ストレス耐性を知ってメンタフ度を鍛えるメンタルタフネスを引き出す!

同じ環境でもストレスに打ち勝てる人とそうでない人がいる。その違いは、ストレスに耐え得る心の柔軟さや強さ、つまり「ストレス耐性」の高低によるものだ。ストレスに負けない人になるにはどうしたらいいのか。その仕組みと方法を見てみよう。

» 2007年08月14日 15時07分 公開
[SOS総務]
SOS総務

 ストレスは、外部から心と体に力が加わってゆがんでいる状態を指す。人を軟らかいゴムボールだとすると、リストラや人間関係の問題など、ストレスの原因(ストレッサー)は、飛んできてぶつかった石。そして、石がぶつかったことによるボールのゆがみがストレスなのだ(右図1)。

 同じストレッサーにさらされても、それによる影響の表れ方は、人によって異なる。たとえば疲労や不眠、また頭痛といった身体面に症状が表れる人もいれば、不安や抑うつといった心理面に症状が表れる人もいる。また、遅刻の増加や無意識に嫌な相手を避けるなど行動面に症状が出る人、依存やあきらめといった考え方に変化が起きる人も……といった具合だ(図2)。

 一方、同じストレスを受けても、それをストレスと思わない人もいれば、強いストレスを感じてしまう人もいる。その違いはどこにあるのだろう。

コミュニケーション技術を磨いて職場のストレスを軽減

 「私たちはメンタフ度(メンタルタフネス度)ともいっていますが、ストレス耐性が高い人というのは、コミュニケーション技術の高い人なんです」

 そう語るのはライフバランスマネジメントの社長、渡部卓さん。メンタフ度を高める方法として、渡部さんはこうアドバイスする。

 「ストレスへの対処法はいくつかあります。飛んできた石、つまりストレッサーから逃げるという方法が1つ。次に、ストレスと付き合うという方法。これはストレスにうまく対処するということですね。それから、石がぶつかったときのショックを和らげるために、スポンジのような緩衝材をあてがうという方法もあります。このスポンジの役割をするのが社会的支援です。友人や同僚、家族といった存在がこれ。上司は最大のストレッサーといわれていますが、同時に最大の社会的支援にもなり得ます。では、上司がスポンジの役割を果たすにはどうすればいいのかというと、まずは部下の話をしっかり聞くことが重要なんです」

 そこで最近、注目されているのが人の話を聞く際のテクニックである“傾聴"。カウンセリングマインド、座る場所や姿勢、質問や言葉の選び方など、話を聞くための実践的な技術だ。管理職向けの傾聴に関するセミナーは数多く、受講者も増えているという。

 また、上司にとっての傾聴に対し、部下のストレス対策に有効なコミュニケーション技術が“アサーション"だ。これは、意見の対立があったときに、一方的に自分の意見を押し付けるのでも、我慢をするのでもなく、自分も相手も尊重しながら行うさわやかな自己主張の仕方。

 上司が部下のいうことに耳を傾け、部下は上司に明るく前向きな自己主張をする。これだけで職場のストレスはかなり軽減されるはず。当たり前のようだが、これができていると胸を張れるビジネスパーソンは、そう多くないだろう。

自分の置かれた状況を客観視することが重要

 メンタフ度にはストレスの受け止め方の違いも大いに関係すると渡部さん。

 「たとえばちょっとした自損事故を起こしたとき。車両保険で修理をすれば車は元通りになるのに、これで保険料が上がってしまうなど、余計なことまで考えていつまでも落ち込んでしまう人がいますね。このように、ものごとの受け止め方に偏りがあると、うつになりやすいんです。こういう人の多くは、ストレスにとらわれているのに気が付いていないですね」

 ストレスケアで大切なのは、まずストレスに気付くこと。そのためにはカウンセラーに相談するのが一番だが、現実にはなかなか難しい。そこで、その代わりになってくれるのが、グチや不満を話せる友人の存在。ストレスの原因や、自分の感情がはっきりするというのが、話すことの効用だ。ストレスを客観的に捉え、その受け止め方の偏りを自分自身で気付き修正できるようになる。何でも話せる友人を社外に2人以上作ろう、と渡部さんはいう。

 また、ストレスの客観化を合理的に行えるのが、ストレスチェック(別記事参照)だ。

 「うつは、体は健康なのにそれを動かすエネルギーがない状態。いわばガソリンが切れた車のようなものです。うつになる人の多くは、マジメで脇目もふらずに走っているから、ガスメーターが少なくなっても気が付かない。ストレスチェックをするということはメーター類を自ら確認するという作業なんです。ストレスに気付くことができれば、それ以上ストレスを強めないようブレーキを踏むこともできるのです」

 ストレスチェックは厚労省が導入のための指針を出しているが、まだ手を着けていないという中小企業は多いようだ。渡部さんは、3カ月に1度は人事・総務が主導で会社でストレスチェックを、と勧めている。