PC電源のノイズ耐性を測れ【後編】計る測る量るスペック調査隊(3/3 ページ)

» 2008年05月02日 00時00分 公開
[ITmedia]
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電圧降下に対する耐性

 図5は電圧降下に対する、5ボルト出力の変化の傾向を示したグラフである。

図5 図5 入力電圧の降下に対する5V出力の変化

 この試験でも、eNSP3-450PやePCSA-500Pと、ノーブランド電源との挙動の違いは明らかであった。負荷206.3ワットのノーブランド電源では、90ボルトを下回った辺りから出力が下がりだし、85ボルトを下回った時点で出力電圧が規格上の下限である4.5ボルトを下回った。この状態では電源自体は稼働し続けていたものの、81ボルトまで入力を下げた時点で電源は停止している。

 さらに、300ワットの負荷をかけた場合、95ボルト近くで出力の低下および電源停止が発生している。日本国内の供給電圧の下限値は95ボルトであるので、この電源に対し、定格出力に近い負荷をかけた場合、環境によっては動作しない可能性があるわけだ。

 一方、eNSP3-450PやePCSA-500Pでは入力電圧73ボルト付近までは出力電圧はほとんど変化せず、73ボルトを下回ったとたんに電源が停止した。このような挙動を示すのは、これらの電源には入力された電圧を一度380ボルト程度に変換してから整流を行う回路(アクティブフィルタ)が搭載されているためである。

 また、eNSP3-450ではバッテリーを接続することで、出力の停止なしに電力供給を続けられる。実際、バッテリーを接続した状態では入力電圧に瞬停や電圧ディップ、電圧降下を発生させても、出力にはまったく影響が見られなかった。

測定結果

 最終的なすべての測定結果をまとめたものが表1である。この結果のうち、特に注目すべきはノーブランド電源を最大出力で使用した場合の値だろう。本来、最大出力というのは安定して出力できる最大の電力を表示するものであるが、今回のように製品によってはちょっとした入力ノイズによっても不安定な挙動を示すものもあるようだ。

電源(負荷) 耐瞬停時間(ミリ秒) 耐70V電圧ディップ時間(ミリ秒) 最低動作電圧(V)
eNSP3-450P 26 44 74
ePCSA-500P 27 39 73
ノーブランド電源(206.3W) 13 14 85
ノーブランド電源(300W) 4 6 95

 一方で、今回テストに使用したeNSP3-450PやePCSA-500Pなど、高信頼性をうたっている電源では電源の各構成要素について十分に余裕を持たせて設計されているものが多い。電源の構成要素や回路自体はそんなに複雑ではないため、余裕を持たせた設計というのは直接コストにかかわってくる。つまり、高価格の電源というのはそれに見合った設計がなされていると思ってよいだろう。

電源トラブルが実際にPCに及ぼす影響は?

 さて、以上の実験から、電源の品質の違いによって、入力に対する耐性が大きく異なる、ということが分かった。しかし、今回の結果からは電源トラブルが発生した場合、PCがどうなるのかは未知のままだ。

 そこで、次回は電源からPCに出力される電力について調査してみよう。実際に出力電圧が低下したり、また電源の容量以上の電力をPCが消費してしまったりしたら、PCはどういう挙動をするのだろうか。実際に測定を行って明らかにする。

本記事は、オープンソースマガジン2006年2月号「計る測る量るスペック調査隊」を再構成したものです。


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