「止まらない」サーバが実現した:多通貨対応「国際デビットカード」のシステムとは?

決済手段の多様化、グローバル化に伴い、24時間365日の稼働、リアルタイム処理能力、他システムとの接続性など、決済インフラの重要性は高まる一方だ。決済処理アウトソーシングのビジネスを手掛けるティーシス・ジャパンでは、HP NonStopサーバをその基盤の重要部分に採用しているという。


 クレジットやデビットによる決済処理サービスをアウトソースで提供するというビジネスがある。日本では金融機関がそれぞれ自前のシステムを持つのが一般的だが、欧米の金融機関では独自のシステム投資をせず、専門のアウトソース先を上手に活用するケースが有効な選択肢の一つとして定着しており、そこには大きな市場が存在している。

 1983年設立のTotal System Services, Inc.(略称TSYS)は、そうしたアウトソーサーの中でも世界的な大手企業の一つだ。同社では近年、その事業を米国に限らず、国際展開を積極的に推進している。日本においても、2003年に子会社のティーシス・ジャパンを設立し、本格的な事業活動をスタートした。

 ティーシス・ジャパンでは、2006年に日本向け決済処理システム「TSYS Asian Gateway」(TAG)を立ち上げている。TAGは、国際的なネットワークを通じて、米TSYSがジョージア州に持つ「TS2」システムとの連携はもちろん、カード発行元や金融機関などと連携することで、さまざまな決済に対応できるシステムだ。そして、多通貨対応・国際デビットカードのアウトソースを受注し、TAGおよびTS2をベースにサービス提供を開始している。

 ティーシス・ジャパン代表取締役社長の近藤均氏と、同社プロダクト&ビジネス マネジメント エグゼクティブ・バイス・プレジデント武井匡仁氏の2人に、24時間365日の稼働を求められるTAGの構築・運用について聞いた。

非常に厳しい要件が求められる多通貨対応・国際デビットカード

 現在、ティーシス・ジャパンがTAGを用いてアウトソーシングサービスを行っている中には、世界初の多通貨対応・国際デビットカードも含まれている。VISAブランドを冠してトヨタファイナンスが発行主体(イシュア)となり、日興コーディアル証券が提供する「日興プラチナデビットカード」だ。

 多通貨対応・国際デビットカードを実現するために、システムにはどれだけ厳しい要件が求められるのか。まずはクレジットカードとデビットカードの違いから説明していく必要があるだろう。

 デビットカードの場合、顧客の預金額を限度として決済が行われるため、決済システムは金融機関のシステムとのリアルタイム連携が不可欠となる。

photo ティーシス・ジャパン株式会社 
代表取締役社長 近藤均氏

 「デビット決済自体、金融システムのインフラがワールドワイドに結ばれるようになったからこそ、初めて可能になったものなのです。これに対し、クレジットカードでは24時間365日の可用性が必要とは言うものの、もともとオフライン決済からスタートしたものですし、リアルタイム性はデビットカードほど厳しいとは言えません」と近藤氏は言う。

 クレジットカードは預金額とは関係なく、顧客ごとの収入やクレジット利用実績に応じた与信枠を設けているため、基本的には金融機関システムとの連携がリアルタイムでなくても済むというわけだ。

 日興プラチナデビットカードの場合は、単なるデビットではなく多通貨対応の国際デビットである。顧客が日興コーディアル証券に開設した口座の預かり金や投資信託(MRFおよび米ドル建てMMF)残高を利用する。口座から引き落とす際、国内VISA加盟店で利用した場合には日本円の口座を優先し、海外VISA加盟店の場合は米ドル口座を優先するよう処理される仕組みだ。利用者にとっては、例えば米ドル建ての買い物をする際、米ドル口座から支払えば為替手数料を余計に出さずに済むといったメリットがある。反面、システム的には、与信の際に円とドルの両方の残高を確認する必要があるなど、処理は複雑になってしまう。国際的な決済処理アウトソーシングの実績やノウハウがあり、日米の両方でシステムを運用するTSYSだからこそ可能になった商品だと言えるだろう。

 「日興コーディアル証券では、単一の資産に投資するよりも安定した資産成長が望める国際分散投資を推奨しており、日本円だけでなく外貨で運用されるお客様も多くいらっしゃいます。そういったお客様の証券口座に円・米ドルの決済機能を持たせ、ショッピングなどでも便利に利用できるようにしたいとの希望があり、日興プラチナデビットカードの商品設計に当たって、米国と日本の両方で決済処理システムを持つ我々が、多通貨対応が可能な唯一の会社としてそのアウトソーサーに選ばれたのです」(近藤氏)

仕様決定からサービスインまで10カ月

 さて、このような高度な決済処理サービスを可能にした基盤、TS2の構築経緯をみてみよう。

photo ティーシス・ジャパン株式会社
プロダクト&ビジネス マネジメント
エグゼクティブ・バイス・プレジデント 武井匡仁氏

 「具体的な仕様が決まったのは、2006年の1月頃で、サービスインは10月でした」と、武井氏は事もなげに言う。わずか10カ月だ。

 「そもそも我々は決済処理アウトソーシングの専門家として、数多くのノウハウを持っています。また、我々のシステム基盤は、例えばVISAやMasterなど大手ブランドの持つセンタープロセッサに対し、カード会社のフロントエンドプロセッサ(FEP)として接続されて役立つものです。彼らはしっかりしたセンタープロセッサを持っているので、そこに繋いでいくだけのこと。ですから、半年から10カ月の期間で可能だと判断しました」(武井氏)

