SEから女性シンガー転身、支援する秘密の集まりとは会社を辞めよ、シャバへ出よう(1/5 ページ)

1月の記事で、読者が会社を辞めることに興味を持っていることが分かった。そこで、最近の退職事情について調べてみた。SEから女性ミュージシャンへの転身、日本のSIを変えるための転職など人間ドラマの彩りは豊かだった。

» 2008年02月09日 00時00分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 1月19日の記事「会社の上手な辞め方、教えます」へのアクセス数の多さで、読者が会社を辞めることに興味を持っていることが分かった。そこで、最近の退職事情について調べてみた。

 会社員は顧客や上司との関係などでストレスを抱えている。サラリーマンの宿命だが、我慢の度合いが水準を超えた場合、それは人生の無駄使いかもしれない。都内の33歳男性は「会社は刑務所のようだ」と嘆く。時には潔く場を去り、シャバに戻る勇気も必要だ。

 ここでは、SEから女性シンガーに転身した女性と彼女を支援する組織、50歳の自分の姿を見据えて転職を決めたコンサルタント、「マクドナルド問題」を解決できるという社長の声などを通じて、会社勤めを今一度考えてみたい。また「人財」を引き止めるべく努力する企業の取り組みも探る。

 「声帯の位置を下げたまま締めて、喉の奥を開けるんです」

 女性シンガーソングライターのユニット「花乃ルサカ」で、ボーカルとバイオリンを担当する清水瑠沙香さんは話す。日本人離れの透き通った声を出すコツなのだという。

花乃ルサカの清水さん。中高を過ごしたポーランドでは、夜中に自宅で銃を持った覆面強盗に遭ったという。「いつ死ぬか分からない、やりたいことをやろう」という人生観が身についた

 花乃ルサカとして、東京・丸の内のスターバックスや都内各地のライブハウスなど、ライブを中心に音楽活動を展開。幅広い年齢層から支持を受けている。

 「もっとたくさんの人に知ってもらいたい」と目を輝かす清水さんだが、過去には苦悩もあった。

 清水さんは東京大学を卒業後、外資系のITコンサルティング会社アクセンチュアに就職した。「毎晩遅くまでテスターをしていました」という彼女。開発したソフトウェアが仕様通りに動くかどうかを確かめていた。来る日も来る日もデータ投入とテストを繰り返したという。

 歌の勉強は学生時代からずっとしていた。だが、音楽仲間の多くがプロを目指すことなく会社員として働いていたこともあり、「最初は会社をやめるつもりは全然なかった」という。1日15時間もパソコンの前に座って仕事をする生活が続くうちに「これでいいのか」と思うようになった。

 そんな時、花乃ルサカの相方、田中花乃さんに出会った。ミュージシャンとしてのキャリアは田中さんの方が豊富。過去に田中さんは、小泉今日子、知念里奈、上戸彩、ケミストリーなどに楽曲を提供している。二人が知り合ってから半年後、仕事中に突然掛かってきた田中さんからの電話で「一緒に何かやらない?」と誘われた。やはり清水さんの澄んだ声が決め手になった。

 「プロの歌手を目指す」。ここで確信が芽生えた。会社員として壁にぶつかっていた清水さんが取ったのは「会社を辞めて、歌手になる」という選択肢だった。

 退職後しばらくは、「音楽をやっているんだか、営業をやっているんだか」という生活。スターバックスなどに飛び込み、ライブ活動をさせてもらえるよう頼み込んだ。徐々に知名度が上がり、現在ではiTunesで曲の販売もしている。

 新たな道を選んだ彼女に迷いがないことだけは間違いない。

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