EAP――“待ったなし”のメンタルヘルス対策の切り札システム管理者のココロの栄養素(3/3 ページ)

» 2007年09月13日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

 先述のMRCでは、精神科医を中心としたスタッフ陣とともに、契約企業と一体になってEAP対応システムを構築している。多くのIT関連企業をクライアントに抱える同社は、人事労務担当者や健康管理担当と情報を共有化し、メンタルヘルス不全の予防や治療支援のための体制作りを行うことで、事後対応までを一貫してサポートする。

 一般のEAPは、社員の悩みをカウンセラーがヒアリングしたり、セミナーを開いたりするなどの一次予防が施策の中心となる。だが、うつなどで休職した社員の復職に向けたリハビリは非常に難しく、本人の自主的努力に頼るあまり、復職に失敗するケースが後を絶たないという。

うつ克服の第一歩はリアルな通勤訓練から

 そこでMRCでは、今年の2月から「リワーク・トライアル」という個別にカスタマイズした復職トレーニングプログラムを始めた。週5日、午前9時から午後5時までの復職トレーニングを4週間、専門の指導員とともに同社内のリワークルームで実施し、精神科医の面談による復職可否判定のリポートを作成する。現在、約20社と契約を結んでいるという。

画像 MRC内に設置された「リワークルーム」。タイムカードも設置され、リアルな勤務時間に体を慣らす(クリックで拡大)

 「うつなどは、朝が精神的に最も不安定になる。一般の出勤時間と同じ時間帯で電車に揺られ、MRCのリワークルームまで通えるか、あるいは勤務時間中は眠らずに集中力を保てるかなどを訓練する」と説明する林氏。単に外出ができるようになっただけでは、復職はできないということだ。

 進んだ企業の中には、社内リハビリ出勤制度を設ける会社もあるが、担当者が常に監視・管理するのは負荷が大きく、復職タイミングの判断や休職扱いか就業かで問題となることもある。今後、こうしたメンタルヘルスのアウトソーシングが拡大することが予測される。

 今後、精神疾患の発生率が高いIT業界では、労働衛生関係のコンプライアンス意識の強化(就業意識、産業医の位置付け、衛生委員会・管理者の設置など)や、体調不良者が発生した場合の相談・報告・サポート体制の構築などが求められるだろう。

 その実現のため、企業にとって困難も多いが、独立行政法人労働者健康福祉機構が全国47の都道府県に設置する「産業保健推進センター」による、産業医、産業看護職、衛生管理者などの産業保健関係者への支援策や、助成制度などを活用することも有効な手段となるかもしれない。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