ITセレブは最終目標なのか? SEすごろくの真意制作者に聞く(1/3 ページ)

SEの職業を疑似体験できる「SE出世双六(すごろく)」が注目を集め、その内容には賛否両論が巻き起こった。「SEは出世すれば幸せか」「ITセレブはゴールなのか」――すごろくの真意を制作者に聞いた。

» 2008年03月15日 00時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 2007年末にリリースされるやいなや、またたく間に読者の注目を集めた「SE出世双六(すごろく)」。SEの人生をすごろくで体験できるという内容だが、「SEの仕事が分かる」「SEの過酷な現場を表現しているのか」など賛否両論が起こった。

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 このすごろくを製作したのはシステムインテグレーターの日立システムアンドサービス。これまで「PM格言カルタ」「セキュリティかるた」とユーモアあふれる製品をリリースしてきた。同すごろくのラストには人生の分かれ道と称したマス目があり、そこを超えるとITセレブという肩書きを得られる。海外支社長に抜擢されたり、自伝を出版したりと一風変わった出来事がマス目に描かれている。

 システムインテグレーターという立場でこれらの製品を出す意図はどこにあり、どのような考えでこのすごろくを作ったのか。制作者を取材した。

SE=3Kの図式を払拭したい

 「SEは東大生が目指したい職業とはかけ離れている」

 同社セールスプロモーション部部長の野中秀弥氏は言う。IT業界は、3K(きつい、帰れない、給料が安い)のイメージが定着し、SEをはじめとするエンジニア不足など、課題が山積みである。一方で、ITに関連する能力を職種や専門分野ごとに体系化した指標「ITスキル標準」(ITSS)が注目を集めるなど、エンジニアを底上げする制度も整ってきた。

image 野中秀弥部長

 「ITSSに準拠した製品が作れないか」――野中氏は考えていた。これまでに製作したかるたシリーズは、当時問題となっていたプロジェクト管理の負担や情報漏えいといった問題を、製品のコンセプトと結び付けることでヒットを飛ばした。2007年を振り返ると、IT業界の底上げとエンジニアの人材問題が野中氏の印象に残っていた。

 「資格を取りながら成長していくSEという職業の意義を正しく伝えられれば、IT業界のイメージアップにもつながる。SEの人生を体現するには長い時間をかけて楽しめるすごろくが適する」。野中氏の構想は固まった。早速セールスプロモーション部のクリエイティブディレクターである永江公氏にすごろくの製作を依頼した。

 永江氏はかるたシリーズから製作を担当している。すごろくの製品化に向け、永江氏を中心に、コンセプトをたたき上げるブランド委員会、ITSSに関連する教育関連の部署、マス目のアイデアを確認する営業やSEなど30人弱が集まった。「プロジェクトチームのようなものができた」(同氏)。

 SEという職種の偏見をなくしたい、その思いをこれからIT業界を目指す人に伝えたい。すごろくのメインターゲットは学生となった。

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