四半世紀もの間「止めない」運用に取り組んだ経験者が語る「匠を育てるプラットフォーム」止まらない、止めなくていいという絶対価値

HP Integrity NonStopサーバは、多くのクレジットカードの24時間取引を支えてきた。その歴史は実に25年近くにも及ぶ。日本総研ソリューションズ執行役員CTOの森陽一氏は、「約四半世紀の間、NonStopサーバと共に無停止サービスを実現するシステム課題に取り組んだからこそ、自身の技術者としての成長があった」と話す。

» 2007年06月22日 10時00分 公開
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24時間365日のサービスが要求される金融業界では、システムの可用性が経営に直結する。株式会社日本総合研究所及び株式会社日本総研ソリューションズは、様々な企業の基幹系システムを手掛けている国内屈指のインテグレーターだ。今回はNonStopサーバの特性を活かし、24時間のクレジットカード取引のシステムインフラ設計の第一人者であった株式会社日本総研ソリューションズ社の執行役員CTOの森陽一氏と日本ヒューレット・パッカード 取締役専務執行役員 吉田雅彦氏に、NonStopサーバとクレジットカード業界の関係、そして事業継続の重要性を語ってもらった。

四半世紀に渡るパートナーシップで培われた信頼感とは

ITmedia NonStopサーバとの関係はいつ頃からのものなのでしょうか?

 昭和57(1982)年、当時の日本情報サービス株式会社(現在の株式会社日本総合研究所。なお、日本総研ソリューションズは2006年に株式会社日本総合研究所を分社化して設立された)で、NonStopUというサーバをクレジットカード会社向けのオーソリゼーション処理(与信、信用照会など、以下オーソリ*)システムとして構築する際に採用したのが最初です。ちょうどクレジットカード加盟店が増えてきて、またリアルタイムで与信ができる端末が登場、通信環境も整いはじめ、オーソリも24時間のサービスが求められるようになってきた時代でした。

(*オーソリとは、クレジットカードの与信処理という意味で、販売店側がカード会社に対し、その顧客のカード利用を認めても良いかの承認を得ること。利用カードの有効性や取引金額(購入金額)分の与信枠の空きがあるかを確認。空きがある場合、当該金額相当分を確保し、承認する。)

クレジットカード業界・オーソリシステム概要図

ITmedia 昭和57年と言えば、およそ25年前であり、メインフレームが全盛の時代だったはずです。メインフレームではなくNonStopサーバを採用したのは、どのような理由からでしょうか。

 当時は、日本人の海外旅行者が増加している時代でもありました。海外のあらゆる国でカードが使われるようになると、クレジットカード会社には、24時間のサービス提供が求められるようになりました。このような状況に対応するためには、24時間365日稼働できるシステムが必要になります。ハードウェアの耐障害性をいくら高めても、例えばOSがダウンしてしまっては意味がありません。NonStopサーバは「止まらない、止めなくていい」というコンセプトで作られたサーバであり、24時間のサービス提供を実現するために必要なサーバでした。

株式会社日本総研ソリューションズ 執行役員CTO 森陽一氏

 また、NonStopサーバはシステム全体が疎結合*となっています。当時、国内のクレジットカード決済ネットワークのインフラ整備が進み、我々はこのクレジット決済ネットワークと通信接続するシステム課題を抱えていました。そもそも、ネットワーク同士を接続することは双方を疎結合で結ぶことであると考えていたので、「自身のアーキテクチャーが疎結合であるNonStopサーバを使えば相性が良いのでは?」という思いもありました。実際、後にクレジットカード業界向けのパッケージソリューション「TOURNET/CARD」を開発した際にもNonStopサーバを基盤として採用しまして、複雑なカード決済ネットワーク間の相互接続も容易に実現できました。今ではクレジットカード会社20社ほどにご利用いただいています

(*疎結合については 第2回記事「ビジネスの継続性を保証する“止まらないシステム”とは?」を参照してください)

吉田 当時、NonStopサーバを提供していた日本タンデムコンピューターズにとっては、クレジットカード業界での採用は大きな成果でした。というのも、リアルタイム処理で24時間サービスが可能というNonStopサーバの特徴がフルに生かせるマーケットだからです。

 今やクレジット業界では毎日使われているクレジットカードの約70%がNonStopサーバで処理されています。オーソリだけでなく、カード会社間のネットワークにもNonStopサーバが広く用いられ、まさに社会インフラとなっています。

オープンシステムを凌駕する可用性

ITmedia WindowsやLinuxなど、オープンシステムの採用を検討したことはありますか?

