「潤沢なインターネット環境の活用に責任を持とう」――慶大村井教授Interop Tokyo 2008

映像配信、携帯電話、ネットワーク……インターネットの技術は日々進化を遂げている。Interop Tokyo 2008の基調講演に登壇した慶應義塾大学の村井純教授は、インターネット環境の活用について責任を持って考えようと呼び掛けた。

» 2008年06月12日 18時36分 公開
[ITmedia]

 インターネットの最新技術を紹介するイベント「Interop Tokyo 2008」が6月13日まで幕張メッセで開催している。6月11日の基調講演には慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授が登壇。「地球とインターネット」というテーマで、最新の映像配信技術やデバイス、ネットワークなどを振り返り、地球を舞台としたインターネットの役割を話した。

image 街中に設置されたデジタルサイネージの例

 村井氏は、屋外や店頭、電車およびタクシー内に設置したディスプレイを総称した「デジタルサイネージ」を例に、映像配信について説明した。デジタルサイネージの広告は国内では既に十数万カ所に設置されており、2013年にはラジオ広告の市場規模を超える見通しという。ディスプレイを介した映像配信や広告が今後も増えることに対して村井氏は、「街中にディスプレイとプロジェクタが設置されれば、ダイナミックな映像配信ができる」と期待を寄せた。

 デジカメや時計、GPSなどを搭載した携帯電話を「時空間を示す洗練されたもの」と表し、デバイスについても触れた。おサイフケータイなど近距離無線通信技術の搭載が進み、携帯電話同士をくっつけて情報をやり取りする事例が増えていることに言及。情報のやり取りが接触的になれば、セキュリティが機能しにくくなる。あらゆるデバイスでセキュリティの強化が進む中、真反対ともいえる技術が広く採用されていることについて、「(赤外線通信など)信用を構築する新しいアプリケーションの活用が進んでいる」と村井氏は述べた。


image 「洗練されたデバイスと通信技術を用いてどのような環境を作るかを考えるのが日本の役目」と述べる慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授

 ネットワークのトラフィックは増加の一途をたどっている。村井氏は2005年〜2007年におけるトラフィックの分析結果を基に、かつては夜中がピークだったインターネットの使用が徐々に早い時間に移行していることに着目。「家庭のインターネットで使われているアプリケーションが変化していることが読み取れる」と持論を展開した。一部の人が利用しているP2Pによるファイル交換などに加え、ニコニコ動画やYouTubeなどインターネット環境があれば誰もが利用できるサービスが増えてきていることが影響しているとも考えられる。

 誰もが簡単に利用できるネットワークサービスが出現し、携帯電話を活用した地震速報配信や電子カルテを利用した健康情報の記録などがデジタルのインフラ上で実現できるようになった。村井氏は「デジタル情報の流通とアクセスが自由にできる環境にいるわれわれは、これをどう活用するかについて責任を持って考える必要がある」と呼び掛けて講演を締めくくった。

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