 TAGの主な役割はゲートウェイであり、またオーソリも行うFEPの機能も有している。このうち、FEPの部分にHP NonStopサーバが採用された。実はTSYSでは、古くはタンデムコンピューターズの時代からFEPにNonStopサーバを採用し続けており、今でも社内ではNonStopサーバを「タンデム」と呼んで親しんでいるほどだという。TAGのFEP部分にNonStopサーバを採用した理由には、蓄積してきたソフトウェア資産やノウハウを生かせるという点も大きい。もちろん、NonStopサーバの可用性も、TSYSでは強く実感している。

 「我々のSLAは100%。9の並ぶ数字ではありません。常にオンラインであり、オフラインはないのです。他の選択肢も検討してみましたが、やはりNonStopサーバを使う以外にないと判断しました」と武井氏は言う。

 なお、TAGはTS2基幹プラットフォームへのゲートウェイとして、日本独自の商習慣や2バイト文字対応に、より柔軟に対応する機能も有している点が、米国のTS2とは異なっている。その一方で、システム間の耐障害性まで考慮し、TS2と同様の処理もできるようにしてあるという。

 「TAGのFEPは、当社独自の国際回線を通じてTS2のFEPと向かい合っています。両方のNonStopサーバに同じ機能を持たせ、プッシュプルで処理を行う形です。そして、この構成は直列バックアップの意味も持っています。NonStopサーバは単体でも並列のリタンダンシーを持っているわけですが、さらに百万が一、TS2側や日米間の専用線に何かがあった場合でも、TAG側で処理を引き受けられるようにという考えです。この処理のためにも、やはりNonStopサーバでなくてはならなかったと言えるでしょう」(武井氏)

photo 日本のNonStopサーバおよび米国のNonStopサーバは、プッシュプルで処理を行うと同時に、直列バックアップの役割も果たす ※画像をクリックすると拡大表示します

 そして武井氏は、NonStopサーバを選択したもう一つの理由として、HPのサポートを挙げている。

 「TAG構築時には、日本に特有のメッセージを受けるためのアプリケーションを作らねばなりませんでしたが、それをNonStopサーバ上で安心して動かせるようにするにはパートナーが、特にHPの力が欠かせませんでした。彼らの手助けがなかったら、10カ月でのサービスインは不可能でしたね。また、米国TSYSや米国HPのエンジニアたちとも、同じNonStopサーバを扱っているということで、『同じ言語』でのやり取りができたことも大きなポイントです。もしこれが他社のサーバだったとしたら、きっとタフなコミュニケーションになっていたことでしょう」

高度な可用性と拡張性で将来的にも安心

 こうして構築されたTAGは、運用開始から1年以上、非常に安定して稼働を続けている。武井氏は、次のような言葉でNonStopサーバの安定性を評価している。

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 「すでに13カ月になりますが、落ちることはもちろん、片肺状態になったことすらありませんし、パーツ単位でも全然トラブルの気配がありません。こうしたNonStopサーバの安定度の高さは、システムの管理に手が掛からないことに繋がります。我々としては、できるだけリーズナブルな料金でサービスを提供したいわけですから、管理に手がかからないことが非常に助かるのです。NonStopサーバの、まるで存在することを忘れるくらいの信頼性、可用性は、本当に素晴らしいですね」

 また、将来的な拡張性に関しても、米国のTS2での実績から、NonStopサーバは信頼されているという。実は、TS2では、4億人ものユーザーの全てがNonStopサーバのFEPを通るようになっており、毎秒1500ものトランザクションに耐えた実績もあるのだという。

 「実際には、秒間3000〜4000くらいのトランザクションに耐えられるようなシステムです。ここまで拡張できることが見えているので、TAGでも将来的に安心できるのですね」(武井氏)

 その一方で武井氏は、システム全体としてのレスポンスを気にしている。とはいえ、TSYSが管轄する部分では、VISAネットワークから出てきたリクエストをTAGが受けるところから、米国のTS2に行って戻ってきて、さらにそれをTAGからVISAに返すまで、全部で0.6秒という短時間の処理を実現しているのだ。

 「デビットはクレジットよりチェックすべき項目が少ないので、時間を短縮しやすいという面もあります。しかしそれでも、まだ全体のレスポンスタイムには不満があります。これはNonStopサーバが悪いというのではなく、主にネットワークの問題ですが、ここをなんとかしていきたいですね」とのことだ。

多様化する決済手段とシステムへの期待

 「今後、社会全体としては、ますますペイメント手段が多様化していくことでしょう。デビットカードだけをみても、中長期的に考えれば、まだまだ伸びると思います」と近藤氏は言う。

 近藤氏によると、デビットのユーザーは両極端に分かれるという。

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 「一方は、自分の預金の限度内でのみ使いたいお客様です。クレジットの場合、口座にお金がなくても与信枠さえあれば利用できてしまうのですが、その場合は、借りて使うということになります。借金を避けるためにデビットを使うと考える方です」

 「もう一方は、豊富なストックを持っているお客様です。クレジットカードの与信枠にこだわらず使えるデビットカードの方が便利というわけです。端的に言えば、クレジットカードはフロー所得を尺度とし、デビットカードはストックを基準にしているというのが違うところですが、最近では日本においてもストックで生活していくような方が増えてきています」

 こうしたライフスタイルの多様化が、決済手段の多様化を後押ししている。

 「お客様ご自身がインターネットで、株取引利用など資産運用をされたりネットショッピングをされる。その利便性からもトランザクションは毎年増加し、転送されるデータは非常に多くなっていきます。そうすると、キャパシティを確保していくために、システムへの要求度はますます高まっていくことでしょう。そういったペイメントの変化をサポートしていくためにも、NonStopサーバのさらなる発展に期待したいですね」(近藤氏)



提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2008年2月23日