 オープンシステムにもメリットはありますが、シビアな環境での稼働確認が大変困難な作業であると考えています。「様々なプラットフォームで動作します」「最適な技術を組み合わせて選んでください」というのがオープン系の売り文句ですが、そのために、全ての組み合わせを網羅する突き詰めた検証はできません。テストで検証できていない技術の組み合わせがあれば、世界で初めての障害が発生してしまうかもしれません。

 一方、NonStopサーバは一気通貫でサービスを提供されていますから、その点で大きく異なります。しかも、どのユーザーも停止させずに運用させ続け、良い意味で技術を枯れさせていますから、より一層の信頼感があります。

吉田 ベンダーとして言えば、コンピュータシステムというものはそもそも、ハードウェアとソフトウェアの同時設計が前提になっています。NonStopサーバも、無停止運用のために両方を同時に設計開発しています。それに対しオープンシステムでは、止めない運用のために後付けで追加技術を投入しているのです。これは、例えて言えば、潜水艦を空に飛ばそうと努力するようなもので、相当無理が出てしまいますし、結果としていろいろな齟齬(そご)が出てしまいます。

日本ヒューレット・パッカード株式会社 取締役専務執行役員 吉田雅彦氏

 90年代後半には、オープン系システムでのクラスタによる継続運用が盛んにアピールされた時代がありました。しかしユーザーの方々はその後の10年あまりの経験を通して、その難しさや限界を、はっきり認識されたのではないでしょうか。

そのような背景からと思われますが、オープン系の高可用性システムで大きな障害を経験したユーザーが、最近になってNonStopサーバに切り替えようとする動きがかなりでてきています。このNonStopのアーキテクチャが、30年たった今も陳腐化しないどころか、いまだに他の誰の追随も許さず、先進性を発揮していることに驚かされます。

 とはいえ、開発者にはオープン系の技術を持つ人が増えてきています。だからこそNonStopサーバでも、オープン系プロダクトが使えるようになってきていますよね。

吉田 NonStopサーバにとってはHPと合併したことが大きな天恵でした。開発環境におけるユーザーインターフェースのオープン化はもちろん、CPUチップも業界標準のインテル社のItanium® 2プロセッサー(64 Bit)が採用され、且つ、数百に及ぶオープンソースの移植がすでに実施されています。いまや、オープン環境で育った技術者の方々がぞくぞくとNonStopサーバのシステム担当として参加いただいております。この流れは今後ともますます加速されていくことは間違いありません。

四半世紀の経験で培われた事業継続のノウハウ

ITmedia 四半世紀に渡ってNonStopサーバを使ってきた中で、印象に残るエピソードなどはありますか?

 NonStopサーバをオーソリ処理に使うためには、オーソリ以外の業務処理が稼働するメインフレームの基幹システムと連携処理を行う必要がありました。ここで課題となったのは、メインフレームとNonStopサーバのデータベース同期の実現方法です。異なる機種間のデータベースの同期を確実に実現させる方法は外部のトランザクションを受信した時刻通りにシリアライズして処理することです。しかし、それでは、パフォーマンスが出ませんでした。バッチでデータを吸い出すことも考えましたが、せっかくNonStopサーバを利用しているのにバッチ処理を行うのは本末転倒であると考え直しました。

 思考錯誤の結果、「仕掛かりキー」という仕組みを作って対応しました。全てのトランザクションを受信時刻でシリアライズするのではなくて、シリアライズさせたいキーを設定し、その単位でシリアライズをして、キー値が異なれば並行処理を行う方法を考えつきました。例えば、カード会員ごとにCPUを割り当てて対応し、複数CPUで複数のカード会員の処理を並行して行うという仕組みです。

吉田 その仕組みに役立っているのがNonStop SQLですね。NonStop SQLはANSI準拠のリレーショナルデータベースですから、APIから見れば他社のRDBと違いはありません。もともと、RDBにはパフォーマンス上の限界があったのを、NonStop SQLではパラレルなOLTPを可能にしたことで、その制約を越えることができました。他社のRDBでパラレル処理を実現したのは最近のことですから、15年は先取りしていることになります。

 障害耐久テストでも新たな発見がありました。CPUやディスクを停止させ、模擬的に障害を発生させてシステムの動作を確認するという内容です。わざわざ、そのテストのためのコマンドが用意されているのも止まらないNonStopサーバならではでしょうね。オープン系のシステムでは、このようなテストはほとんど実施しないでしょう。

 障害耐久テストでは、しばしばシステムテスト段階で見つからなかったアプリケーションのバグが出てくるので、「本番で出なくて良かった」と言いつつ修正しました。このようなテストに対する拘りはこの機械に向かい合う技術者の使命として、テストに対する拘りの文化を築きました。この文化は今も脈々と受け継がれております。また、二重化されたディスクの一方を落として、片系から復旧させるという作業は、運用担当者にとっても良い経験になっています。ちなみに、NonStopサーバは、ディスクが片系になると、リトライ回数を増やすように作られています。厳しい状況になっても頑張るシステムというのは、なかなか感心します。

