才能の網羅がつづる出版の未来像日本のインターネット企業 変革の旗手たち【番外編】(1/3 ページ)

出版不況や活字離れなど出版社を取り巻く状況が悪化する中、持ち前のコンテンツをWeb、紙媒体、携帯電話などに展開し、新たな出版社像を模索する講談社。Webマガジン「MouRa」の部長である服部徹氏にWebマガジンや出版の未来を聞いた。

» 2008年02月05日 00時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 紙を超える勢いでデジタルメディアが増える中、独自のコンテンツを小説やマンガといった形で世に送り出してきた講談社。Webマガジンや電子書籍など新たな分野に切り出し、出版物やコンテンツをクロスメディアで展開している。その試みの1つに、趣味やニュース、グラビアなどのコンテンツを集めたWebマガジン「MouRa(モウラ)」がある。個人の才能を“網羅”し、21世紀の出版とコンテンツの新しい在り方を模索し続けるMouRa、その部長である服部徹氏に話を聞いた。

image 講談社、デジタル事業局MouRaの服部徹部長

ITmedia 講談社とインターネットビジネスとの出会いとは。

服部 1996年から97年にかけて大手出版社が相次いで人物や社会、風俗を扱った雑誌を出し、そのすべてが廃刊に追い込まれました。講談社ではその失敗を基に新たな媒体を立ち上げることになりました。同時期に週刊誌「FRIDAY」がインターネットで展開しはじめており、こうした経験もふまえて、1999年6月にオリジナルコンテンツを集めたWebポータルサイト「Web現代」のパイロット版を創刊しました。

 雑誌や本では成功してきた講談社ですが、Webは運営の仕方さえ分からないという状況でした。Web現代が走り出した頃はわたしを含む担当者が「サーバって何?」といったレベルでした。Webのノウハウが無い中で、とにかく“やってみるしかない”と思い立ち、Web運営にはげみました。

ITmedia Webで雑誌のコンテンツを配信する企業の先駆けとして、当時は苦労も多かったのではないでしょうか。

服部 オリジナルのコンテンツをWebで配信したものの、それと収益をどのように結びつけるかに苦心しました。いろいろ考えた末に、講談社が持つ資産であるグラビアや占いといったコンテンツを課金形式で配信することに決めました。Webの課金コンテンツが売れるのかと不安でしたが、300円のコンテンツを購入するユーザーが1万人も出てきたのです。その後iモードの誕生やWebでコンテンツを配信するライバル企業も増えてくるなど、競争が激化しました。Webコンテンツも売上げが立つことは実感できましたが、ワークフローや組織体制が定まらないまま走り続けていました。

ITmedia 2005年にWeb現代をMouRaに刷新しました。コンセプトには“21世紀の出版や新しいコンテンツの在り方の追求”を掲げています。

服部 今の若い世代は情報収集にインターネットや携帯電話を使い、本や新聞は読みません。生き残るためには、出版社の発想をWebに運用しようと考えるのはある意味必然でした。講談社が持つさまざまなコンテンツを多岐にわたって配信し、それを読者が取捨選択します。生き残った要素を集約したものが結果的にコンセプトとなりました。恥ずかしながら、明確なコンセプトは初めから持っていなかったのです。

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