コラム
» 2008年04月14日 12時30分 UPDATE

ギークとのコンタクトを求めるのは誰か――Wii Athletesリポート

かねてから開催を告知していた「ZIGOROu杯Wii Sports大会」が先日開催された。デベロッパーと非デベロッパーの間をゲームという潤滑油が取り持った同イベントのダイジェストをお届けしよう。

[西尾泰三,ITmedia]

 4月中旬、ある土曜日の昼下がり。東京・月島の駅には、子どもから大人まで20名ほどが集結していた。「ZIGOROu杯Wii Sports大会」に集まった方々だ。ZIGOROuこと山口徹氏の何気ない一言ではじまったこのイベント、おそらくITmediaでは初ではないかと思われるこの種のイベントのダイジェストをお伝えする。

うわさにたがわぬZIGOROuの実力

 ZIGOROu杯Wii Sports大会は、小飼弾氏の自宅で開催された。各自がウォーミングアップを終えた後、以下のように熟練度を考慮したトーナメントが組まれた。

tnfig1.jpg トーナメント表(敬称略)。小飼氏刺客は小飼氏のお子さん。なお、井上恭輔氏は風邪を引いてしまい、残念ながら欠席となった

 試合は第一試合から西尾泰和氏と尾藤正人氏の対決となった。熟練度2399(一般には2400が上限といわれる)というZIGOROu氏と普段から勝負を重ね、気がつけば実力者と化していた西尾氏、そして熟練度2000越えとこちらも実力者の尾藤氏。互いにZIGOROu氏の対抗馬と思われていた両者はフルセットまでもつれた末に尾藤氏が勝利、初戦からレベルの高い戦いがくり広げられた。

 ほとんど動くことなく、しかし器用に手首をひねった打ち方から繰り出される不思議な球筋で対戦相手を圧倒したのはやはりZIGOROu氏。容赦ない攻撃を繰り出す彼はいつしかヒールと化し、ギャラリーの罵詈(ばり)雑言という精神攻撃を背中で受けながらのプレイとなったが、それでも動じていない様子だった。唯一善戦したといえるのが不慣れと思わせながらロケットサーブを連発する根来氏を退けて勝ち上がってきた早水氏。ZIGOROu氏も後に「早水さんの試合は少し危険だった」と回顧しているが、結局1ゲームも取られることなくZIGOROu氏が決勝まで勝ち上がってしまった。

tnfig4.jpgtnfig5.jpg
tnfig6.jpgtnfig7.jpg 大会終了後にはエキシビションとして西尾氏とnorah氏の試合も

 決勝は、準決勝でnorah氏を下した尾藤氏とZIGOROu氏。尾藤氏が意地をみせ、ここでようやくZIGOROu氏が1ゲームを奪われたが、その勢いは衰えず、そのまま優勝を手にしてしまった。サイボウズグループの覇者がまた1つ新たな称号を手にした瞬間だった。

/dev/null Tシャツとは。やりますね 全選手中、ZIGOROu氏から唯一1ゲームを取った尾藤氏。しかし決勝でもZIGOROu氏はほとんど動かず。底がみえません

 優勝を決めたZIGOROu氏には、Mozilla Japanの根来さんから優勝賞品としてフォクすけぬいぐるみが贈られた。「子どもが(フォクすけぬいぐるみを)ほしがっていたから……。全力で勝ちに行きました」とZIGOROu氏。親としての顔をのぞかせた。

お子さんが意外とフォクすけに無関心です 圧勝といってよい勝利を収めたZIGOROu氏に根来さんからフォクすけぬいぐるみが進呈された

デベロッパーを理解するのにデベロッパーである必要性はあるか

 Wii Sportsの後しばらくは参加者同士で交流を図っていたが、読書を終えた小飼氏がリビングへとやってきたのはそれからしばらくしてのことだった。すでに数名は都合によりその場を後にしていたが、小飼氏の登場により、とたんに技術話に花が咲き、言語の話、Firefox 3やSafariについて、Macの歴史的背景、ViとVim、めまぐるしく変わっていく会話の節々で、皆が思うところを口にし、そしてそれに対してさまざまな見地からまた会話が発展するという終わりなき座談会の様相を呈していた。

