東京ミッドタウンで始動したIPインフラ網とモバイル活用モバイル機器からのネットワーク快適利用術(2/2 ページ)

» 2007年09月26日 06時30分 公開
[岡田靖,ITmedia]
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共有部をほぼカバーする無線LAN網

 無線LAN網は、キャンパスネットワークを基盤に当初から整備されている。約1000カ所のアクセスポイント(AP)を用いて、テナント区画などの一部エリアを除くほぼ全域をカバーする大規模な無線ネットワークだ。この無線LAN網は主にビル管理者向けの無線IP電話サービスおよび設備保守用モバイル端末(ノートPCやタブレットPC)での利用を目的としたものだが、全体のうち約150カ所のAPは、NTT-BPを通じて公衆無線LANサービスにも提供されている。

 この広域の無線LAN網を構築するためには、かなりの苦労が伴ったようだ。

 「テナントも独自の通信インフラをお持ちです。ですから、共有部分をきちんとカバーしつつ、それ以外の部分には電波を飛ばさないよう、調整には苦慮しました。われわれは無線IP電話端末を屋外でも利用するため、2.4GHz帯のIEEE802.11b/gを中心に据える必要があります。テナントも対応機器の多いIEEE802.11b/gを希望しますので、帯域が干渉することも多いのです。アンテナの配置やシールドをどのようにすればよいか、頭を悩ませることもしばしありました」(恒川氏)

 かなり緻密な設計を行ったようだが、それでも運用開始後に一部で不感帯が生じるなどの問題点も見つかっているという。

 「干渉を防ぐためにAPの電波の出力を抑えています。無線IP電話端末の受信感度が思ったより低いということもありましたが、通信ができない無線LAN電波の不感帯がいくつか見つかりました。また、電波の状況は常に一定ではありませんし、時間によって電波状況が変わることもあります。この不感帯を解消するために再調整が必要になると考えています」(恒川氏)

広い屋外をカバーする秘策

 TMTには広大な敷地を活かした広い緑地帯が設けられ、隣接する檜町公園と一体で整備された。無線LAN網は、この屋外エリアも網羅している。

スーパー防犯灯

 「緑地帯を含む外構部には、主に『スーパー防犯灯』内部へAPを組み込みました。スーパー防犯灯は無線LANだけでなく、非常通報用のボタンや監視カメラも組み込まれた多機能な街灯です。ただ、景観に溶け込むデザイン性を重視して作られたため、デザイナーの方は内部の機器の配置に苦労されたようです。鉄板で囲まれた構造なので、アンテナはアクリル板に面した位置に設置したものの、やはり若干程度は出力が低下してしまっているようです」(恒川氏)

 このため、当初予想していたよりも無線LANのエリアが狭くなってしまい電波状況の良くないエリアもあるという。「スーパー防犯灯は約80メートルごとに配置してありますが、これでは無線LANのAPが十分に確保できなかったようです。現在は中継アンテナなどの対策を考えています」(恒川氏)

FOMA/無線LANのデュアルバンド

 無線IP電話端末は、NTTドコモのFOMA網と無線LANのデュアルバンド通信が可能な端末「N900iL」を採用している。当初は150台の導入を予定していたが、運用開始以来、通話利用を必要とするユーザー数が予想外に多いことが判明したため追加導入を行い、現在は数百台規模となった。

 無線IP電話端末のうち、FOMAの回線契約しているものは一部のみだが、無線LAN不感帯などで内線が通じない場合は自動的にFOMA回線へ転送されるようになっており、不感帯に入っていても通話ができる仕組みだ。また、端末へのメッセージング機能を利用した緊急通報のメールを送信するシステムも構築されており、ビル管理システムのアラートを電話機でも受け取れるようになっている。

 「このシステムも無線LANとFOMAの両方の回線に対応しています。ただし、現状ではテナントが工事でシステムを止めるような場合に不要なアラートが出てしまうことがあるので、運用方法を検討している段階です。本当に必要なアラートだけを絞り込むよう、しっかりと運用レベルでの確認を行った上で本格的に活用しようと思います」(恒川氏)

 ほかにも、無線LANのAPを活用した無線IP電話端末の位置把握システムがあり、管理側関係者の所在把握が可能となっているが、これも実際には運用していないという。

 「緊急時に現場から最も近い関係者を呼び出すなどの用途を考えていますが、従業員のプライバシーなどの問題もありますので、現状は使っていません。TMTのネットワークは、さまざまな用途を実現できるようになっているため、なかなか使い切ることができないというのが正直なところです」と恒川氏は話す。現状では、TMTの管理用IPネットワークは初期運用段階にあるといえるだろう。

 「人間の手で作り、利用したものですから、時にはシステムの設定ミスなども見つかります。幸いにして利用者に影響が出るほどの重大なものではありませんが、こうした初期のトラブルを運用しながら一つひとつ解消しているいうところですね」(恒川氏)

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