吉田 ノンストップ性の保証というのは、製品だけでなく、システムの設計から構築、開発、運用まで全てのフェーズにわたり支える体制があってこそだと思います。ですからHPでは、ユーザーが実運用中のNonStopサーバが片系状態になったりしたら、すぐに関係者全員にノーティス情報が飛び、復旧作業に取り掛かかれる体制を構築しています。製品から保守サービスまで、米国本社の開発元まで巻き込んでのお客様の事業継続を支える万全の仕組みがあるのです。

事業継続が重要な今こそ求められるNonStopサーバ

ITmedia 事業継続という言葉が出たので、最後にそちらの話題をお願いしたいと思います。事業継続には、どのような取り組みが有効だとお考えでしょうか。

 我々の場合、例えば、通常のシステムとバックアップのシステムを用意しておき、OSアップデートや予防保守などの際に切り替えて使うといった運用も行っています。基本的には「止めなくていい」NonStopサーバですが、それを止めるときのことも考えておくというわけです。

吉田 計画停止も重要な要素です。「何かあったときに止まらない」だけでなく、「何かをするときにも止めなくていい」のがNonStopサーバの大きな特徴です。例えばハードウェアの構成変更やデータベースの再編成などは、オンライン処理を止めずに行うことができます。実際、某大手家電会社では、基幹システムの数百の全ディスクドライブの入れ替えを全く停止させずに行いました。

 従来、計画停止を行う場合は、データ量の少ない深夜の時間帯を使っていましたが、インターネットや海外取引のデータ量が増加するに従い、深夜の時間帯であっても計画停止を行うことが困難になってきています。今後、この傾向は加速度的に高まっていくでしょうから、いまや「止めなくてもいい」システムでないと社会的なインフラに成りえなくなっていると言っても過言ではなく、NonStopのアーキテクチャーの重要性がますます高まっているわけです。また、運用サイドでも、止めない運用には神経を使います。単純なミスをなくすことも必要なのです。ですから、管理基準を厳しくしたり、運用担当者のマインドを高めたりといった点も重要です。

吉田 NonStopサーバには、事業継続を担当される開発や運用サイドの方々の負担を軽減する仕組みも用意されています。例えば15年ほどの歴史を持つミドルウェア「NonStop RDF」(Remote Data Facility)は、遠隔地に置かれた2つのデータセンター間でデータの同期を行うものですが、アプリケーション側で全く意識することなく、トランザクション単位での同期を可能にしています。ユーザーである某都市銀行様では、「NonStop RDF」を使い、一日あたり数十兆円規模の取引きを支えています。大手銀行のようないわば究極のディザスタトレラントが求められるところで、「NonStop RDF」が役に立っているのです。このようなことをオープン系で行おうとしたら、開発や運用がどれだけ大変なことになるか、想像もできません。

 NonStopサーバは耐障害性を売り物にしたハードウェア・プラットフォームであるが故に、問題の解決には正面から立ち向かって来ました。困難ないくつかのシステム課題に対しても疎結合のアーキテクチャの利点を極力引き出す解決策を徹底して考え抜きました。例えば、システムに唯一存在しないタスクを持たない設計思想を貫き、同じ処理を並行して稼働させることで徹底したリスク分散とトランザクション増加に耐えられるアーキテクチャとしました。使い方次第で、必ず課題を解決できるNonStopサーバは、たとえ障害が起きても解決策があり迷宮いりすることがない。過去も今もこの解決策がある安心感が、機械の良さを最大限に引き出そうというところまで、技術者としての意識を持ってこれるので、まさに「匠を育てるプラットフォーム」だとも考えています。

吉田 私は、タンデム時代から18年、NonStopサーバと付き合ってきました。その経験の中でも、特にHPとの合併は大きな意義を持っていると思います。HPがNonStopサーバを開発・販売することで、HPは他社が絶対に保有できない「市場において唯一無二」の存在であるプラットフォーム製品を品揃えできました。世の中の多くの製品は相対的な価値で測られる存在ですが、NonStopサーバは絶対的な価値をお客様に提供できる製品であると信じています

:森 NonStopサーバは、私が出会った頃から独自の技術をもつ、ユニークな製品でした。HPとの合併で、オープン系の要素も取り入れ更に進化を続けているのですね。先頃発表された大規模なデータウエアハウスに特化した「HP Neoview Platform」もアーキテクチャ的にはNonStopサーバを引き継いだ存在と聞いております。HP社の中で、NonStopサーバのアーキテクチャが評価されている証なのでしょう。私としても、今後ともNonStopサーバの更なる機能拡大と技術の大いなる進化に期待しております。

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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年7月23日