東京ミッドタウンで始動したIPインフラ網とモバイル活用モバイル機器からのネットワーク快適利用術(1/2 ページ)

今年3月にオープンした東京ミッドタウン。施設のネットワークにIPインフラを全面採用し、有線と無線を組み合わせて施設運営に利用されている。

» 2007年09月26日 06時30分 公開
[岡田靖,ITmedia]

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 東京・六本木に今年3月開業した東京ミッドタウン(TMT)は、旧防衛庁跡地の10ヘクタールに及ぶ敷地を利用し、6棟のビルにオフィス、住宅、商業施設などの機能を備える大規模な複合施設である。三井不動産が開発に携わっている。

 近年のビルには、空調や照明設備、電子錠や自動ドア、エレベータやエスカレータ、さらにはセキュリティゲートや監視カメラなど、非常に多彩な機器が設置され、それらを集中管理するための配線が欠かせない。かつては機器ベンダーごとに独自仕様の配線が用いられていたが、最近はIPベースのネットワークを活用して各システムの配線を集約し、一元管理を行おうとする動きが広まってきた。こうした背景から、TMTでも当初からIPを用いたネットワークの採用が決まった。

 「保守管理用のネットワークをシステムごとに作ったら何重にも配線をしなければならず、その設置だけでも膨大な作業量になってしまいます。しかも、改修などを行うたびに配線の追加などが必要になります。こうした課題を解決するため、三井不動産では以前からビル管理のIPネットワーク化を積極的に推進していました。TMTのような大規模施設では、監視ポイントだけでも何万カ所という数になりますから、IPネットワークにする以外の選択肢はないと言えるでしょう」と、東京ミッドタウンマネジメントファシリティ部グループ統括の恒川尚氏は話す。

東京ミッドタウンマネジメントファシリティ部グループ統括の恒川尚氏

ビル間を結ぶ10Gbpsのバックボーン

 TMTでは「キャンパスネットワーク」と呼ばれる施設全域を網羅したネットワークが構築されている。このネットワークは、シスコシステムズなどの機器を用いて構築された管理用IPネットワークとなる。ネットワークの中枢は、TMTの中心にある「ミッドタウンタワー」ビル内のメインMDF(Main Distribution Frame:主配線盤)室に置かれ、10Gbpsのコアスイッチが用いられている。そこから、各ビルに設けられたサブMDF室へ10Gbpsの光ファイバが接続されている。

 「施設の地下には配線などを収めるループ状の共有区画が設けてあり、IP網を含めたビル間の配線はすべて共有区画を通るようになっています。区画内にはかなり広いトンネルで、その壁一面に各種の配線が整然と並んでいる様子は、なかなか圧巻です」(恒川氏)

TMTのキャンパスネットワーク概要

 このキャンパスネットワークの上には、施設管理者である東京ミッドタウンマネジメントや委託先のビル管理関連企業のためのサービスはもちろん、テナント企業向け、来館者向けのサービスが構成されている。セキュリティに配慮して、各サービスはVLANなどによって分離されているという。

 「ここまでのネットワークを構築するのであれば、ビル管理者のサービス以外にも使えるだろうと、いろいろなサービスを検討しました」といい、下記の図のサービス内容を計画した。

TMTマネジメントが管理する各種ネットワークの概要とサービス内容

 テナント向けには有線によるIP通信サービスの提供も検討されている、現時点では見送られた。主にセキュリティやトラフィックの問題を懸念してのことだという。

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