VMwareがMicrosoftに「タッチ・オブ・デス」の一撃?

ハードウェア組み込み型の新しいハイパーバイザーの登場で、Viridianは出荷される前に時代遅れになってしまうのだろうか?

» 2007年09月19日 10時31分 公開
[Michael Hickins,eWEEK]
eWEEK

 「タッチ・オブ・デス」というのは、相手に気づかれることなしに致命的な打撃を与えるという武術の技だ。何時間あるいは何日も経ってから、相手が倒れることもあるという。

 仮想化市場のリーダーであるVMwareはひょっとして、Microsoftにそのような一撃を与えたのだろうか?

 カリフォルニア州パロアルトに本社を置くVMwareは先週、仮想化市場での優位の拡大を狙った新製品を発表した。その一方で、同社の最大のライバルとみられている企業との協力もしきりにアピールした。

 Microsoftが「Viridian」を出荷すれば、VMwareはデータセンターでの覇権をめぐって同社と厳しい競争に直面するとみられる。MicrosoftのハイパーバイザーであるViridianはこれまで何度もリリースが延期されてきたが、Windows Server 2008の将来の機能強化の一部として出荷される予定だ。

 しかしアナリストらによると、VMwareが9月11日に発表した新ハイパーバイザー「ESX Server 3i」により、Microsoftが計画中のハイパーバイザーは出荷される前に時代遅れになる可能性もあるという。

 Gartnerのアナリスト、トム・ビットマン氏によると、VMwareがESX Serverのサイズを32Mバイトにスリム化したのは大きな一撃になるという。これに対して、XenSourceのLinuxベースの「Dom 0」ハイパーバイザーのサイズは256Kバイト、Microsoftの仮想化技術のサイズは「1〜1.5Gバイトの範囲」である。

 「そろそろVMwareがこの動きに出るのではないかと思っていた。彼らはサービスコンソールを取り除く必要があったのだ。VMwareは一撃でViridianを時代遅れにした」とビットマン氏は話す。

 さらに同氏は、「Windows Server 2003に対するMicrosoftのパッチの80%はサービスコンソールに関連したものだ。Viridianでは、どれだけ頻繁にサービスコンソールにパッチを適用しなければならなくなるのかと不安になる」と指摘する。

 IDCのアナリスト、スティーブン・エリオット氏によると、Microsoftが仮想化技術を投入するのが遅れているのは、同技術がソフトウェアライセンスの売り上げに影響するのを恐れているからではないかという。

 「Microsoftは仮想化のビジネスモデルを理解していないようだ。同社の幹部は、このトレンドが彼らのコアビジネスに与える影響を恐れているのかもしれない」とエリオットは分析する。

 さらにVMwareは、DellやHewlett-Packardなど主要ハードウェアサーバメーカー各社が、ESX Server 3iをそれぞれのハードウェアへとインストールすることの合意を明らかにした。

 Enterprise Strategy Groupのアナリスト、マーク・バウカー氏は、ユーザーがハードウェアを購入したときにハイパーバイザーを構成しなくて済むようにしたことでVMwareは大きな戦果を挙げたと考えている。

 「Microsoftには、そういったことはできない」とバウカー氏は語る。

 VMwareは、表向きにはMicrosoftに協力する方針を表明している。サンフランシスコで行われた同社のユーザーカンファレンス「VMWorld」の開幕初日に仮想化標準案を発表したのも、他社と協調する姿勢を示すためだと思われる。

 VMwareのダイアン・グリーン社長兼CEOは、Viridianのリリースが遅れているMicrosoftを皮肉りたいという誘惑も慎重に避けた。ViridianはWindows Server 2008の最初のバージョンから外されたが、Windows Server 2008自体もリリースが数カ月延期されることになった。

 さらにグリーン氏は、VMwareの狙いはMicrosoftのビジネスモデルを壊すことではないと語るなど、Microsoftへの気遣いも見せた。仮想化は、企業が購入する必要があるソフトウェアライセンスの数を減らすための手段とみられる可能性もあるが、VMwareのメッセージは、同技術のほかのメリット(ユーザーが運用するサーバの統合の支援、データセンターの効率的利用、障害復旧など)にフォーカスしたものであった。

 それどころか、グリーン氏によると、VMwareはMicrosoftを手助けしているという。

 「当社はMicrosoftのライセンス販売に役立っている。われわれは彼らのライセンスモデルを尊重している」と同氏は話す。

 同氏はさらに、VMwareはハイパーバイザー技術がもたらす付加価値サービス(デスクトップの仮想化やサイトの障害復旧)にフォーカスしていると述べ、同技術を特に重視していないという姿勢を示した。

 グリーン氏によると、現在、VMwareの売り上げの80%はハイパーバイザー以外から得ているという。「われわれは仮想化の価値を引き出す製品の開発を非常に効果的に進めている」と同氏。

 しかしグリーン氏は、それらの製品がViridianとシームレスに連携するかについては明言を避けた。「他社のハイパーバイザーの機能を管理するのは、あまり賢明なことではない。われわれは慎重にビジネスを進めるが、時間を浪費するつもりはない」(同氏)

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