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八重洲に巨大電子看板が出現 動画と香りで道行く人を顧客にデジタルサイネージ最前線(1/2 ページ)

東京駅の八重洲地下街の一角に巨大な電子看板が設置された。飲食店の動画を映し出すディスプレイに近づくとさわやかな香りが漂う。リクルートが実施しているデジタルサイネージの実証実験の一幕だ。

» 2008年07月26日 08時30分 公開
[藤村能光,ITmedia]

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image 八重洲地下街のメインアベニューに設置された1.3×0.7×2.5メートル(幅×奥行き×高さ)のデジタルサイネージ

 東京駅の八重洲地下街に巨大な端末が設置されたのをご存じだろうか。ディスプレイには飲食店の映像と案内が映し出され、音声も流れている。その下にはクーポンが置かれてあり、クーポンを手に取ろうとすると、さわやかな香りがふわっと漂う――。

 この端末は、リクルートが実施しているデジタルサイネージ(電子看板)の実証実験によるもの。同社が開発した動画作成ツール「コマーシャライザー」で動画広告を作り、しゃぶしゃぶやカレーショップ、カフェといった八重洲地下街の飲食店16店舗の動画広告を、ディスプレイに映し出している。

 ディスプレイの上には定点カメラが取り付けられており、端末利用者の年齢や性別、画面を見た時間などを測定する。クーポンの取得数や利用数などのデータと合わせて、デジタルサイネージの広告効果を検証する。端末は、朝、昼、夜の時間帯ごとに柑橘系などの香りが出る仕組みとなっている。人間の嗅覚に訴えかける広告としてどれだけの集客効果が見込めるかも調べている。

ディスプレイの左側にはコマーシャライザーで作成した動画、右側には飲食店の情報を掲載している(写真左)。ディスプレイの下にはクーポンと香りの排出口を配置。香りは500立法メートルに発生させることが可能

 実証実験を担当したのは、リクルートの研究開発組織であるメディアテクノロジーラボ(MTL)。デジタルサイネージを実運用に生かすための検証を行っている。動画広告作成のノウハウ不足やコストなど、デジタルサイネージの普及を阻む要素は多い。MTLの取り組みからは、これらの課題を解決する方法が見て取れた。

デジタルサイネージの普及はコンテンツ作成にあり

image コマーシャライザーのWebサイト。立ち上げから2カ月弱で5000以上の動画が投稿された。作成した動画コンテンツをホームページに組み入れる企業も出てきているという

 「Web2.0なんて言葉をよく聞くが、飲食店などのWebサイトは依然として“Web1.0”の作りが多い」。コマーシャライザーの立ち上げを担当したMTLの永田香澄プランナーは言う。動画などの表現豊かなコンテンツを作成するには、プログラミングなどの技術が必要となる。動画を使ったPRを考える企業は多いが、動画広告の配信はハードルが高い。

 コマーシャライザーは、写真10枚とテキストを専用のフォームに入力するだけで動画を簡単に作れる。「ちょっとした宣伝がしたいという人の要望を満たすサービス」(永田氏)という位置付けだ。利用者は、写真を撮ってPCに保存し、メールに貼付して送信する程度のリテラシーがあればいい。作成した動画は、Webサイトにも簡単に組み込める。

 動画広告に対し、コスト面で二の足を踏む企業も少なくない。実証実験で使っている20秒程度の動画広告をFlashベースで作る場合、「通常は安くても1動画当たり6万円ほどのコストが掛かる」(永田氏)。コマーシャライザーを使えば、動画作成のコストを限りなく0に抑えられる。

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