多品種少量生産をミスなく効率的に:世界トップクラスの半導体産業を支えるカシオの業務用PDA

世界でもトップクラスの大手半導体メーカー、株式会社ルネサス テクノロジでは、国内各地の生産ラインで工程管理のため「DT-5200」などカシオの業務用PDAを活用している。ウェハのカセットに記されたバーコードを読み取り、事業所内のサーバと通信して製品や処理の段階に応じて適切な加工条件を呼び出したり、工程の進捗状況をサーバに送ったりする使い方で、加工条件の間違いをなくし、効率的な生産を可能にしているという。


既存ラインで理想的な工程管理を実現する業務用PDA

photo ルネサス テクノロジ 生産本部 甲府工場

 2003年4月に、日立製作所と三菱電機の半導体事業を統合する形で設立された大手半導体メーカー、株式会社ルネサス テクノロジ。日立と三菱の両社が得意としていたマイコン分野では、それぞれが持っていた製品ラインを継承し、2007年3月にはフラッシュメモリ内蔵マイコンで出荷総数10億個を達成するなど、世界トップシェアの座を確固たるものとしてきた。

 また、同社は、システムソリューション事業も大きな強みとしている。近年の電子機器では、小型化や低消費電力化、開発期間短縮やコストダウンなどのために、複数の機能を1つのチップ上に統合したシステムLSIが多用される傾向にある。顧客ごとの細かなニーズに合わせて機能をカスタマイズしたSoC(System On Chip)や、特定用途に特化した汎用品であるASSP(Application Specific Standard Products)などのニーズは、自動車からPC、家電にいたるまで広がる一方だ。カシオの代表的な製品であるデジタルカメラ、電子辞書、またハンディターミナルなどにも採用され、多様化する顧客ニーズを満たすためにも役立っているというわけである。

 現在、半導体製品の種類は増え続けており、細かな仕様の違いで使い分けられる傾向が進んでいる。PC用のCPUやメモリなど汎用性の高い半導体を例外として、多品種少量生産の製品が多くなってきていると同時に納期短縮への要求も強い。こういった条件を満たすべく、多くの半導体メーカーでは生産工程をできるだけ自動化しようとしている。

 しかし、半導体の生産ラインには巨額の設備投資が必要だ。シリコンウェハ上に回路を作り上げる前工程だけでも、拡散、フォトリソグラフィ、CVD、スパッタリング、エッチングなど、さまざまな工程があり、それぞれの工程に相当数の製造装置を用意しなければならないのである。こうした設備投資は製品コストに大きく影響するため、部分的に製造装置の更新や増設などを行いつつ、生産ラインを何年もの間に渡って使い続けていくことが望ましい。既存ラインを上手に管理する仕組みがあれば、効率的に多品種少量生産が可能になる。

 そこで、ルネサス テクノロジでは業務用PDAを採用することで、既存ラインの工程管理を効率化することにした。そこに採用されているのが、カシオの業務用PDA「DT-5200」である。従来機種のDT-5100を含め合計約600台ものPDAが、国内8ヶ所の事業所で採用されている。

photo システム概要

装置の画面隣にPDAを置くことでレシピの入力や確認が確実に

photo ルネサス テクノロジ 生産本部 甲府工場 生産技術部 システムG 技師 中込成彦氏

 ルネサス テクノロジでは、これらの業務用PDAを加工条件表示や進度管理に用いているという。同社甲府工場で、その具体的な利用状況を詳しく聞いた。

 半導体の前工程では、ウェハ上の回路を完成するまでに、さまざまな装置での処理を何度も繰り返さねばならない。フォトリソグラフィで作られたパターンに対し、エッチングを行ったり異なる素材を蒸着したりといった加工を施し、最終的に立体的な回路を作り上げていくためである。

 そうした加工は、最終的な製品によって、工程ごとに厳密に定められた条件に従って行われなければならない。もちろん、その条件を間違えてしまったら製品は作れない。

 「何百通りもの加工条件を使い分ける装置もあるのです。以前は紙に印刷された条件表から適切な条件(レシピ)を選んで入力していましたが、PDAを導入してからは、その品物の条件を表示させ、入力するようにしています」と、生産本部 生産技術部 システムG 技師の中込成彦氏は説明する。

