTC 1に参加しているNBの3分の2(66.66%)が賛成に票を入れ、反対票がNBによる全投票数の4分の1を超えていない必要がある。今回は、ISO/IEC JTC 1参加NBの53%が賛成に、同26%が反対に投票したので、いずれの条件にも合致しなかった」と述べている。

 一方のMicrosoftは、「全正規投票数の74%に当たる51のISO会員が、Open XMLの標準化を支持してくれた。彼らの賛成票に加え、NBからは同規格の改良につながるきわめて貴重な技術的アドバイスを授かった。その他のISO会員の大半も、2008年3月に終了する予定の標準化最終選考期間中に、指摘された問題点が解決されれば、Open XMLをサポートすると言っている」と話した。

 Microsoftの互換性および標準担当ゼネラルマネージャー、トム・ロバートソン氏は、「正規投票数の74%に相当する51ものISO会員がOpen XMLのISO標準化を支持し、ISO標準化プロセスの次の段階で同規格の問題点が解消されれば、標準化に賛成するとした会員が多かったことを、非常にうれしく思っている」と声明に記している。

 技術系企業をクライアントに持つボストンの法律事務所Gesmer Updegroveのパートナーで、Open XML標準化プロセスを逐一見守ってきた標準規格の専門家であるアンドリュー・アプデグローブ氏は、実際の投票結果はOpen XMLにとって有利なものではなかったと説明する。「標準化プロセスに参加している41のNBすべてが投票を行い、賛成票が17、反対票が15、棄権が9という結果だった。標準化が認められるには、棄権票を除外したあとに66%と3分の2の賛成が必要だが、承認に票を入れたのは53.12%に過ぎなかった」(アプデグローブ氏)

 Open XMLの標準化申請は、次の投票基準もクリアできなかった。「第二次審査には、JTC1の参加会員およびオブザーバー会員ばかりでなく、JTC1会員ではない正会員も参加し、前代未聞と言ってもよいかもしれない87ものNBが投票を行った。結果は、賛成69、反対18(26.08%)となり、やはり基準を満たせなかった。反対票は、棄権を除外したあとの有効票の25%を超えてはならない規則なのだ」(アプデグローブ氏)

 ワシントンD.C.に拠点を置くODF Allianceは、すでにISO標準ドキュメント規格となっている「Open Document Format(ODF)」の後援組織だ。同組織のエグゼクティブディレクターを務めるマリーノ・マーシック氏は、「正式な投票結果が出るのを待っているところだが、MicrosoftのOffice Open XMLは、ISOの標準化プロセス参加会員3分の2の賛成票を得られなかったと思われる」と述べた。

 「反対票(15票)と棄権(9票)が多かったようだが、これはすなわち、Office Open XMLの互換性とオープン性に関して、各国が大きな懸念を抱いている現状を反映している。反対票を投じた国には、世界でも急成長を遂げつつある途上国も、主立った工業先進国も含まれている。ODFが2006年に満場一致(31対0)でISO標準化を承認されたのとは、対照的な結果である。ODFはその後、政府の公的なドキュメントフォーマットとして選択肢の1つに上がるようになり、今では世界中のあらゆる主要地域で採用が検討されている。MicrosoftがOffice Open XMLのISO標準化を目指すのはもちろん自由だが、このたびの投票結果を見るに、ISO標準という称号を獲得し、互換性およびオープン性に真にすぐれたドキュメントフォーマットと認識されるまでには、まだ長い時間がかかりそうだ」(マーシック氏)

 それでもMicrosoftは、あくまでもISO標準化に固執していくという。「今回の予備投票は、Open XMLフォーマットを国際的に普及させ、世界中の何百万人ものユーザーがメリットを享受できるようにする過程の通過点だ。将来有望な今回の結果を受けて、2008年初頭の最終投票では、必ずやOpen XMLがISO標準として認められるという思いを新たにした」(ロバートソン氏)

 これからMicrosoftおよびECMA標準化団体は、反対票に添付された1万件あまりのコメントを2008年1月14日までに処理しなければならない。その後、2月19日から25日にスイスのジュネーブでISO投票結果調停会議(ISO Ballot Resolution Meeting)が開催され、Open XMLを現状のままにするか、再審査を行うべきかの決定が下される。再審査が決まれば、同会議で改良後の規格が投票にかけられることになる。

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