今年のIT支出は伸び悩み――IDCが予測

米国経済の減速でハードウェア市場、特にPC市場が最も大きな影響を受ける見込みだ。

» 2008年02月12日 20時15分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 調査会社IDCの最近の調査によると、企業各社は米国経済の減速の影響を感じ始めており、向こう12カ月は全世界のIT支出が伸び悩む見通しだ。

 IDCは2月11日に公表した報告書の中で、全世界のIT支出は今年、約5%増加し、総額で約1兆3800億ドルになると予測している。昨年は全世界のIT支出は、約6%増の1兆3000億ドルだった。

 米国市場では、2008年のIT支出の伸びは4%にとどまる見通しだ。同市場の2007年の伸び率は6%だった。IDCのアナリストによると、米国の景気が後退すれば、米国のIT市場の減速傾向が全世界で広範なインパクトを与えることが予想されるという。

 IDCの報告書は、Forrester Researchの調査結果とも符号する。Forresterによると、IT市場は2007年後半の米国経済の減速の影響を受けなかったが、少なくとも2008年上半期には多少の影響が及び始めるとしている。同社は2月11日、向こう1年間の全世界のIT支出は6%の増加にとどまるとの予測を明らかにした。その背景要因として、米国消費者の支出減少、企業におけるハードウェア投資の抑制、不動産ローン問題と信用収縮の影響の長期化などを挙げている。

 IDCのアナリスト、スティーブン・ミントン氏によると、サブプライムローン危機と信用市場の収縮は、金融サービス企業自身が2008年にIT支出を削減することにもつながり、これはベンダーおよびITサービス企業各社にとって困った状況だという。Wal-Martなどの大手小売店についても同じことがいえる。今年、消費支出が減少すれば、大手小売りチェーンは社内のITプロジェクトの予算を削減せざるを得ないだろう。

 IDCの報告書によると、景気減速の影響を最も強く受けるのがハードウェア市場だ。昨年は約2%の成長を示した米国のPC市場は、向こう12カ月で5%縮小する見通しだ。ソフトウェア、サービス、ストレージ、ネットワーク機器の市場は拡大する見込みだが、成長率は大幅に鈍化するという。

 「企業各社は短期的な解決策を求めており、機器のアップグレードを手控えたり延期したりする傾向が見られる」とミントン氏は話す。

 ITハードウェアの2大サプライヤーであるHewlett-PackardとDellは、2週間後に四半期決算を発表する予定であり、これにより過去3カ月のIT市場の減速の度合いがかなりはっきりするものと思われる。

 ほかの大手IT企業の四半期決算もぱっとしない。例えば、Cisco Systemsは2月7日、同社の第3会計四半期の成長率が10%になる見通しを明らかにしたが、この数字はウォール街の予測を下回るものだった。

 「ベンダーとしてのCiscoは、IT市場でも特に急成長中のネットワーキング機器分野で製品を販売している。昨年はネットワーキング機器への支出が倍増したため、今年も倍増すると予想されていた」とミントン氏は話す。

 企業各社が今後数カ月のIT支出の削減を予定したり、銀行が企業への貸し出しを引き締めるなど、米国経済をめぐる最近の懸念の高まりを受け、IDCとForresterはいずれも予測を修正しなければならなかった。

 一方、米ドル安と新興市場でのIT需要の拡大が、今年下半期にベンダーの業績回復につながる可能性もあるが、IDCの報告書では、これらの新興市場の一部、特に中国では、米国の景気減速の波及効果が続いているためにIT支出の鈍化傾向が見られるとしている。

 IDCによると、今年の中国のIT支出の伸びは、昨年の17%から12%に減少する見込みだ。しかしインドでは、アウトソーシングビジネスなどに支えられてIT支出の堅調な増加が期待される。今年は多くの企業が、経費節減のためにITプロジェクトのアウトソーシングを増やすものと思われる。

 ミントン氏によると、ロシアも今年、IT支出が増加する見込みだという。その背景には、石油価格の高騰でロシアの経済が強くなっていることがある。

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