こっそりラムダの西尾さん 座談会終了後。左上から尾藤さん、norahさん、湯浅さん、西尾さん、小飼さん、小山さん、早水さん。今回、自宅を開放いただいた小飼さんの手には4月15日発売の著書「小飼弾のアルファギークに逢ってきた」

 ともすれば内輪のオフ会であるととらえられがちな今回の大会だったが、デベロッパーでない方のエントリーポイントとしてはそれなりの意義もあったのではないかと思う。現在、国内のIT業界を見回すと、若いデベロッパーの方々が積極的に勉強会などを開催している。上述の西尾泰和氏やamachangこと天野仁史氏のような若くて才能のある方たちが、自己の経験なども踏まえた上でできるだけ参加者の心理障壁を下げるよう考えられた「1000人スピーカカンファレンス」などだ。

 大規模なイベントが抱えがちな問題点を解消しようとするこうしたイベントが素晴らしいのはいうまでもない。しかし、世の中はデベロッパーのみで成り立っているわけではないのもまた事実である。ドイツの社会科学者、マックス・ウェーバーは「理解社会学のカテゴリー」の中で、「シーザーを理解するためにシーザーである必要はない」と述べた。同様に、デベロッパーを理解するには、必ずしもデベロッパーである必要はないと記者は思う。むしろ、そうした方も参加することでデベロッパーたちが持つ優れた技術が広がっていくきっかけになることもあるのではないか――今回のイベントはそうした考えに端を発している。

 今回、わざわざ茨城から参加してくれた茨城高専の湯浅さんは、「学校では習うことがないさまざまな話を聞くことができた」とうれしそうに話した。同じく高専出身の井上恭輔氏に記者が以前聞いた話では、高専生はいわゆるシステムインテグレーター的な世界がIT業界のすべてだと思ってしまう風潮があるという。それゆえに、今回のような場はよい刺激になったのではないだろうか。

 同様の声は参加者募集に応募いただいた方からも聞くことができた。某金融機関に勤務し、自らを文系人間と評する本間氏は、次のように話してくれた。

 「貴重な一日だった。わたしが仕事で接点があったIT業界の方たちも、猛者と呼んで差し支えないだろう方々だったと思うが、今回集まった方たちはもっと凄いレベルの方たちなのだろう。そんな方たちと、文系人間の自分が交流を図るには、ゲームというのもなかなか有効な手段かもしれない。社会人になって、ゲームはほぼやめていたのだけど、ゲームによるコミュニケーション円滑化の効果について、評価を見直すべきと思った」

 同様の声は同じく参加者募集に応募いただいたランクス代表取締役の藤本氏や、ゴーガ代表取締役の小山氏からも聞くことができた。今回は、応募いただいた方からランダムに選ばせていただいたが、結果として彼らはいずれも生粋のデベロッパーではなかった。老若男女誰でも気軽に参加でき、かつ優れたデベロッパーたちの知見を何らかの形で共有できる場、そうした場を求めているのはむしろデベロッパーでない方々なのかもしれない。

 もちろん、今回のイベントは手探り感が強いのも事実だし、課題も多く残っている。諸般の事情で参加したくても参加できなかった方のためにと用意したライブ配信の不手際をはじめ、各所に問題があった。試行錯誤は当分の間続くだろう。

 記者が主に担当しているチャンネルである「DevIT」は、エンタープライズというジャンルに属してはいるが、志向性としてはエンタープライズに閉じることなく、デベロッパーに向けたサイト構成を意識している。デベロッパーの力になるコンテンツの拡充はもちろんだが、こうしたイベントなども定期的に開催し、デベロッパーの世界を広げる一助になれればと切に思う。

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