表計算の新しい価値観を――「OnSheet」、SaaS提供開始iPhoneでも閲覧

インフォテリア・オンラインは、オンライン表計算「OnSheet」をSaaS形式で提供開始する。中小企業や個人、SOHOなどを対象としたサービスだ。

» 2007年10月22日 21時21分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 インフォテリア・オンラインは、オンライン表計算「OnSheet」をSaaS (Software as a Service) 形式で提供開始すると発表した。Onsheetのβ版公開から3カ月で約1万人のユーザーを獲得したOnSheetに価格体系と法人提供が追加されたものだ。

 インフォテリア・オンラインは、インフォテリアが10月22日に設立したSaaSビジネス専業の100%子会社。インフォテリアはこれまで培ってきたシステムインテグレーターなどのパートナーによる間接販売に加え、オンラインを利用したサービスを直販で提供するチャネルとしてインフォテリア・オンラインを設立。これまで大企業や中堅企業を中心に展開してきたEAI(Enterprise Application Integration)ソフト「ASTERIA」と、中小企業やSOHO、個人事業に向けたOnSheetの販売で、市場の拡大を狙う。

 テクノシステムリサーチが調査したEAI製品のシェア推移では、インフォテリアは2006年度においてマイクロソフトを抑えて1位を獲得している。同社の平野洋一郎代表取締役社長兼CEOは、SaaS市場は2010年までに1兆円規模になると予測される中、直販による新たなチャネルが必要と踏み、子会社を設立した。

image 「SaaS提供は当然の流れ。サービスを取り巻く環境が変わると、提供形式も変わる」と平野氏

 OnSheetは、500を超える関数のサポートや、36種類のグラフ機能など、表計算ソフトの基本機能を網羅するオンライン表計算サービス。メンバーや友人とネットワークを介してワークシートの共同作業や情報共有ができるほか、個人で住所録や家計簿を付けるといった用途にも対応する。さらにブログやWebサイトにOnSheetの機能を埋め込むことも可能。「Web上の表現手段としての利用」(インフォテリア・オンライン藤縄智春代表取締役社長)が考えられる。

 「企業システムの新たなインタフェースとして、表計算の新しい使い方や価値観を提供する」――その1つとして取り上げられたのが、「OnSheet iPhone Edition」だ。iPhoneやiPod touchでOnSheetを使うことができる。こちらは今のところβ版として公開されている。

image OnSheet iPhone Editionのイメージ

 昨今、内部統制において、作業者のミスや担当者の交代などで起こるロジック変更を意味する「スプレッドシート統制」がドキュメント管理の課題となっている。具体的な問題点として、情報漏えいや改ざんといったセキュリティの問題、担当者交代に伴う引き継ぎにおいて、旧担当者が埋め込んだマクロや関数の埋め込みを新しい担当者が理解できない問題、コピーなどによるバージョン(版)の増加などが挙げられる。

 従来のドキュメント管理では、ドキュメントのアクセス制限はファイル単位のパスワードのみで行われることが多かった。また、引き継ぎが複雑な上、バージョン管理はファイル名の修正などで行われ、データの受け渡しはメール添付などによるものがほとんどだった。結果として、ファイルが分散した状態で複数の人が更新版を作り、どれが最新のファイルなのか分からなくなるという問題を引き起こしていた。

 OnSheetでは、データはすべてサーバ上で管理し、個人単位でのアクセス制限や履歴の参照ができる。またユーザーにアクセス権限を与えることで、シートを容易に引き継ぐことができる。さらに、加筆・修正といった履歴を自動で管理し、修正前のバージョンを残しておくことで、ドキュメントを変更前の状態に戻すことも可能だ。変更箇所はドキュメントに直ちに反映されるのも特徴となる。

image OnSheetの特徴

 

 ドキュメント管理でもう1つ問題となるのがデータ連携だ。これに対応するのはインフォテリアのデータ連携技術をベースとする「OnSheet パイプライン」。ドキュメント管理におけるデータ連携は、通常の場合、複数のデータソースから集約したデータをCSV経由で手動処理する必要があり、繁雑な作業を伴っていた。OnSheet パイプラインを使うと、ボタンクリックやテキスト入力といった簡単な動作でデータ連携ができる。主にOffice文書などに対応する。

 インフォテリア・オンラインは今後、インフォテリアの技術やノウハウを生かし、新たなSaaSサービスを提供する見通し。サービスの具体的な内容については明言を避けたが、セールスフォース・ドットコムのプラットフォームとの連携は「大いにある」(藤縄氏)とコメントするなど、SaaSサービスの展開に意欲を見せた。

image インフォテリア・オンラインの藤縄智春代表取締役社長

 OnSheetは、個人向けには無料、法人向けには1ユーザー当たり月額500円での提供となる。契約年数に応じた割引も行われる。OnSheet パイプラインは1法人当たり月額6万円。インフォテリア・オンラインは、SaaSサービスの提供で3年後に10億円の売り上げを目指す。

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