 25枚のウェハを格納するカセットにはバーコードが記されており、このカセットごとに進捗の管理が行われている。業務用PDAでバーコードを読み取り、無線LANを通じて工場内のサーバへアクセスすると、そのカセットに入ったウェハが、どのような条件の処理を必要とするのかが表示される。迅速かつ確実に条件をピックアップできるというわけだ。

photophoto クリーンルームとなっている製造ライン内で、担当者がPDAを使いレシピをチェックする

 また、条件選択の際だけでなく、入力時にも紙より業務用PDAの方が便利だという。

 「加工条件を間違えるわけにはいきませんから、入力後にはしっかり確認を行っています。業務用PDAであれば、装置の画面のすぐ隣に置いて作業できるので、複雑なパラメータの入力も確認も、確実に行えるのです」(生産本部 製造部 第二製作課 職長の椚原聡氏)

 つまり、人間が関わる加工条件入力の場面で間違いをなくし、かつ迅速な作業を可能にすることで、多品種少量生産の効率を向上しているのである。

photo ルネサス テクノロジ 生産本部 甲府工場 製造部 第二製作課 職長 椚原聡氏

 また、紙を使う場面が減ったことも、大きな効果だと椚原氏は言う。

 「加工条件は、技術的な問題から、しばしば変更されることがあります。紙では、最新の情報を管理するのが大変でした。業務用PDAなら、サーバ上の最新の条件を常に呼び出せるので心配は要りません。また、紙そのものの管理の問題もあります。品物の近くで扱う紙が減ったことは、エコロジー的にも良いことですし、半導体工場としても良いことなのです」

 言うまでもなく、半導体製造工程は異物との戦いだ。クリーンルーム内で使う紙は、繊維などが飛び散らないように作られた特製の紙ではあるが、やはり装置や品物の近くで大量の紙を扱うことは望ましくない。また、クリーンルーム用の紙はオフィスの用紙などと比べると格段にコストが高い。加工条件を更新する際、大量の数表を取り替える負担がなくなったことも、大いに歓迎できるというわけだ。

 さらに、それぞれの品物が全体の工程の中でどこまで終えたかという進度の管理も、同じく業務用PDAを通じて行っている。バーコードを読み取った時点の進度情報を表示するのはもちろん、処理を終えた際にはサーバへ登録を行い、進度情報をリアルタイムで更新するのだ。

 「こうした進度情報の管理も、以前は別の場所に置いたPC端末で行っていました。業務用PDAを採用してからは、常にその場で管理できるので、非常に効率的です」(椚原氏)

 また、そのほかに、クリーンルーム内外の連絡にも役立っているという。

 「システムから端末にメッセージを送る機能があるので、例えば急な変更が行われる際にも、新しいドキュメントがある、といった形で通知をしてくれます」(椚原氏)


システムの改良を続けつつ他用途でもPDAを活用したい

 半導体生産ラインにおいて、業務用PDAが採用された理由は、どのようなものだったのか。中込氏は、次のように語っている。

photo 業務用PDA DT-5200

 「機種選定は社内のシステム開発部門が行いましたが、DT-5200などの機種はラインで使う端末として必要な条件を満たしていますね。まずロッド番号を読み取るバーコードリーダーが内蔵されていること。それからWeb表示をするための無線LANを搭載していること。無線LANの拡張カードが必要なようでは壊れやすいですから。そしてもう1つはテンキーを装備していることです。カセットには25枚のウェハが入るのですが、その一部を抜き出して別の処理を行うといったケースもあります。そのとき、取り分けた枚数を入力するために必須なのです」

 なお、PCでは、装置の画面の隣に置いて作業することはできないし、そもそも設置場所が必要だ。生産ラインには数多くの装置が並び、その間にカセットが置かれ、運ばれる。余計な場所を取る機材は増やしたくないというわけだ。

 「その意味でも、業務用PDAが適しているのですね。ちなみに、普通のPDAでは商品寿命が短いので、やはり向きません。ライフサイクルの長い業務用PDAが最適なのです」(中込氏)

 業務用PDAならではの耐久性も、生産ラインの中での利用に向いているようだ。

 「バッテリは消耗品として定期的に交換していますが、本体は耐久性が高く、我々のラインで故障したことはありませんね」(椚原氏)

 システム側の改良は、常に続けられている。業務用PDAが役立つ場面は、他にも考えられると椚原氏は言う。

 「今後は、加工条件だけでなく生産条件チェックにも業務用PDAを使おうと検討中です。また、装置管理にも活用できるのではないかと考えています。こういったアイデアも、社内で提案していきたいですね」



提供:カシオ計算機株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2008年4月16日


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